テレビ

~5月のテレビラジオ面~

☆脚本家・井上由美子さんが語る「緊急取調室」

☆小さな局が暴いた大きな不正~富山・チューリップテレビ

☆記者座談会 春の民放ドラマの見どころは?

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□脚本家・井上由美子さんが語る「緊急取調室」(29日付)

 人気ドラマ「緊急取調室」(朝日系)の脚本を担当した井上由美子さんが登場します。刑事ドラマを借りて伝えたかったのは、「人と向き合って話し合うことの大事さ」でした。さらに、脚本家の道に進むきっかけとなった〝ある体験〟とは。(記事を読む

□小さな局が暴いた大きな不正~富山・チューリップテレビ(15日付)

 市議会議員が次々辞職に追い込まれた「富山市議会の政務活動費不正取得問題」。解明の突破口を開いたのは、社員数70人のチューリップテレビでした。2017年度の日本記者クラブ賞特別賞を受賞した取材チームの活躍を、じっくりと聞きました。(紙面を見る

□記者座談会 春の民放ドラマの見どころは?(22日付)

 春の民放連続ドラマはいよいよ佳境を迎えます。「緊急取調室」(朝日系)や「母になる」(日本系)などの話題作から、倉本聰脚本の昼帯ドラマ「やすらぎの郷」(朝日系)まで、魅力や見どころを本紙記者が少々辛めに話し合います。(記事を読む

●NHKの現場を語る~市民の「つどい」から(3、4日付)

NHKの「現場」の人たちは、どのような思いで番組を制作し、取材に臨んでいるのでしょうか。かつて「ロッキード事件」の最前線で取材した元社会部記者の大治浩之輔さん、障害者やマイノリティーのためのバラエティー番組「バリバラ」を担当する森下光泰ディレクターが、市民団体の「つどい」で語った柱を紹介します。(記事を読む

●フジ「月9」30周年 求められる恋愛ドラマとは(6日付)

30周年を迎えたフジテレビ「月9」ですが、今期はラブ・ストーリーから〝撤退〟しました。いま、視聴者から求められている恋愛ドラマっていったい何? 昨年大ヒットした「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)から考察します。(記事を読む

●第25回橋田賞 特別賞は「鬼平 28年」吉右衛門(18日)

 人とのふれあいを温かく取り上げてきた番組や出演者に贈る「橋田賞」。このほど東京都内で開かれた贈賞式の模様を伝えます。橋田さんはじめ、「鬼平犯科帳28年」で特別賞を受賞した中村吉右衛門さんらの喜びの声を、どうぞ。(記事を読む

●東京MX「ニュース女子」問題に怒り~BPOが審理入り(24日付)

沖縄の米軍基地反対運動をねじ曲げて報じた東京MXテレビ「ニュース女子」。BPOは、放送倫理検証委員会に続いて放送人権委員会も審理入りを決めました。放送から4ケ月。抗議の声が広がるなか、あらためて番組の問題点を検証します。(紙面を見る

●ドラマで活躍・多彩な顔が登場 5月の「休憩室」(毎週土曜日掲載)

久住小春さんは朝日系「女囚セブン」で、京都の舞妓(まいこ)役に全力投球。「モーニング娘。」卒業後も、俳優にモデル、ダンスと活躍の場を大きく広げています。

☆ダビンチとミケランジェロを訪ねる旅に出た中井貴一さん。BS‐TBS「中井貴一 ヨーロッパ大紀行Ⅱ」(6月13・20日放送)でじっくり鑑賞します。

☆NHK「みをつくし料理帖」で主役の澪を演じる黒木華さん。だしの引き方から大根のかつらむきまで、料理の基礎を練習して撮影に臨んだといいます。

髙橋ひかるさんは大河ドラマ「おんな城主直虎」が初めてのドラマ出演。井伊直親の娘として現れた少女役を通じて、「終わった時に『成長できたな』と思いたい」。

●好評・「試写室」 新ドラマ、ドキュメンタリーを紹介

ジャーナリストや作家、詩人ら多彩な執筆陣が、新作ドラマやドキュメンタリーなどの話題作を取り上げ、見どころを伝えます。みなさんは今夜、どの番組を選びますか?

♪♪♪毎週月曜日付は「テレビ・ラジオ特集」です♪♪♪

 毎週月曜は1面を使った特集面をお届けします。最新のテレビ・芸能情報から、話題の人へのインタビュー「思いのままに」など内容も多彩。一流執筆陣によるコラム「波動」は放送界の「いま」を深く切り取ります。毎月1回、気鋭の若手ライター・武田砂鉄さんの「いかがなものか!」、演出の巨匠・鶴橋康夫さんの「ドラマの種」、テレビ評論の重鎮・松尾羊一さんの「ドラマのドラマ」、脚本家や映画監督として羽ばたく足立紳さんの「七転びな日々」と、読みごたえたっぷりのコラムを、どうぞ!

◆「波動」執筆陣(50音順)◆

 石井彰(放送作家)、河野慎二(ジャーナリスト)、桜宮淳一(在阪テレビ局報道記者)、隅井孝雄(ジャーナリスト)、利元克巳(広島マスコミ9条の会)、桧山珠美(テレビコラムニスト)、藤久ミネ(評論家)

♪♪♪読者・視聴者の「声」で紙面をつくります♪♪♪

◇あなたも投稿してみませんか~「みんなのアンテナ」
「あのドラマは感動した!」「ちょっとこの番組はヘンじゃない」…。テレビ・ラジオ番組の感想を募集しています。また、放送問題への意見も大歓迎です。

「みんなのアンテナ」「私のイチオシ番組」は、ともに200字程度の原稿にまとめ、①住所②氏名(紙上匿名可)③年齢④電話番号を記入のうえ、以下のあて先・アドレスに送付してください。掲載の場合は薄謝を進呈します。

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◎思いのままに/朝日系「緊急取調室」の脚本家 井上由美子さん/人のいとしさ面白さ/向き合うことの大事さ伝えたい

 脚本家の道を歩んで25年。井上由美子さんは、人の心の厚みを描き続けてきました。放送中の朝日系「緊急取調室」では、言葉をじかにやりとりすることの大事さを伝えたいと語ります。(田村三香子)

 いま、メールやラインで連絡を済ませることが多いですね。取調室のように机をはさんだ距離で人と向き合うことはなかなかありません。そんな世の中にあって、刑事ドラマに形を借りて、人と向き合って話をすることの大事さを訴えたいと考えています。人と直に向き合うことが少なくなった時代だからこそ、「いま的」な題材だと思っています。
 刑事が走るわけでもなく、アクションもなく、取り調べのシーンが中心です。毎回、違う話を見たなぁと思っていただけるには、被疑者のキャラクターや背景を考え抜くことですね。被疑者の履歴など、水面に出ていない部分の仕事が大きい。だから、1回の脚本を書くのは一つの連続ドラマを書くのと同じぐらい難しいことです。

幼少期の入院

 登場人物の中で、傷の深い人に心を近付けて書いてしまうことはありますね。わたしを含めてドラマを見ている人にとっても、生きることは日々傷つくことなので。
 人間って、一貫性がなくて複雑ですが、みんな必死で生きていて、愚かだけれども愛すべき存在。わたしは刑事ものも医療ものも、恋愛ものも「何でもやるね」といわれます。でも、わたしの中では、題材はそのときどきであってもテーマは一つ。人のおもしろさ、いとしさみたいなもので、つながっています。
 子どものころからドラマはよく見ていました。体が弱くて長く入院していて、娯楽はテレビぐらい。病棟の一室に子どもたちが集まってきて一緒にドラマを見ていたものです。重い病気の子もいれば足をけがしただけの子もいる。先週はいたのに今週は死んでしまっていない子もいました。そんな中、「連続ドラマって次の週もみんな生きててわたしたちを笑わせてくれる。すごいな」と、子ども心に思いました。本当の意味でテレビと出合った瞬間です。

ドラマ大好き

 わたしはドラマが大好きです。「見た人が何かおしゃべりしたくなるドラマ」を作りたい。それが物語のよさなので。私自身もいろんな意見を、未来のドラマのために生かせればいいなと思っています。
 書いてみたいと思うものの一つは、向田邦子さんの「幸福」のような作品。姉妹が一人の男性と濃密に関わる話で、それが日常の中に描き出されます。日常の中に女の人のかわいさだったり怖さだったりというものが見られる作品です。役者の演技力だけで見せるような。自分にそれだけの力量があるかどうか、わかりませんが、やってみたいと思います。

 いのうえ ゆみこ 兵庫県出身。立命館大学文学部を卒業後、テレビ東京を経て、脚本家デビュー。主な作品に、連続テレビ小説「ひまわり」「白い巨塔」「14才の母」「パンドラ」「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」「お母さん、娘をやめていいですか?」など多数。2007年、「マチベン」で芸術選奨、向田邦子賞、受賞。

緊急取調室 4月から第2シリーズが放送されている天海祐希主演の刑事ドラマ。第1シリーズは2014年。劇中、可視化された取調室で主人公・真壁有希子(天海)をはじめとする「緊急事案対応取調班」の面々が、被疑者と緊迫の心理戦を繰り広げます。
(5月29日付)


◎春の民放ドラマ見どころは/記者座談会/人間の複雑さ、母の強さ/目立つ「警察モノ」ジャンルに偏り

 A シリーズ2作目の「緊急取調室」(朝日系)が抜群の安定感だ。主演の天海祐希をはじめ、大杉漣、小日向文世など、脇役も手堅い。
 B 1話のゲスト・三田佳子の独居老人の孤独とプライドをみなぎらせた演技は圧巻。受けの芝居をしながら、毅然(きぜん)と対峙(たいじ)する天海もよかった。
 C 取り調べの可視化(録音録画)の中、心理戦の攻防から、一筋縄ではいかない人間の複雑さが見えてくるのが、面白さではないかな。「ドクターX」のようなシリーズ化になるのでは。

沢尻エリカ好演

 A 沢尻エリカが母親役に挑戦した「母になる」(日本系)も意欲作。当初は「エリカ様が母親役?」と思ったが、愛する息子が誘拐された苦しみ、母の強さを見せて、何度も泣かされた。
 B もう一人の母役・小池栄子の狂気と母性、悲しさに圧倒される。母になるとはどういうことか、深く問いかける作品になると期待したい。
 A 「フランケンシュタインの恋」(日本系)は、綾野剛演じる怪物が、人間と恋に落ちる。怪物の純粋さやほどよいファンタジー感がいい。
 C 怪物がよく聞いているラジオ「天草に訊(き)け!」が意外と哲学的。エンディング曲も物語を盛り上げている。キノコの演出は賛否両論だね。
 B 警視庁本庁と所轄署の対立を描く「小さな巨人」(TBS系)は?
 A 敵は味方のフリをする、正義はなかなか勝たない…、警察を会社に置き換えて、共感するサラリーマンは多いと思う。最後に長谷川博己がいう「たたかうしかない」に励まされる。
 C 香川照之の演技はもはや歌舞伎。夕日に感動をあおる音楽など、くどい演出にちょっと胃もたれ。「半沢直樹」を焼き直しするのも、そろそろ卒業してもいいころでは?

さすが倉本脚本

 A 「やすらぎの郷(さと)」(朝日系)は、視聴率第一主義に対するテレビ業界への愛ある苦言や特攻隊員の話など、さすが倉本聰。フジが蹴った脚本をすくい上げ、「シルバータイム」を設けたのは朝日の英断だったと思う。
 B 往年のスターらの年を重ねても恋やうわさ話に忙しい〝やすらがない郷〟の人生模様も面白い。
 C 女優を聖女のように描いたかと思えば、下世話に描いたりして、同じ女性としてどうもしっくりこないんだけど。
 B 公安警察の秘密部隊が登場する「CRISIS」(フジ系)は、迫力のアクションに、スピード感ある展開。直木賞作家・金城一紀の原案・脚本だけあって、緊迫感あふれる骨太な物語だ。
 C 国家による犯罪の隠蔽(いんぺい)を取り上げつつも、テロの脅威、国家の危機という言葉を多用して、公安警察が暗躍する姿に不気味さを感じる。警察が市民を監視し、「心の中」を処罰対象とする共謀罪を安倍政権が推し進めようとしている今、政府の思惑を〝先取り〟した印象を受けて気になる。

多様な挑戦望む

 A 今期は「警察モノ」が6本と非常に多く、恋愛ドラマはフジの月9が〝撤退〟、10時以降に押し込められた感じだ。恋愛ドラマは若者や女性の視聴が中心。「警察モノ」は男性も見るので、安定した視聴率が取りやすい、当たればシリーズ化しやすいという、テレビ局の思惑があるようだ。
 B ジャンルが偏ることで、同じような作品が増えていき、テレビ界全体としては視聴者に飽きられてしまうと思う。
 C 「逃げるは恥だが役に立つ」や「カルテット」のヒットなど、いい作品を作れば視聴者は注目する。目先の視聴率にとらわれず、多様なジャンルに挑戦してほしい。
(5月22日付)


◎NHKの現場を語る―市民の「つどい」から/上/元記者 大治浩之輔さん/ロッキード事件最前線/圧力とたたかうのがトップの責任

 安倍政権が公共放送・NHKへの圧力を強めているなか、現場はどのような姿勢で臨んでいるのでしょうか。かつて、「ロッキード事件」取材の最前線でたたかった元NHK記者・大治浩之輔さん(82)が、市民団体がこのほど開いたつどいで、「安倍政権の独走とメディアの責任」について語りました。(佐藤研二)

 つどいは、市民団体「NHK問題を考える会(兵庫)」が主催。大治さんは冒頭、森友事件などを引き起こした安倍政権に対し「腐敗が起きるのは強権政治の運命」だと強調。「戦後30年の保守独走状態が生み出したロッキード事件」と重ね合わせます。
 ロッキード事件は、1976年2月5日に配信された一つの外電から始まりました。旅客機を日本に売り込みたい米ロッキード社が、右翼の児玉誉士夫や大手商社丸紅などを巻き込み、数十億円の工作資金を政界に流し込んだという一大疑獄事件。当時社会部記者だった大治さんは「児玉は政界の黒幕。日本の民主主義とジャーナリズムの覚悟が問われる」と、政界や財界に切り込みます。

支えは確信と国民への思い

 2カ月かけて「丸紅、偽証の疑い」というニュースを出すと同社幹部から「名誉棄損で告訴する」と脅され、自民党幹部からは「おまえの名前を覚えておく。次の転勤先はどこがいいか」―。激しい圧力が報道の現場にも及んだと振り返ります。
 「修羅場だった現場の志を支えたのは何か。どこから攻められても100%間違いがないというニュースへの確信と、事件の真相を明らかにすることで国民に受信料をお返しするという気持ちです。全国から寄せられた『NHKよくやった』という電話も大きな励みになりました」
 事件発覚から半年後の7月27日、ついに5億円の賄賂を受け取ったとして田中角栄前首相が東京地検特捜部に逮捕されました。大治さんは事件を総括する原稿を書き上げます。田中氏の逮捕・起訴は「政官財癒着の腐りきった体質と構造を国民の前にさらけ出した」と強調し、「これを育て見逃してきた戦後30年の日本の民主主義とは何であったかという問いを国民に突き付けているといえます」と結ぶものでした。

報道中止命令 背後になにが

 しかし、「NHK内部のたたかい」は終わりませんでした。5年後の81年2月、大治さんらは、〝闇将軍〟として権勢をふるう田中氏を追及するリポートを制作しますが、突然、報道局長が「報道中止命令」を出したといいます。「その後、私を含め抗議をした報道局のデスク全員が飛ばされました」
 自信を持つニュースがなぜ〝中止〟になったのか。大治さんは「政治とNHKとの関係」を指摘します。「2月は国会でNHK予算の審議が始まる時期。予算を説明に行ったNHK理事に、自民党の二階堂進総務会長が『またNHKはロッキードを放送するのか』と」。その意向をくんだ坂本朝一会長が、中止の決断を下したといいます。
 現在、NHKの会長をめぐっては安倍内閣が送り込んだ籾井勝人氏の再任を阻止したばかり。大治さんは「そもそも、NHK会長は経営委員会が決めるのもので、政治家に特権はない」と、公共放送の解体を狙う安倍政権を批判します。
 「圧力がきたときに、自分の地位をかけてたたかえるかどうかがトップの資質。NHKのトップはとりわけその責任を負っていると思います」

 おおはる・こうのすけ 1935年東京生まれ。62年NHK入局。社会部記者として公害問題やロッキード事件を継続取材。盛岡放送局長(90年)などを歴任し92年定年退職。現在NPO法人「マスコミ市民」理事長
(5月3日付)

◎NHKの現場を語る―市民の「つどい」から/下/ディレクター  森下光泰さん/「バリバラ」からの発信/差別とは何か、どうやってなくす?

 NHKEテレ「バリバラ」(日、後7・0)は、生きづらさを抱える人々のための番組を目指し、大胆な試みで発信しています。制作を担当するNHK大阪放送局のディレクター・森下光泰(みつひろ)さん(45)が、先ごろ都内で開かれた「第57回放送フォーラム」(主催は放送を語る会)で、100人を超える市民と語り合いました。(渡辺俊江)

 「バリバラ」とは、「バリアフリーバラエティー」を意味します。障害者や性的少数者らが出演しています。森下さんは3年前から制作にかかわるようになりました。

障害者自身が楽しめる番組

 「テレビに障害のある人が出てきても、特別な役割を持って登場する。普通に社会の一員として描かれることが少ないのではないかと思います。障害を持つ人たち自身が楽しめる番組があっていい。障害者を見て感動するのではなく、障害者と一緒に笑おう。『バリバラ』はそう考えて作っています」
 取材VTRやドラマでテーマを示して、スタジオでトークを展開。恋愛や仕事、性の悩みやファッションショーと次々に企画。障害者差別解消法についても取り上げてきました。
 森下さんは「当事者の視点、目線が何よりも大切」といいます。番組の方向性は二つ。一つは、今の社会の在り方に問題提起すること。もう一つは、差別とは何か、差別をなくすにはどうすればいいのかを考えていくことだとしています。

〝物差し〟から排除される人

 「私たちは一人ひとりが違う物差しを持った個人ですが、同時に、世の中には、多くの人が合わせようとする大きな物差しがある。そこから排除されている人が存在することにどう気づくかです」
 相模原市の障害者施設で起きた事件は、番組スタッフにとってもショックでした。「被害者の方々の顔も名前も知らされないままです。資本の論理が貫く格差社会の中で、人間の値打ちが生産性で測られてしまっている。相模原の事件は、われわれ自身の問題として考えないといけない」

「グサッとくる」…参加者と交流

 参加者から次々に感想や質問が出ました。
 「障害のある子がいることもあって、番組のファンです」(女性)
 「笑ってしまう場面がある。バラエティーの中にグサッとくるものを感じる」(男性)
 森下さんはNHKに入局して20年。その時歴史が動いた「人間は尊敬すべきものだ~全国水平社 差別との闘い」(2008年)、ETV特集「原発事故への道程」(11年)など多くの番組を制作してきました。
 「これまで作ってきた番組と、『バリバラ』の連関は?」との質問に、森下さんは次のように話しました。
 「大学時代、日雇い労働者が暮らす大阪・釜ケ崎で行事を手伝いました。読み書きできない人たちに出会った。教育を受ける機会を持てずに生きてこられたんですね。それを強いてきた社会の在り方、差別や人権について考えるきっかけになりました。『バリバラ』でも同じ問いかけをしているつもりです」
 在日韓国人の女性が「長い間、差別を受けてきた。見えない差別もある」と語りました。
 森下さんは、ETV特集「埋もれた声~大逆事件から100年」(2010年)の取材体験をもとに話しました。1910年、明治天皇の暗殺を企てたとでっち上げられて、社会主義者らが弾圧された事件です。
 「犠牲者の孫に話を聞くと、学校ではいじめにあい、先生から『逆賊の子』と言われたと。警察の監視下に置かれ、地域社会からも排除される。犯罪予備軍として扱われるわけです。今、それを肯定するような議論が起きているのを感じます」
(5月4日付)


◎求められる恋愛ドラマとは?/社会問題に通じる提言も/いろいろな形見せてほしい

 フジテレビ系の月曜のドラマ枠「月9」が30周年を迎えました。「ラブストーリーといえば、月9」といわれましたが、今期は恋愛ドラマから〝撤退〟。相葉雅紀主演のミステリー「貴族探偵」が始まりました。一方、TBS系「逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)」(2016年)のヒットもあります。(小松幸枝)

 「逃げ恥」は視聴者の心に何がヒットしたのでしょうか―。
 失業中のヒロインみくり(新垣結衣)が「就職」として、恋愛経験なしの津崎(星野源)と契約結婚をする中で、本物の関係を築いていきます。
 2人の初々しさや〝恋ダンス〟がうけた要素もありますが、いまの若い世代が抱える、雇用不安や誰かに認めてほしいという思い、恋愛や結婚をすることが難しいなど、世相をうまく取り込んでいるところがフィットしたと思います。
 結婚とは何か、専業主婦の労働の対価とはなど、古くて新しい問題も提起。ゲイカップルの誕生などあらゆる人生を肯定する多様性を感じました。
 さらにこんなシーンも。49歳のキャリアウーマン・百合(石田ゆり子)が17歳年下の男性から好意を寄せられ、それを知った〝若さがすべて〟の女性から非難されます。百合は「女性の若さこそ価値である」という社会の旧来的な価値観を「呪い」と呼び、そこから逃げることを提案します。
 女性は35歳から高齢出産の時期とされるため、婚活の場では子どもを望む男性にとって条件の一つとなり、〝35歳の壁〟ともいわれています。
 百合のせりふは、年齢や旧来的な価値観に悩む女性を大いに励ましました。

予想の斜め上を

 コラムニストの桧山珠美さんは「逃げ恥には、新しい恋愛や結婚の在り方を考えようよという、社会問題に通じる提言がありました。やっぱり恋愛は、人間のコミュニケーションの原点。恋愛しづらい時代だからこそ、恋愛ドラマでいろんな愛の形を見せてほしい」といいます。
 「視聴者は目が肥えてきているので、予想の斜め上を行くようなものでないと見向きもされないのでは。これからのドラマは、逃げ恥の到達点に立って、作ることが求められていると思います」
 1~3月に放送された「突然ですが、明日結婚します」は、月9史上最低視聴率を更新。桧山さんは要因をこう指摘します。
 「若者がタワーマンションに住んでいたり…。昔のトレンディードラマはそれでよかったけれど、いまは厳しい時代。視聴者との感覚がずれてしまっていました」

原点に立ち返り

 振り返ると月9でも時代の空気を読み、先駆けたような作品もありました。2015年に放送された「デート~恋とはどんなものかしら~」です。
 融通が利かない超理系女子(杏)と自称「高等遊民」のニート(長谷川博己)のラブコメディー。自分と違う存在をどう認めていくかが、よく描かれていました。
 月9は原点に立ち返って、視聴者が求める恋愛ドラマを模索してほしいと願わずにはいられません。
(5月6日付)


◎橋田賞、NHKこども番組などへ/テレビ文化として/「鬼平犯科帳」28年/特別賞は吉右衛門

 第25回橋田賞の授賞式がこのほど都内で開かれました。人とのふれあいを温かく取り上げてきた番組や出演者らに贈られる賞。脚本家の橋田寿賀子さんが提案し、橋田文化財団が運営にあたっています。

 橋田さんがあいさつしました。「5月10日で92歳になりました。まだまだ元気に書き続けていければと思います。お集まりのみなさまとテレビへの熱い思いを語り合えればと願っています」
 橋田賞は四つの番組と2人の俳優へ。その一つが「NHKこども幼児番組」です。「おかあさんといっしょ」「ピタゴラスイッチ」などで「さまざまな感じ方・考え方があることの豊かさなど楽しさを味わってもらえる」と評されました。
 NHKの山田淳プロデューサーは「授賞理由に『長年にわたり』とあったことがうれしかったです。『おかあさんといっしょ』が始まったのは1959年。60年近く、多くのスタッフが連綿と引き継いできました。テレビ文化として評価してくださったのかと思います」。
 特別賞は中村吉右衛門さん。28年にわたり「鬼平犯科帳」150作で鬼平を魅力的に演じました。
 吉右衛門さんは「テレビでお世話になったのはNHKで舞台中継が始まったころでした。私は8歳か9歳でした。時代劇も生放送だったときがありました。72歳になりまして体力的なこともありまして、『鬼平』は終焉(しゅうえん)と私のわがままを受け入れていただいた次第です」。
 橋田さんは次のように話しました。「NHKの子ども番組は海外旅行先で見せてもらいました。椅子が飛んだりと、びっくりするような出来上がりでした。吉右衛門さんは私たちにとっては雲の上の方。時代劇も書きましたが、吉右衛門さんに出ていただく夢はかないませんでした。でも、きょうは賞をもらっていただいて感激です」
 ドキュメンタリストの吉永春子さんにも特別賞が贈られました。昨年亡くなった吉永さんは、「松川事件の黒い霧」「ある傷痕・魔の731部隊」など多くを手がけました。
 めいの村山典子さんが代わって受賞しました。
 「吉永は自分にも他人にも厳しい人でした。私はそんな背中を見ながら、本物を追いかけている、気迫のある人だと感じていました」

〈橋田賞〉土曜ドラマ「夏目漱石の妻」(NHK)▽ドラマ「ふつうが一番~作家・藤沢周平 父の一言」(TBS)▽ドキュメンタリー「人生フルーツ」(東海テレビ)▽NHKこども幼児番組
 船越英一郎▽新垣結衣
〈新人賞〉 高畑充希
〈特別賞〉 中村吉右衛門▽吉永春子
〈新人脚本賞〉入選作=「夏の通り雨」開(ひらき)真理▽佳作=「今日はごみの日」花田麻衣子
 ※大賞は該当なしです。
(5月18日付)

 

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