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2011年11月30日(水)

ヘルパーの生活援助時間短縮

計測なく調査ずさん 入手の資料で明らかに

60分未満を45分未満に

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 政府・厚生労働省は、介護給付費削減のために、来年度の介護報酬改定でホームヘルパーが行う生活援助(調理、掃除、洗濯、買い物など)の基本的な提供時間(現行30分以上60分未満)を45分未満に短縮しようとしています。しかし、根拠とされた調査は提供時間の実態を調べるのが目的でないうえ、計測もなく、記録にもとづかないずさんなものであることが本紙入手の資料で明らかになりました。

 問題の調査は、株式会社EBP(東京都中央区)が今年度の国庫補助事業でおこなったもの。被災3県を除く44都道府県の各10市区町村において、今年3月に訪問介護を利用した要支援1〜要介護5の人を1人ずつ選び、サービス提供事業所が答えることになっています。

 本紙が入手したのは調査の際の「介護予防訪問介護及び訪問介護の利用に関する質問票 記入要領」。「目的」には、訪問介護について「利用者の状態像や同居家族の状況等とサービス提供内容の関連性を明らかにする」ことをあげています。どんな状態の人がどんなサービスを利用しているかを調べるのが目的です。生活援助の提供時間の調査が目的ではありません。

 調査は、訪問介護事業所が今年3月のサービスについて「掃除」「洗濯」などの行為ごとに提供時間や回数を記入することになっています。しかし、調査表が国から都道府県に送られたのは5月16日。回答期限は6月20日です。もともとヘルパーは行為ごとの提供時間を記録することになっていません。1カ月半以上前の行為時間を、記憶を頼りに記入することになります。

 さらに同省によると、洗濯機を回しながら調理や掃除をした場合、洗濯機から離れて別の行為をした時間は洗濯の時間に含めません。実際には同時並行的におこなうことで成り立っている生活援助サービスの実態を無視した調査ともなっています。


解説

生活援助時間短縮 命綱の訪問介護奪う恐れ

 生活援助にどれだけの時間を要するかは利用者の暮らす地域、住居、同居家族の有無などに大きく左右されます。例えば「買い物」一つとっても、徒歩圏内に商店があるような場合と過疎地域とでは所要時間がまったく違ってきます。

 全国社会福祉協議会のホームヘルプサービスの所要時間に関する報告書(2000年)では「家事援助については個別性が大きい」として、標準的な所要時間の検討の対象とされませんでした。ところが厚労省は、そうした個別性を無視して平均化した調査結果を、生活援助の提供時間短縮の根拠にしています。

 調査は洗濯機を回しながら調理や掃除をするという同時並行も少なくない生活援助を行為別に切り分けたうえ、各行為の1回当たりの平均時間を出すというやり方をとっています。そのため洗濯の平均が16・6分などという結果が出され、ヘルパーから「16分で終わる洗濯機などない。実態とかけ離れている」と批判があがっています。

 訪問介護は援助の総体を通し、介護を必要とするお年寄りが「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」(介護保険法第1条)支援することが目的です。こうした介護保険法の目的・理念にも反し、生活援助の実態を反映しない不正確な調査を、時間短縮の根拠とするのは許されません。

 政府は介護給付費の削減を狙いこれまでも生活援助の時間短縮を進めてきました。06年の介護報酬改定で30分ごとの報酬加算を廃止し事実上90分までに制限。さらに09年改定では「30分以上60分未満」の報酬を引き上げ、短時間化を促進しました。その結果ヘルパーの業務は会話する余裕もなく、時間内にサービスが終わらないほど多忙となり、06年改定を前後して2万数千人が離職しています。

 さらなる時間短縮がいっそうの多忙化と離職に拍車をかけるのは明らかです。それは在宅のお年寄りの命綱である訪問介護を奪うことにもつながりかねません。生活援助の時間短縮方針は撤回するべきです。 (内藤真己子)

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