2011年12月17日(土)
ロシア下院選不正疑惑
プーチン支持率急落
ロシア下院選挙で不正があったと抗議するデモがモスクワなどで続いていますが、この抗議行動が今後の政治にどう影響を及ぼすのかが、注目を集めています。(片岡正明)
24日に大集会 再選挙を要求
選挙不正をやったとされる統一ロシアは、長期にわたり強権政治を続けるプーチン首相(次期大統領候補)の政治体制を支える柱です。選挙不正をきっかけに、プーチン体制そのものへの不満が噴出し、抗議デモでは「プーチンは去れ」と連呼されています。
この中で、「全ロシア世論調査センター」が16日に発表した世論調査(10、11の両日に実施)では、プーチン氏への支持率が4日の下院選挙直前の60%台から大幅に低下し42%となりました。大統領選の第1回投票で当選できず、決選投票にもつれ込む可能性が出てきました。これまでにない不満の表れが世論調査にも出てきたかたちです。
この国民の不満に対し、プーチン氏は15日、国民の質問に答える恒例のテレビ会見を行い、大統領返り咲きを狙う大統領選挙では9万カ所以上ある全投票所に監視カメラ設置するなど公正な選挙を行うと約束しました。
野党が求めている州知事の公選制についても、現行の知事任命制から、大統領が認める候補者の枠内で選挙を実施する可能性を検討すると言及し、一定の妥協の姿勢を示しました。
不正には触れず
一方で、下院選挙に不正があったかどうかについては触れず、「選挙結果は現実の力関係を反映したものだ」と選挙の結果を正当化しました。
政府側はメドベージェフ大統領が、投票所の調査を指示したものの、最高検察庁のチャイカ検事総長は個々の選挙違反は取り締まるとしながら、「票の数え直しや再選挙の根拠はない」と結論づけています。
これに対し、10日のモスクワの抗議集会で約5万人を集めた抗議運動主催者側は24日にさらに大規模な集会を実施する計画を発表し、選挙無効と再選挙などを求める行動を続行する構えです。
英BBC放送ロシア語版ニュースサイトによると、集会を準備するために、組織委員会がつくられ、国民自由党党首のネムツォフ元副首相、公正ロシアのグドコフ副代表、作家のアクーニン氏らが構成メンバーとなりました。
インターネットや携帯電話を使って各組織がそれぞれ集会・デモを呼び掛ける方式から、抗議運動全体を統括する組織的なものができたことを示すものです。委員会の構成からすると、当局から政党登録を拒まれている少数党、下院に議席を一定保持する政党、市民団体の連合体の様相を示しています。
マスコミも評価
この抗議運動については、ロシアの一部マスコミも「(この20年間なかった)市民の積極性の新たな段階だ」(独立新聞)「(プーチン新大統領が誕生したとしても)プーチン体制は次の6年で崩壊するだろう」(ベードモスチ紙)と積極的に評価。従来、野党系の集会を放映しなかったテレビ・ニュースも抗議集会を取り上げるようになっています。