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2024年3月10日(日)

主張

米一般教書演説

ガザ停戦拒む二重基準是正を

 バイデン米大統領が、自身の再選を問う11月の大統領選を前に、就任後3回目となる一般教書演説を上下両院合同会議で行いました。選挙で再び対決するトランプ前大統領が選挙結果を否定する言動を続けていることや、ロシアのウクライナ侵略をあげ、「自由と民主主義が国内外で同時に攻撃されている」と、自らを攻撃からの擁護者として描きました。しかし、パレスチナ自治区ガザへのイスラエルによる攻撃と、ロシアの侵略が続く中、何より急務なのは、自らの都合で人権や民主主義を振りかざす一方、ガザで人道的停戦を拒む米国の二重基準の是正です。

武器与えながら人道支援

 昨年10月以降のガザのパレスチナ人死者は3万人を超えました。ジェノサイドともいうべき人道危機と飢餓がいっそう深刻化する中、演説には国際的関心も集まりました。バイデン氏は、ガザに海からも物資を搬入する方針を表明し、人道支援で「国際的努力をリードしてきた」と自負しました。

 人道支援は切実かつ必要です。しかし、複数の米メディアの最近の報道によると、バイデン政権はイスラエルの侵攻開始以来、米議会に正式通告をほとんどしないまま、多量の武器・弾薬を100回以上提供してきました。

 イスラム組織ハマスの奇襲が許されない蛮行であることは言をまちません。ただ、現在の人道危機は、イスラエルが国際法無視の無差別攻撃を続け、最低限の人道支援の搬入すら認めていないために起きているものです。人道支援の裏で巨額の軍事支援をイスラエルに続ける米政権に、「不合理で偽善的」(6日、サンダース上院議員)と批判があがるのは当然です。

 バイデン氏はイスラエルを批判しないばかりか、イスラエルにはハマスに反撃する「権利がある」と述べ、自衛権を名目にした同盟国の国際法違反を擁護しました。

 演説に通底するのは、国連憲章や国際法よりも同盟関係を、さらには、世界の同盟網に基盤を置く自国の軍事的優位を優先する姿勢です。ロシアのウクライナ侵略に対しては、国連憲章違反にふれることなく、北大西洋条約機構(NATO)を「かつてなく強力にした」と誇示。アジア太平洋でも、日本や韓国、豪州などとの同盟とパートナーシップの強化によって「21世紀の対中紛争を勝ち抜くのに、誰より、かつてなく強い立ち位置にいる」と述べました。

 中東と欧州の二つの戦争に対し国際社会の意思は明確です。国連総会はガザ攻撃で「即時の人道的停戦」を、ウクライナ侵略ではロシア軍の「即時、無条件の完全撤退」を圧倒的多数で支持してきました。

一国が世界の結束に障害

 安保理でガザの停戦決議案を拒否権で繰り返し葬る唯一の国である米国の姿勢は、ロシア非難と国連憲章の下に世界が結束するうえでいま、大きな障害です。バイデン氏は、「すべての人間は生まれながらに平等」という独立宣言に示された国家理念にふれ、「米国は一度もこの理念を完遂したことはないが、断念したこともない。私は諦めない」と、トランプ氏との対決色を鮮明にしました。しかし自国と同盟国を優先する二重基準を改めなければ、結局は、国際秩序軽視のトランプ氏と同じ立場だと世界はみなすことになります。


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