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2024年3月4日(月)

主張

農政基本法改定

自給率の向上こそ一番の柱に

 先進諸国で最低の食料自給率、崩壊の危機が広がる農業と農村―この危機をどう打開するのか問われるなか、岸田文雄内閣は食料・農業・農村基本法改定案と関連法案を閣議決定し、国会に提出しました(2月27日)。1999年の法制定以来、改定は初めてです。しかしその中身は、危機打開どころか事態をさらに深刻化し亡国への道に導きかねないものです。

輸入と市場任せを促進

 最大の問題は、38%(カロリーベース)に落ち込んだ食料自給率の回復・向上を国政の課題から投げ捨てていることです。

 改定案は、現行基本法で唯一、目標として掲げ、「向上を図る」としてきた食料自給率を、いくつかの指標の一つに格下げしました。国民一人ひとりが良質な食料を安定的に入手できる重要性を「食料安全保障の確保」として強調していますが、自給率の向上を放棄してそれを保障することはできません。

 食や農の危機の根本にあるのは、歯止めなき輸入自由化と、価格保障・所得補償の削減・廃止など市場まかせの農政です。現行基本法はその路線を明確に打ち出したものでした。改定案はそこへの検証と反省がないまま、従来の基本路線の延長線上であれこれの対応を行っているにすぎません。

 そればかりか、輸入については食料安全保障の名の下で「安定的な輸入及び備蓄の確保を図る」と位置づけをいっそう強化しました。

 農業者が切実に求めていた再生産可能な農産物価格については、消費者や食品産業・流通業界などが考慮するものとされました。国はこれら関係者の「理解の増進」をすすめるというだけで、価格・所得補償の拡充など政治の責任で苦境にある農業経営を支える姿勢は一切みられません。

 これでは農業経営が成り立たず担い手が激減するのは必至です。改定案はそれを前提にして、大規模経営への支援の集中、先端的な技術の活用、輸出拡大などを掲げています。一部の農外企業の利益拡大のチャンスにはなっても、改定案が掲げる農業の持続的な発展や農村社会の振興とはあいいれず、農業による環境負荷の低減も困難になるでしょう。

 改定案は、基本理念として「食料安全保障」を前面に押し出しています。それと合わせて、輸入途絶など不測の事態に際し、コメ・ムギの増産や、作付け転換で花農家にイモを作らせることなどを罰則付きで強制できる“戦時食糧法”(食料供給困難事態対策法案)を提出していることも重大です。

作付け強制戦時さながら

 平時には農業の崩壊を放置しながら、いざとなったら作付けを強制する、戦時さながらの亡国農政そのものです。農業者が納得するはずがありません。「不測」に備えるというのなら、平時から農業を振興し、食料を増産し、自給率向上に力を尽くすことこそ政府の責務です。

 改定案をこのまま成立させるわけにはいきません。この間、農民連はじめ多くの団体・個人が自給率向上を政府の責務とすることなどを求めて運動を広げてきました。その声を国会に集中し、徹底審議を通じて法案の問題点を明らかにし、農政の基本的方向の抜本的転換を求めるときです。


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