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2021年9月21日(火)

低空カラースモーク 目的は 隊の士気高揚!?

住民「五輪強行のうえ、ひどい」

埼玉 車800台など付着被害

 色の付いた煙の尾を引きながら低空で飛ぶ自衛隊機―。日本共産党の猪股嘉直・埼玉県狭山市議のもとに市民から寄せられた写真です。狭山市で、航空自衛隊のブルーインパルスが低空でカラースモーク(色付きの煙)をまき散らして飛んだ結果、被害が出ました。なぜそんな事態が起きたのか―。(武田祐一)


写真

(写真)入間基地への着陸前にカラースモークを出しながら飛ぶブルーインパルス=8月24日、埼玉県狭山市(市民提供)

 被害があったのはブルーインパルスが東京パラリンピック開会式のための曲技飛行を行った8月24日です。ブルーインパルスが帰着した空自の入間基地(埼玉県狭山市)周辺では、自動車や家屋に塗料が付着していたため、住民から多数の苦情が出ています。

取り決め違反

 航空幕僚監部によると、パラリンピックにはブルーインパルスの第1編隊6機と、予備の第2編隊3機の9機が参加。第1編隊が東京上空で曲技飛行をした後、入間基地周辺でカラースモークを使いました。

 パイロットからの聞き取りによると、(1)カラースモークを使い切りたかった(2)市民に感謝の気持ちを伝える(3)自衛隊の広報(4)入間基地に所属する隊員の士気高揚をはかる目的だった―としています。

 両編隊は、事前の取り決めで、スモークを高度約305メートル以下では使用しないことになっていました。

 第1編隊は高度約518メートルでパラリンピックのシンボルカラーの赤、青、緑のスモークを使用しました。ところが第2編隊の2機が518メートルから下降しながら着陸直前の約30メートルの高さまで青と緑のスモークを噴出。3番機も最終進入経路の約137メートルの高さまで赤のスモークを出し続けました。

 第2編隊がどうして事前の取り決めを守らなかったのかは、まだ解明されていません。

 ブルーインパルスを目撃した年金生活の女性(72)は「ずいぶん低く飛んでいると思いました。近くの人は洗濯物などが汚れはしないかと心配でした。コロナで命が危ないというときに、オリンピック・パラリンピックを強行したうえに、こんな被害も出すなんてひどい」と怒ります。

過去にも被害

 被害はブルーインパルスが飛んだルートに沿って埼玉県狭山市、所沢市など広い範囲に及んでいるとみられます。

 この問題について、日本共産党埼玉西南地区委員会、埼玉県議団、市民団体は15日、防衛省に申し入れをしました。塩川鉄也党衆院議員も同席しました。

 防衛省によれば、同省に寄せられている相談は10日現在、約200件で、被害にあった自動車は800台に上り、家屋も数件あるとしています。

 参加者からは「『市民に感謝の気持ちを伝える』ためだったというが基地周辺の住民にとって自衛隊機の飛行は迷惑行為だ」「1998年に北海道と山口県での航空祭で今回と同様の被害を出し、カラースモークの使用をやめていたのに、なぜ過去の教訓に学ばなかったのか」との声が出されました。

 同省側は「東京都からオリンピック・パラリンピック開会式で展示(曲技)飛行をしてほしいと依頼があって」復活させたことを明らかにし、同じ過ちを繰り返したことは「遺憾に思う」と述べるにとどまりました。

 塩川議員は「そもそも人口密集地での曲技飛行はやめよ」と抗議。「被害者についてはビラをまくなど広く市民に周知し、被害実態を把握し、誠実に補償すべきだ」と強調しました。同省は「被害については誠実に対応したい」と補償する方向で検討すると答えました。


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