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2024年3月22日(金)

生活保護停止を取り消し

津地裁が賠償命令

三重・鈴鹿 日常生活の車使用認める

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(写真)判決言い渡し後、地裁前で「勝訴」の旗が掲げられ、原告(右端)と握手して喜ぶ芦葉甫弁護士=21日、三重県津市

 三重県鈴鹿市で生活保護を利用する親子が、車の使用に関して、運転記録票を提出しなかったことで保護停止されたのは違法だとして、同市に対し、停止処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が21日、津地裁でありました。竹内浩史裁判長は、停止処分を取り消し、同市に対し、親子それぞれに損害賠償として10万円ずつ支払うよう命じました。

 親子は2019年8月から生活保護を利用し始めました。いずれも身体障害があり、長距離を歩くことが困難です。同市は、息子(56)の通院に限り車の使用を認め、運転記録票の提出を求めました。2人は、買い物などにも車を使用しました。同記録票は、行き先や経路、用件などを記入しなければならず、精神的な負担がありました。

 判決は、同市が車の使用を限定したことについて、母親の通院も必要であり「合理性があるとは言い難い」と指摘。加えて、運転記録票が距離や経路などの記載を求めている点について、「過剰であるとの疑いがある」と断じました。

 また車の使用について、日常生活に不可欠な買い物など必要な範囲で使用することは「自立した生活を送ることに資する」と判断しました。

 母親(81)は、19年に膀胱(ぼうこう)がんを手術して以降、ストーマが必要です。息子は、定期的な投薬がなければ生命に危機が生じる状況です。

 判決は、こうした状況を踏まえ、保護の停止処分で親子が医療費の支出が困難になることは「容易に想定でき」、多大な不利益を与えるもので「違法だ」と結論付けました。

 原告代理人の芦葉甫(はじめ)弁護士は、判決が車を買い物に使っていいと認めたことなどを評価。得られた判決にそった運用が全国に波及するよう、「厚生労働省にも働きかけていきたい」と話しました。


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