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2011年12月5日(月)

輸入食品水際検疫 低額な民間に集中

検査員1人当たり年300件の例も

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 国民的議論を呼んでいる環太平洋連携協定(TPP)で、輸入食品の安全性が問われるなか、検疫体制が民間の検査機関に任せきりという実態が4日までに分かりました。日本共産党の紙智子参院議員事務所の情報開示請求に厚生労働省が明らかにしたもの。しかも検査は民間機関の中の一部に集中し、検査員1人当たりの件数が多いなど、食の安全を脅かされかねない現実が、今回の資料から改めて浮き彫りになりました。


紙議員事務所に厚労省が明かす

 開示資料によると、10月現在で、国の人員393人に対して民間は2201人です。

 94の民間検査機関のうち、検査発注が年間千件以上なのは12社に集中しているのが特徴。必ずしも大手の検査機関に集中しているわけではなく、検査員十数人から20人の機関も含まれます。検査員1人当たり年間300件以上扱う例もあります。

 民間の登録検査機関には国際基準(GLP基準)に照らして検査の公正性を保つため、サンプリング(検体の抽出)の段階から正職員の検査員があたることが求められます。サンプリングのために検査員は港の輸入食品保管倉庫に出向き、半日がかりでサンプルを持ち帰ります。冷凍肉の塊などを粉砕する検査前処理を下請けやパートに出すことは認められていません。ひとり当たりの検査員の作業量は非常に大きいものです。

 輸入食品の入港時の水際検疫は現在、国が輸入業者に検査命令を出し、業者が登録検査機関に依頼・発注して行われます。これは命令検査と呼ばれます。この検査で基準値以下であれば、安全な食品として輸入できます。

 しかし、登録検査機関における検査実績を検査員で割ると、最も多い検査機関で1年間に1人で311件もこなしていることになります。

 日本政府は世界貿易機関(WTO)協定に対応する食品衛生法改悪(1995年)を行い、行政による輸入時の水際検疫から撤退。国による行政検査をモニタリング(監視)検査に後退させました。


解説

根本に国の責任放棄

  国内基準を超えた残留農薬(殺虫剤)や大腸菌、指定外食品添加物を含む輸入食品の流通を防止する検疫体制は、国民の健康、日本の農業・畜産業を守るうえで重要です。厚労省の輸入食品監視業務ホームページには米国産トウモロコシ、韓国産生鮮キュウリ、中国産アズキに有機リン系殺虫剤使用が判明するなど、食品衛生法違反事例の数々が掲載されています。

 行政によるモニタリング(監視)検査は、輸入後に違反傾向が高いと判明した輸入食品を検査するもので、国民の胃袋に入ってしまった後になって取り締まるため、重大な健康被害を引き起こす可能性があります。

 一方、水際で行う輸入検査は特定の民間機関に検査が集中しています。これは検査料が安いからです。また、1人当たりの検査件数が最も多い検査機関に問い合わせたところ、自主的なプログラムで教育した検査補助員(パート)を採用しているとの回答でした。これは国際基準に違反します。コスト優先になる民間にまかせては安全性が保たれない。食の安全を守る国の責任放棄が根本にある。少なくとも検査料金を法定価格にするべきです。

(日本共産党国会議員団事務局小倉正行)


■2010年度 食品衛生法上の
 主な登録検査機関の検査実績

検査機関  検査命 1人当たり
(検査員数) 令件数 の検査数
A(174)   27426   157
B (87)   23169   266
C (47)   13673   290
D (78)   13323   170
E(129)   11464    88
F (20)    6221   311
G (31)   6169   199
H (32)   4354   136
I (34)    2049    60
J (13)    1689   129
K (14)   1379    98
L (14)   1224    87


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