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2011年12月10日(土)

主張

「一体改革」論議

社会保障の未来を壊すのか

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 野田佳彦政権がすすめる「社会保障・税一体改革」の素案づくりの議論が政府・民主党で大詰めを迎えています。政府は、社会保障にかかるお金を削減することで、消費税を10%に引き上げることに「理解を得る」などとしていますが、本末転倒です。国民にとっては、社会保障費削減で犠牲を強いられたうえ、消費税が2倍に増税される二重の大改悪です。野田政権は年内に素案をまとめるとしていますが、こんな「一体改革」は撤回すべきです。

すべての世代を直撃

 厚生労働省が5日示した社会保障の「改革案」は▽過去の物価下落時に据え置いた年金支給額の切り下げ▽受診するたびに病院窓口で原則100円上乗せ徴収する受診時定額負担▽70〜74歳の医療費窓口負担の2倍化―などの負担増を盛り込みました。保育を市場化・産業化する「子育て新システム」の法案化も明記しました。高齢者、働く人たち、乳幼児まで全ての世代に深刻な影響を与えるものだけに重大です。

 政府は制度改悪をすすめるために、“このままでは社会保障費が増大して制度維持ができない”とあおります。しかし、日本の社会保障費は国際的に見れば低い水準にとどまっています。日本の社会保障関係支出の対GDP(国内総生産)比は19・2%で、イギリス(21・3%)、ドイツ(26・2%)、フランス(28・8%)などより大きく立ち遅れています。このような実態を改善することこそが急務です。

 “現役世代に過重な負担をさせない”ことを消費税増税と制度改悪の理由にあげる議論もあります。しかし、「一体改革」による制度改悪は、現役世代も例外なく直撃します。世代間で負担を押し付けあう図式を描くことは間違いです。保育制度改悪は子どもを育てにくい社会をますます加速させます。「一体改革」は「制度を持続可能にする」どころか、未来を不安にさせて、社会保障制度の基盤を掘り崩す結果になりかねません。

 いま必要なことは、小泉自公政権時代の「構造改革」路線で大きく傷つけられた社会保障の修復です。「構造改革」以上に社会保障を破壊する「一体改革」は国民の願いに背くものです。社会保障制度を本格的に構築し、拡充するという発想が完全に欠落しています。

 社会保障制度を充実する政策に転換するときです。その財源は、消費税増税でなく、ムダの削減、大企業・富裕層へ課税、所得に応じた税制改革などで確保するべきです。

憲法25条の立場こそ

 日本国憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権をうたい、政府には「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と求めています。しかし、いまの日本は、お金がないために医療機関にかかれないで命を落とす人が後を絶たず、「介護殺人」など深刻な事態が続いています。

 この現実を見ないで、財政が苦しいから社会保障は我慢せよと強いる「一体改革」議論は25条に逆行するものです。貧困と生活苦が広がるいま、25条にもとづいた政治こそが求められます。


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