しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年4月19日(金)

主張

こども誰でも通園

看板倒れで危険な政策改めよ

 「親の就労にかかわらずすべてのこどもの育ちを応援する」―こんな看板を掲げて、政府は「こども誰でも通園制度」を創設しようとしています。国会で審議中の子ども・子育て支援法改定案に盛り込まれており、2026年度から全国での実施が目指されています。

 「家庭とは異なる経験のなかで成長できる機会を保障する」「在宅で子育てする保護者の孤立感や不安感の解消につながる」と政府は意義を強調します。

 その中身は、親が就労しておらず保育所などに通っていない生後6カ月から2歳の子どもを対象に、月一定時間(当面10時間)までの利用枠の中で時間単位で預けられるというものです。

 政府は、現在の一時預かり事業が「保護者の立場からの必要性に対応するもの」なのに対し、新制度は「こどもを中心に考えるもの」だとします。

 子どもも保護者も、保育の専門家や家族以外の人と交流しながら子育てできる環境の整備は重要で、多くの保護者の要求です。

■時間単位で柔軟に

 しかし、提案されている誰でも通園制度はあまりに看板倒れです。

 利用は事業者との直接契約です。預ける園・曜日・時間を決めて定期的に利用する方式(1日5時間で月2回、1日2時間で週1回など)だけでなく、スマートフォンのアプリで空き状況を見てその都度、空いている園・時間にスマホから直接申し込む方式が考えられています。

 政府は、「柔軟に」「簡単に」「タイムリーに」予約できることを新制度の利点として押し出し、「できるだけ利便性を高めたシステム」にするとします。空きがあれば直前の予約も可能で、全国どこの事業所にも予約できます。実施場所は保育所、認定こども園などのほか、駅周辺など利便性の高い場所とされ、企業の参入が狙われています。

■子どもの安全危惧

 市町村が事業所を認可しますが、認可基準は緩く、必要な保育従事者のうち保育士は半分でよいとされています。乳幼児を事前の面談なしに保育士資格のない人がみることが可能な仕組みです。

 制度の詳細は、昨年度から始まった試行的事業の状況を踏まえて検討するとされますが、つくろうとしている制度は政府が理念に掲げるようなものではありません。子どもの安全が保てるのか強く危惧されます。

 日本の保育士の配置基準は諸外国と比べて低く、保育士1人が見る子どもの数が多すぎるのが現状です。そこに新たな子どもが短時間、日替わりで来るとなれば現場の負担はさらに増えます。アレルギーや発達状況など必要な情報が把握されず命にかかわる事故が起きかねません。慣れない環境に置かれる子どものストレスが懸念されます。

 政府の検討会でも、「こどもを理解するには一定の時間がかかる」「今通っているこどもたちの保育に支障があってはならない」と指摘されています。

 すべての子どもの育ちを応援するには法案のやり方ではだめです。保育士の配置基準を抜本的に改善し、専用の保育室を確保し、親の就労にかかわらず公が責任を持つ保育施設に入れる体制をつくるべきです。


pageup