2011年11月19日(土)
主張
派遣法骨抜き修正
これでは労働者は救われない
国会で継続審議になっている労働者派遣法改定案について民主、自民、公明の3党間で「修正」に合意しました。製造業務派遣と登録型派遣を「原則禁止」する項目の削除、違法派遣があった場合労働者に派遣先企業が直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用」規定の3年先送りなどです。
これは派遣労働者を保護する立場で派遣法を改正しようとすれば絶対避けるわけにはいかない根幹をことごとく崩して、無意味、無内容な法案にすることにほかなりません。これでは派遣労働者はまったく救われません。
不安定で使い捨ての労働
もともと禁止されていた労働者派遣が急速に広がり、「日雇い派遣」などの不安定雇用や「派遣切り」などの使い捨てが大問題になったのは、財界とアメリカの要求で労働者派遣法がつくられ、改悪が重ねられたからです。とくに1999年の改悪による原則自由化と2003年の製造業への拡大が大きなきっかけになりました。
日本共産党は、08年秋以降の大量「派遣切り」による深刻な事態を繰り返さないために、少なくとも次のような改正が不可欠だと主張してきました。(1)製造業務派遣はどんな形であれ禁止する(2)仕事があるときだけ派遣される登録型は専門業務を厳しく限定、縮小し原則禁止する(3)「みなし雇用」規定は派遣先への正社員雇用を義務づける(4)均等待遇のルールを明確にする―などです。
2年前政権についた民主党の鳩山由紀夫首相(=当時)は、派遣労働者をめぐる雇用、労働条件改善を「内閣の最重要課題」と大見えを切り、「労働者を保護する方向」での派遣法改正を表明していました。ところが提出された政府の改定案には大きな「抜け穴」があるものでした。
政府案が「原則禁止」としている製造業務派遣は、派遣元に常時雇用されている労働者が除かれています。常時雇用といっても2カ月などの短期雇用を反復して1年を超えているか、その見込みがあれば「常時雇用」とするのが厚生労働省の解釈です。派遣元への短期・反復雇用の形態をとれば、何の問題もなく派遣が可能です。
同じく「原則禁止」になっている登録型派遣も、対象外にする専門的な知識、技術が必要な業務は26業務もあります。電子計算機やタイプライターを使う「事務用機器操作」という業務はいまや一般業務と変わらず、そこには45万人も派遣されています。禁止は名ばかりで、労働組合や法曹界などから「労働者保護に値する抜本改正にはほど遠い」(日本弁護士連合会・宇都宮健児会長)と失望と怒りの声があがり抜本修正を求める運動が続いてきたのは当然です。
抜本修正求める運動を
日本共産党は政府にたいして抜本的な修正と、改定案の徹底審議を要求してきました。改定案が国会に提出されて以降、審議入りできず棚上げ状態が続いてきたのは、財界の抵抗と、自民、公明両党の反対によるものです。
民主党が、自民、公明両党に妥協し、問題だらけの改定案をさらに骨抜きにする「修正」にうごいたのは、まさに屈服というほかありません。国民への約束を投げ捨てる民主党の骨抜き修正を許さず、労働者保護の立場で抜本修正を求めるたたかいが急がれます。