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2011年11月3日(木)

炉心不安定示す 継続的な監視が大切

核・エネルギー問題情報センター事務局長、元中央大学教授

舘野 淳さんに聞く

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 福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)2号機で再臨界が起こった兆候が検出された問題について、核・エネルギー問題情報センター事務局長の舘野淳・元中央大学教授(核燃料化学)に聞きました。

 事故で炉心が溶けた今回の状況で再臨界が起こるかどうかは、損傷した燃料の形状や位置によって決まります。損傷した燃料は、餅のように溶けて固まった状態のものと、燃料ペレットがバラバラに散らばったものがあると考えられます。

 今回、臨界状態になったということは、冷却水の流れなどの影響で、それらの燃料がくっついたり離れたりするような不安定な状況で動いていることを示しています。くっついて臨界状態になり、その衝撃で離れて反応が停止したといったことも考えられます。

 臨界状態は、間欠的に起きると考えられますが、長時間継続する可能性も否定できません。燃料の溶融が進行し、原子炉圧力容器の底から格納容器側にさらに抜け落ちていく危険性があります。格納容器で起きれば、コンクリートと反応して爆発的現象が起こる可能性もあります。

 こうした不安定な状況は今後も続くでしょう。地震などの何らかの原因で燃料が揺すられることによって長時間、臨界が継続することも心配されます。

 また、約10年後に燃料の取り出しを開始することが検討されていますが、そうした処理作業の困難さも改めてはっきりしました。きちんと損傷燃料の状況を推定し、対策をとることが必要です。

 臨界状態がどのくらい続いたのか、何度も起こっているのかどうか、継続的に監視することが大切です。

 再臨界を防ぐために、中性子を吸収するホウ酸水を投入することはもちろんですが、固体粒子状の中性子吸収材を圧力容器内に入れるなど、いろいろな対策の可能性を検討する必要があると思います。

解説

福島・2号機 再臨界の兆候検出

再臨界を否定し続けた東電

 事故で溶融した核燃料が原子炉内にたまっている福島第1原発1〜3号機では、再臨界の危険性が以前から指摘されていました。

 たとえば事故から17日たった3月28日、太平洋をはさんで福島第1原発から遠く離れた米・カリフォルニア州のサンディエゴで空気中に含まれる放射性物質の硫黄35を含む硫酸イオンが通常の3倍以上検出されるというできごとがありました。

 検出したカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームは、8月15日付の『米科学アカデミー紀要』電子版に、硫黄35は3月中旬に福島第1原発の原子炉内に注水された海水に含まれる塩素に中性子が当たってできたもので、それが2週間程度かかって飛来したとの解析結果を発表しました。このことは原子炉内で再臨界が起こっていた可能性を示唆するものとみられます。(本紙8月16日付)

 しかし、東電は再臨界の可能性を指摘されるたびに、中性子が特に多く検出されたことはないとして、それを否定し続けてきました。今回初めて、格納容器内部の空気中に含まれる放射性物質を調べた結果を見て、再臨界が起こっている可能性を認めたのです。

 国と東電は、10月17日に行った「事故収束の道筋」(工程表)の見直しで、1〜3号機すべての原子炉圧力容器底部の温度が100度以下になったこと、放射性物質の放出量が事故発生時の約800万分の1となる1時間当たり約1億ベクレルに下がったことなどをあげ、来年1月としていた「冷温停止状態」を年内に達成するとしました。

 しかし、再臨界問題で、東電は1〜3号機の原子炉内で何が起こっているのか十分把握していないことが明らかになりました。福島第1原発の現状を良く見せようと躍起になるのでなく、現在起こっていることを明らかにして、必要な対策をとることに全力をあげるべきです。 (間宮利夫)


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