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自然エネルギー導入・地方の挑戦

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食品加工施設への送電を準備しでいる水車型発電機=岐阜県郡上市石徹白

 東京電力福島第1原発事故によって、原発からの撤退は大きな世論となりました。かわりのエネルギーとして注目される自然エネルギー導入の各地のとりくみを紹介します(8月・地方のページで掲載)。

◎北海道足寄町・木質ペレット/森林資源生かし町内の暖房担う

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「火力も強く安定しています」と語る木質ペレット工場長(右)と日本共産党の田利正文町議=北海道足寄町
 循環型社会の構築と町おこしをめざし、北海道足寄(あしょろ)町で「バイオマスタウン構想」が進んでいます。その一つが、香川県の面積の75%にあたる同町で、約85%を占める森林資源の活用。
 2001年に足寄町は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)と林野庁の補助事業を活用して、「新エネルギービジョン」「木質バイオマス資源活用ビジョン」を策定。「絵に描いた餅にしたくない」と町民が話し合う中で、森林を伐採し、切りそろえた際に山地に残る木材が話題に。産官学による「木質ペレット研究会」や生産・販売を担う協同組合が立ち上がりました。木材を小粒の固形燃料にするペレット工場は、廃校の中学校に。年間約700㌧を生産します。
 冬場は氷点下20度を下回る足寄町。現在、木質ペレットを活用した大型ボイラーが設置され、町役場などの暖房をまかなっているほか、町内には75台のペレットストーブが普及しています。
 木質ペレットは、燃焼させても二酸化炭素を増加させません。
 「エネルギーの地産地消」が重要だと同町経済課の参事。「各地域でバイオマスの活用を見いだし、太陽光や燃料電池など次世代エネルギーと併用することが大事です」
 (北海道・森英士)

◎東京都奥多摩町/小水力発電付きトイレ/渓流の16メートルの高低差を利用

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発電量、累計発電量、累計CO2排出削減量の表示板(手前)とバイオマストイレ=東京都奥多摩町
 東京都西多摩郡奥多摩町にある川苔山(標高1363・3㍍)の登山道入り口に、小水力発電設備付きのバイオマストイレが2月、設置されました。
 川苔谷渓流の16・7㍍の高低差を利用して水車2基を回し、毎時約800㍗を発電。排せつ物を微生物で分解させるため、便座下のおがくずをかき混ぜる機能、照明に電気を使用します。小水力発電の設置運行は、同町が都内自治体としては初めてです。
 「『有名な登山ルートにトイレがない』と、登山者から要望がよせられていました」と、同町観光産業課の係長はいいます。
 数十本の電柱を新設する場合、東京電力による設置時期の見通しの不透明さ、地主との交渉、漏電の危険性、伐採による景観・環境破壊など多くの課題があります。「環境に大きな負荷がかからず、二酸化炭素を削減し、温暖化対策につながる」と小水力発電を選択しました。
 都の「地球温暖化対策等推進事業補助金」(1134万円)を受け、地元業者が工事。点検・修理もします。
 水道管の凍結故障を防止するため、冬季(12月~3月)は使用できません。
 (東京・岩間萌子)

◎山梨県北杜市・太陽光発電所/「日照時間日本一」恵みを生かす

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北杜サイト太陽光発電所のパネル(左は日本共産党の中村隆一北杜市議、奥に八ケ岳連峰)=山梨県北杜市
 「日照時間日本一」をうたう(年平均日照時間・約2300時間)山梨県北杜(ほくと)市で、5年間の実証研究期間を終え2000㌔㍗級大規模太陽光発電システム「北杜サイト太陽光発電所」(同市長坂町夏秋)が、市営発電所として4月からスタートしました。
 福島原発での事故以来、地方議員視察団など全国から見学者が相次いでいます。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業として06年10月に始まった実証研究で、9カ国の各社が27種類の太陽電池パネルを設置して発電特性の実証試験を重ねてきました。7月までの4カ月間で年換算で230万㌔㍗を発電。家庭消費電力換算では800戸近くになります。
 土地は、山林や遊休農地(耕作放棄地など)利用の工場誘致計画を変更して活用。同市では、田と田の間の傾斜地(土手)を利用した小型発電パネル設置や小水力発電事業も進めていて、白倉政司市長は「尽きることのない豊かな水資源や太陽の恵みを最大限に生かしたい。北杜市は、自然エネルギー活用のトップランナーを自負しています」と話しています。
 (山梨県・志村清)

◎岐阜県郡上市石徹白/森林と起伏利用し小水力発電

 岐阜県郡上市白鳥町の山間部、標高700㍍の石徹白(いとしろ)地区で、2007年から豊富な森林と地形の起伏を利用した小水力発電による、地域への電力供給を目指す試みが行われています。
 いくつかの型の装置を試した結果、この地域の農業用水路には、水車型(写真)と水路内に設置するらせん型が適していることがわかりました。
 地元のNPO法人「やすらぎの里いとしろ」の理事長は、岐阜市のNPO・地域再生機構の協力を得てこの計画に着手しました。費用は科学技術振興機構の委託研究費で賄われました。「水力は電気エネルギーへの変換効率が非常に良く、改めて驚いています。大手で生産したエネルギーを買うのではなく、地産すれば地元からお金が出ていくこともなくなる」と話します。
 過疎化に悩む地域で、活性化のシンボルにしたいという水車は、近く、隣接する食品加工施設への本格的な送電試験を行う予定。「全国から多くの方が視察に訪れていますが、実際はまだまだ道半ば。公共施設の電気代削減に直結し、住民が電気の自立を実感できるようにしていきたい」
 (木藪健児)

◎京都府嵐山・小水力発電/桂川の水力利用/街灯60基ともす

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小水力発電で点灯する渡月橋の街灯(左)と渡月橋の街灯用電力に使われる小水力発電機
 京都の景勝地・嵐山の山麓、桂川にかかる長さ155㍍の渡月橋。夜、橋の上を照らす60基の街灯に「小水力発電」が使われています。橋から100㍍上流に歩くと発電機があります。高低差1・7㍍の水力を利用し、平均4・3㌔㍗を発電します。
 稼働は2005年12月。橋には長く街灯がなく、地元の嵐山保勝会が防犯・交通安全対策として街灯設置を計画。そのとき小水力発電の案が浮上しました。嵐山保勝会・水力発電担当理事は「近くに桂川が流れているし、環境にもやさしいと設置が決まった」と語ります。
 総費用は3400万円。国の補助金を引いた残り2530万円は地域の寺社や企業の寄付でまかないました。
 余った電力は1㌔㍗当たり11円30銭で関西電力に売電。得た年間約20万円は維持管理費や河川の占用料に使えばなくなります。
 原発事故以来、全国から自治体などの視察が急増中です。担当理事は、「技術の発展や各地でこういうエネルギーの地産・地消がすすめば、原発がなくても十分にやっていけると思いますよ」と話します。
 (京都・岡本大介)

◎和歌山県日高川町/燃料に木質パウダー/温泉施設のボイラーに使用

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町職員が説明する木質パウダーが燃料のボイラー=和歌山県日高川町
 熱がこもるボイラー室の隣に、燃料の材木を微細な粉に加工した「木質パウダー」の貯蔵タンクが設置されています。
 備長(びんちょう)炭の生産量日本一を誇る和歌山県日高川町が取り組んでいる、地元の間伐材を利活用したバイオマス事業です。町内の温泉施設4カ所でボイラー7基に使っています。
 山の峰々には風力発電機が立ち並び、太陽光発電も進める同町。低迷している林業の振興や二酸化炭素排出削減での温暖化防止へ、県森林組合連合会などと協力し昨年3月から取り組み始めました。固形燃料のペレットやチップと比べ、さらに細かい木質パウダーは発熱量が一番高く、温度調節も容易です。
 木質パウダー事業は、全国に先がけてのもの。林業の新規・再雇用の確保にもつながっています。二酸化炭素の削減量を売買する国の「国内クレジット制度」による収入を利用、間伐材や残材を運んできた住民に地域通貨券などを支払う「間伐材で晩酌」をと題した住民参加型モデル事業も広げています。
 同町まちみらい課の担当者は「一歩前進だ」と手応え。採算性など課題は山積ですが「日高川流域での地産地消の努力で燃料単価を下げることもできる。頑張りたい」。「クリーンエネルギーの町」へ挑戦が続きます。
 (松田大地)

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