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2024年3月2日(土)

主張

経済秘密保護法案

「物言えぬ社会」の危険は明白

 岸田文雄政権が、漏えいに罰則を科す国家機密の範囲を経済安全保障に関わる情報にも広げる「重要経済安保情報保護法案」(経済秘密保護法案)を国会に提出しました(2月27日)。軍事や外交などの分野で情報の秘匿を目的にした「特定秘密保護法」の経済安保版です。秘密の範囲が大幅に膨らみ、機密情報を扱うために求められる「適性評価」(セキュリティークリアランス)の対象になる民間人が飛躍的に増えます。国民の知る権利や表現・言論の自由を侵害する「物言えぬ社会」づくりを一層進めようとする重大な法案です。

国民の知る権利を侵害

 法案は、重要インフラや物資の供給網(重要経済基盤)に関し、▽外部の行為(攻撃)から保護する措置やその計画・研究▽脆弱(ぜいじゃく)性(安全性を脅かす欠陥)や革新的な技術▽外国政府や国際機関からの情報―などのうち、漏えいすれば日本の安全保障に「支障」を与える恐れがあるため、特に秘匿が必要なものを「重要経済安保情報」に指定するとしています。

 極めて抽象的な規定で、どんな情報が秘密にされるのか具体的な基準は示されていません。しかも、指定するのは首相やその他の閣僚など「行政機関の長」で、政府の恣意(しい)的な判断でいくらでも秘密の範囲を広げることができます。指定の期間も内閣が承認すれば無期限に延長できます。

 一方で政府は、米国など外国政府の他、基準を満たした企業や研究機関に重要経済安保情報を提供できます。その場合、従業員らが適性評価を受け、情報漏えいの恐れがないと認定されることが必要です。適性評価では、「政治上その他の主義主張」に基づき重要経済基盤を毀損(きそん)する活動との関係を調べます。事実上の思想調査です。対象は、本人だけでなく、配偶者、父母、子、兄弟姉妹、同居人などにも及びます。本人には、犯罪歴、薬物乱用歴、精神疾患の有無、飲酒の節度、借金をはじめ経済状況などの調査も行われます。

 適性評価は、企業の労働者や大学を含む研究機関の研究者などが幅広く対象になります。本人の同意が前提としていますが、勤め先で指示されれば事実上の強制となり、プライバシーを侵害され、断った場合には不利益を被る人権侵害にさらされる恐れがあります。

 情報を漏えいした場合は、最高5年の拘禁刑(懲役と禁錮を一本化したもの)が科されます。漏えいの共謀・教唆・扇動も最高3年の拘禁刑となります。ジャーナリストの取材活動などが重要経済安保情報を漏えいさせようとしたものとして処罰されかねません。

戦争国家づくりの一環

 米国の要求を受け2013年に成立した特定秘密保護法は、軍事、外交などの分野で日本の安全保障に「著しい支障」がある恐れのある情報を「特定秘密」に指定し漏えいに最高10年の懲役を科すものです。狙いは日米で国家戦略や軍事情報を擦り合わせるとともに、軍需企業が国際的な武器の共同開発・生産に参加することです。

 今回の法案は、宇宙、サイバー、先端半導体など軍民両用(デュアルユース)が進む分野でも日米の情報共有や国際的な共同開発への参加を促進するのが狙いです。岸田政権による安保3文書に基づく「戦争国家づくり」の一環であり、廃案にすることが必要です。


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