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2021年9月2日(木)

主張

軍事費概算要求

国民生活圧迫の軍拡許されぬ

 防衛省が2022年度の軍事費の概算要求を決定しました。総額は過去2番目の規模の5兆4797億円で、21年度当初予算比で1374億円(2・6%)の増となっています。同省は「周辺各国が防衛費の大幅な増額等により軍事力の強化を図る」などしているとし、日本も「防衛力を大幅に強化」すると表明しています。中国への軍事的対抗を念頭に一層の軍拡に乗り出そうとする姿勢が露骨です。東アジアの軍事的緊張を高めるだけでなく、コロナ禍で抜本的な拡充が求められている国民生活関連予算を圧迫する軍事費のさらなる増額は到底認められません。

新規後年度負担が最大に

 軍事費は、安倍晋三前政権の下で13年度から右肩上がりの増額が続いています。菅義偉政権が決めた21年度を含め9年連続の増で、過去最大を更新するのは7年連続となっています。今回の概算要求は、菅首相が4月の日米首脳会談で「自らの防衛力を強化する」と表明したのを受けたもので、年末に編成される予算案で8年連続の過去最高額計上を狙っています。

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設など米軍再編経費やSACO(沖縄に関する特別行動委員会)経費、長距離巡航ミサイルを搭載可能にするF15戦闘機の改修費が、金額を示さない「事項要求」となっており、年末までにこれらの額が確定すれば要求額はさらに膨れ上がります。

 21年度の概算要求額と比べると、わずかに減額となっているものの、防衛省は、5年間の軍備増強計画である「中期防衛力整備計画」(19~23年度)を「より一層加速」するとしています。兵器の購入を増やすため、ローン払いである「新規後年度負担」が21年度当初予算比で2012億円(7・8%)増の2兆7963億円と過去最大になっていることは重大です。

 例えば、最新鋭のステルス戦闘機F35Aを8機(779億円)、短距離離陸・垂直着陸が可能なF35Bを4機(521億円)計上し、21年度の4機と2機から倍増するなどしています。

 規模だけでなく中身も大きな問題です。「敵基地攻撃能力」の保有につながる兵器の導入・開発が含まれているのは看過できません。

 F35AとF35Bの取得に加え、▽F35Bを搭載可能にする「いずも」型護衛艦の空母化(67億円)▽陸上だけでなく航空機や艦船からも発射できる新たな長距離巡航ミサイル(12式地対艦誘導弾能力向上型)の開発(379億円)▽超音速で飛ぶ高速滑空弾の研究(145億円)―などです。

 一方で、米政権の要求に付き従い、米国製兵器の購入を進めてきた矛盾も表れています。

 昨年断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に代わる「イージス・システム搭載艦」は総経費が1兆円を超えるとされ、今回の概算要求では建造費の計上を見送りました。

軍縮のイニシアチブこそ

 しかし、ロッキード・マーチン社製のイージス・アショア用レーダー(SPY7)の導入に固執し、洋上仕様に変更する経費(58億円)だけを盛り込みました。

 中国の覇権主義的行動をやめさせるとともに、軍拡から軍縮の道に踏み出すため、外交的なイニシアチブを発揮できる政治の実現が切実に求められています。


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