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2024年3月5日(火)

主張

診療報酬改定

コロナ禍の教訓に逆行する

 2年に1度の診療報酬改定の内容が固まりました(6月1日実施)。公的保険の医療の価格を定めるもので、医療機関にとっては諸経費をまかなう収入を左右します。物価高騰や賃上げのために大幅引き上げが求められていましたが、消費税増税への対応以外では6回連続のマイナス改定です。

急性期病床の絞り込み

 人件費や設備関係費に当たる診療報酬「本体」部分は0・88%の引き上げですが、薬価などが1%引き下げられ、トータルでは0・12%のマイナスです。薬価の引き下げ分は、以前は本体部分に上乗せされていましたが、2014年度からは行われていません。

 24年度予算案で社会保障費の自然増を約1400億円切り縮め、財界言いなりに医療費抑制路線をひた走る自公政権の姿勢を示しています。

 改定内容もそれを反映しています。一つは、発症間もない急性期に対応する病床の削減をすすめることです。看護師の配置が最も多い「7対1病床」(入院患者7人に看護師1人以上)の対象者の条件を厳しくし、平均入院日数も2日短くして「16日以内」とします。対象にならない人や16日を超えた患者は退院を迫られたり、病気の治りにくい高齢者は入院も敬遠されることになります。200床以下の中小病院の2割で急性期病床が維持できなくなるとの指摘もあります。感染症の流行などに備えた余裕ある体制確保というコロナ禍の教訓に逆行します。

 二つ目は、診療所を中心として報酬を0・25%引き下げることです。とくに糖尿病、高血圧、高脂血症の三つの慢性疾患の診療報酬が大幅にカットされます。こうした基礎疾患をしっかり手当てしてこそ大きな病気は防げるとしてきたものを削減します。発熱外来などコロナ感染で役割を発揮した診療所に大きな影響を与えます。「入院から在宅へ」をすすめながら、在宅医療の役割を担う診療所の収入減が危惧されます。

 患者負担も増やします。薬剤では、特許が切れている薬(先発品)でジェネリック医薬品(後発薬)があるものについて、窓口負担を10月から引き上げます。先発薬と後発薬との差額の4分の1を、保険外で患者に負担させます。患者によっては自己負担が3倍にも膨れます。入院時の食事代の負担は月約3千円増えます。保険給付は据え置いて患者の自己負担だけを増やすものです。

 問題なのは、「医療DX」をすすめるため、マイナンバー保険証の利用などを条件に初診料に80円の加算を新設することです。欠陥だらけのマイナ保険証の普及役を医療機関にやらせようとしています。マイナ保険証を使用しない患者も含めて一律に負担を求めることは許せません。

賃上げへの手当は不十分

 今回、「看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種」の賃上げに診療報酬が当てられましたが、金額が小さく、事務部門や医師、歯科医師は対象を一部に限定しています。そもそもマイナス改定では、コロナ禍で頑張った医療機関全体の体制維持に必要な経費を確保できないことは明らかです。

 社会保障予算を増やし、医療機関にも患者にも犠牲を押しつける診療報酬のマイナス改定を見直すことが必要です。


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