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2021年12月4日(土)

権力を助けて感謝されるメディアの野党共闘攻撃

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(写真)「野党共闘は失敗」と論じる読売新聞と産経新聞。右から「読売」11月3日付、「産経」11月13日付、同12月1日付

 総選挙後、異常な野党共闘攻撃をつづけてきた一部右派メディアが、立憲民主党代表選を受けて“共産党との決別”を迫るまでになっています。「産経」1日付主張は「『共産共闘』決別できるか」との見出しをたて、「与党から政権を奪取する」ためには「まずは共産党と決別できるかどうかを明確にしなければならない」と要求。「読売」同日付社説も「泉氏は共産党との共闘には『国民の中に抵抗感があった』と述べ、修正することを示唆している。…早急に今後の方針を取りまとめ、丁寧に説明してほしい」と求めています。

 総選挙では、自民党・公明党や補完勢力・維新による野党共闘攻撃、日本共産党攻撃が激しく繰り広げられましたが、選挙後はむしろメディアが主体となって野党共闘攻撃が展開されています。権力を監視するどころか、体制擁護の旗を振る御用新聞の役割を果たしているといわなければなりません。

「野党共闘惨敗」は事実に反するデマ

 右派メディアを中心とした野党共闘攻撃の特徴は、総選挙での野党共闘が“惨敗だった”と決めつけ、その要因を立憲民主党と日本共産党との政権協力合意だとする二重の虚構にもとづく仕掛けとなっていることです。

 たとえば、前出の「産経」主張は「安全保障など国の根幹にかかわる理念や政策について大きく考えの異なる共産と共闘した節操のなさ」が「惨敗した要因の一つ」などと断じています。「読売」も、総選挙直後の社説(11月3日付)で「政策軽視の共闘が惨敗招いた」などと描き、先鞭(せんべん)をつけていました。

 しかし、野党共闘は「惨敗」などというのは、事実にまったく反するデマです。「共闘勢力」で一本化した207の小選挙区でみると、59選挙区で勝利し、自民党重鎮や有力者に競り勝ちました。また、得票率の差が10ポイント未満の選挙区が55あり、うち40選挙区で比例復活をしています。勝利した59選挙区のうち56、比例復活の40選挙区のうち39選挙区で、4党の比例合計得票を上回る「共闘効果」も示されています。

 「惨敗」論をふりまく「読売」自身が「自民当選者2割が辛勝/差5ポイント未満34人前回比1・3倍」(11月4日付)と書いているように、野党共闘は自民党を追い込みました。「自民候補が5ポイント減らして次点候補が5ポイント伸ばしていれば、自民候補は小選挙区で59人が敗れていた計算になり、自民単独で過半数となる233議席を確保できなかった可能性もあった」(同前)のです。

 政党間の力関係という点でも、「共闘勢力」は4年前の立民・共産・社民合計の68議席から、今回、3党にれいわ新選組を加えた4党で110議席へと42増、比例得票で246万票増と勢力を大きくしています。

自公政治への屈伏迫る「御用新聞」だ

 右派メディアが選挙後も執拗(しつよう)に野党共闘を攻撃するのは、常日ごろから支援する自公政治が根本から転換されることにおびえているからにほかなりません。

 事実、立民代表に“変心”を迫った「産経」1日付主張は、辺野古新基地建設中止をひきあいに「同盟国との合意をひっくり返すような政党に、政権は任せられまい」とのべ、「読売」1日付社説も安保法制の一部廃止や辺野古新基地建設中止をやり玉にあげ、「日米同盟を不安定にしかねない政策では、多くの有権者の支持は得られまい」としています。それは、繰り返し表明された沖縄県民の民意を無視し、強権で新基地建設を進める自公政治への屈伏を迫るもので、体制擁護の御用新聞そのものの態度です。

 こうした右派メディアに対し、「朝日」などでも「衆院選でおきゅうをすえられたのは、与党ではなく、共闘した野党だったのかもしれない」(11月13日付「天声人語」)と同調する記事が登場。「野党共闘が否定されたのではなく、野党共闘が徹底できなかったことが問題なのである」(中島岳志東京工業大教授、北海道新聞11月23日付など)という有力な議論があるのに、同紙の11月29日付の立民都道府県連幹部へのアンケートでは「衆院選で議席を減らした要因」の質問で「共闘が徹底できなかった」の選択肢はなく、「共産党との『限定的な閣外からの協力』の合意」や「共産党との選挙協力」だけを選択肢にするという意図的な設問をし、「地方 共産と協力『見直しを』」などと報じました。

 「赤旗」日曜版の取材に、自民党本部関係者は「野党共闘の脅威」を表立って口にしないことについて「そりゃそうでしょう。『野党共闘が効果があった』とか『恐ろしかった』とか公に言うと、野党が『それなら野党共闘をどんどんやろう』ということになりかねない。だからメディアが『野党共闘が効果なかった』『失敗した』とキャンペーンを張っていることに、私たちは感謝していますよ」と語っています(11月28日号)。権力の監視どころか、権力を助け、権力から惜しみない感謝をよせられるようでは、メディアの恥ではないでしょうか。(藤田健)

“与党を利したいのでは” “我田引水的な数字使用”

識者からも批判

 メディアによる野党共闘攻撃、日本共産党攻撃には識者からも批判の声があがっています。

 作家の中村文則さんは、「毎日」電子版2日付の「中村文則の書斎のつぶやき」で、今回の衆院選について「『野党共闘』は、立憲民主党と日本共産党の選挙協力がうまくいった所などで成果を上げ、数字上でも与党を追い詰めていた。与党自らも、自民党を常に支持する媒体も、応援団の論客も、こぞってその選挙協力を必死に批判していたから、つまりそれだけ嫌だったのだろう」と指摘し、次のようにのべています。

 「野党共闘を嫌う理由の『共産党アレルギー』は言い訳で、本当はひそかに与党を利したいのではないか」「選挙後、いろんなマスコミが『なぜ自民党が勝ったのか』みたいなことを真顔で書いていて、飲んでいたコーヒーを何度も噴き出しそうになった。あなたたちがそういう報道をしているからだろう。日本のマスコミの多くは、ジャーナリズム精神をひそかに捨ててから、もう大分年月がたっている」

 政治学者の菅原琢氏はプレジデント・オンラインへの寄稿で「新聞各紙の報道には混乱が見られます」とのべ、「野党共闘を否定的に見る場合には今回のみの勝率や勝数を示」すなど「野党共闘の実際を明らかにするというよりは、我田引水的な数字の使い方をしている」と指摘しています。

 そのうえで、自らの詳細な分析を紹介し、「共産党候補撤退は概(おおむ)ね8ポイント程度の得票率上昇をもたらした」とし、「野党共闘の効果により、接戦区が増え、野党の勝利が増えたことも明らか」「共産党との共闘なしに(野党候補が)小選挙区で勝てた選挙区は半分もない」と結論づけています。

 菅原氏は「マス・メディアは野党共闘の是非が争点だと煽(あお)っていますが、(立憲民主党が)政権交代を目標とするならそれ以前の問題です」と指摘しています。


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