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2024年3月7日(木)

きょうの潮流

 蔵王おろしが吹きすさぶ地に、その碑はあります。「高野功ここに眠る」。45年前のきょう、中国軍の凶弾によって命を奪われた「赤旗」ハノイ特派員です▼ふるさと宮城県川崎町。どっしりとした石碑には最後の取材メモが刻まれています。「コトンとそばに落ちてきた砲弾の破片はまだ熱く……頭の上に落ちずに助かったとまずは強運に一安心」▼弾雨というのだろうか。数知れない銃弾が押し寄せ、ジープのフロントガラスが一瞬のうちに砕け、助手席にいた私の顔面で飛び散った―。ともに銃撃をうけた、フォトジャーナリストの中村梧郎さんが近著『記者狙撃』で当時の状況をよみがえらせています▼1979年3月7日のことでした。前の月からベトナムに攻め込んでいた中国の侵略の事実を高野さんは現地から世界に発信していました。3月5日、中国が「撤退」を表明。真偽を確かめるため、最前線の国境の町ランソンで取材していたさなかの殉職でした▼真実を掘り起こすことがジャーナリストの本分だという中村さん。侵略戦争はつねに自分の方が強い、敵は弱いからたたきのめそうと考える大国が引き起こすとして、ロシアのウクライナ侵略やイスラエルによるガザ攻撃を批判します▼半世紀近くがたっても墓碑には花が供えられ、ベトナムからの来訪者も。この地でくらす妻の高野美智子さんは「いまだに思い出してくれる」と感慨深く。35歳で亡くなった記者が眠る碑は、侵略への怒りと悲しみを静かに訴え続けています。


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