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2021年9月24日(金)

主張

米軍汚染水の処分

日本が負担するいわれはない

 在沖縄米海兵隊が普天間基地(沖縄県宜野湾市)から有害な有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)を含む汚染水を濃度を下げる処理をしたとして公共下水道へ放出した問題で、菅義偉政権は、基地内に残る汚染水36万リットルを防衛省が引き取り焼却処分することを決めました。処分費用は約9200万円とされます。米軍基地から出る汚染水は米側が自らの負担で焼却処分すべきものです。それを国民の税金で肩代わりするというのはあまりにも理不尽で、「主権国家の行為ではない」(沖縄の地元紙「琉球新報」19日付)と批判が上がっているのは当然です。

実際に浄化処理したのか

 有機フッ素化合物は、環境中で分解しにくく、「永遠の化学物質」と呼ばれます。人や動物の体内に蓄積しやすく、発がん性が指摘されています。

 普天間基地から放出された汚染水は、有機フッ素化合物を含んだ泡消火剤を使った訓練で発生したものです。これまでは、汚染水の焼却処分を日本の専門業者に委託してきましたが、経費と時間がかさむことを理由に、独自の浄化装置で濃度を低くした上で公共下水道に放出することを計画し、日本政府と協議を続けていました。

 7月に報道で発覚した放出計画に対し沖縄県や宜野湾市は従来の焼却処分を求め、強く反対しました。日本政府も協議中は放出しないよう要請していたと言います。

 ところが、海兵隊は8月下旬、地元の反対の声を無視し、日米の協議も調わない中で、公共下水道への放出を強行しました。しかも、日本側への連絡は放出の約30分前にメールを送り付けるという身勝手極まりないやり方でした。

 これに対し沖縄県議会や宜野湾市議会は米軍の責任で焼却処分することなどを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決しました。

 海兵隊は放出を強行した際、処理した汚染水に含まれる有機フッ素化合物の濃度は日本政府が定めた暫定指針値の約20分の1だとし、安全性を強調しました。

 しかし、宜野湾市議会の抗議決議と意見書(9月8日)は「(米軍の)浄化処理が確実になされていることを確認する手段は担保されておらず、(日米で)対応を協議している最中に放出を行ったことなどに鑑みても到底信頼できるものではない」と指摘していました。実際、宜野湾市が放出直後に普天間基地から公共下水道に排出される汚水の水質調査をしたところ、暫定指針値の約13倍もの有機フッ素化合物が検出(10日発表)され、米軍が汚染水を処理しなかった疑いも浮上しています。

地位協定にも規定がない

 今回の汚染水処分の肩代わりは、米軍の特権を保障する日米地位協定にも規定されていません。

 政府は、汚染水がたまっている格納庫の地下貯水槽に台風で雨水が流入し、あふれることがないようにする「緊急的な暫定措置」と言いますが、なぜ米軍自身が負担しないのかの説明にはなっていません。しかも、雨水の流入を防ぐために格納庫の補修を米側と協議するとしており、その費用まで日本側負担になる恐れもあります。

 問題の根本に、米側に対して焼却処分を毅然(きぜん)と迫れない政府の弱腰姿勢があることは明らかです。来たる総選挙で対米追従の政治の転換が切実に求められています。


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