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2021年7月28日(水)

「黒い雨」訴訟上告断念 原告ら会見

被爆者救済 速やかに

長きにわたる運動 一刻も早く手帳交付

 広島高裁判決の上告断念を受けた、訴訟弁護団、原告団の27日の会見では、判決の意義を踏まえ、「黒い雨」被爆者の救済を求める声が続きました。(広島県・宮中里佳)


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(写真)「全面勝訴」の判決を受け、広島高裁前で喜ぶ高野正明原告団長(中央)と原告の高東征二さん(左)ら=14日、広島市

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(写真)国に上告断念を求めて宣伝する原水協の人たち=15日、広島市

 弁護団の竹森雅泰事務局長は、菅義偉首相の突然の一報に「本当に良かった。と同時に、運動や裁判など中心的役割を果たしみんなを励ましてきた松本正行さん(原告団副団長、元日本共産党加計町議)のほか18人の亡くなった原告と一緒にこの日を迎えられなかったくやしさを感じた」と述べました。被爆者援護法の趣旨が国の責任で戦争被害を救済することにあると指摘し、「原告84人はもちろん、それ以外の被爆者にも判決に従って援護施策を改められることを希望する」と要望しました。

線引き取り払う

 長い間、国は、「黒い雨」被爆者を1976年に発表した宇田降雨図を根拠に「大雨地域」「小雨地域」に分断し「大雨地域」だけを救済の対象に限定。さらに被爆者健康手帳が交付されるには、国が定めたがんや白内障など11種の疾病を必要条件としてきました。加えて1980年の厚生相諮問機関の原爆被害者対策基本問題懇談会(基本懇)の答申を盾に、住民の願いに背を向け続けてきました。

 今回の高裁判決は、線引きしてきた「大雨地域」も11種の疾病も取っ払いました。「黒い雨」を浴びても浴びていなくても、11種に罹患(りかん)していなくても「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができないものであったこと」を立証することで足りるとしました。科学的根拠を主張してきた基本懇の考え方を切り捨てる画期的な判決を出しました。「内部被ばく」についてもはっきりと認めました。

オール広島の力

 県被団協としても裁判を一緒に取り組んできた佐久間邦彦理事長は、19人もの原告が亡くなり、一刻も早く全ての「黒い雨」被爆者を、被爆者援護法の理念に立ち返って救済する責任が国にはあると強調し「一日も早く原告や関連する人たちに被爆者健康手帳を交付してほしい」と訴えました。

 菅首相は「直ちに原告の皆さんには被爆者手帳を交付したい。同じような事情の方については、救済を早急に検討していきたい」と発言。さらに「多くの方が高齢者で、病気の方もいるので、速やかに救済すべきだ」とも言っています。

 会が結成された40年以上前から「黒い雨」問題に尽力してきた原爆「黒い雨」訴訟を支援する会の牧野一見共同代表(元日本共産党湯来町議)は「ホッとした」と述べた上で、長きにわたらざるをえなかった運動を「困難の連続でした。厳冬期の冬山のよう。運動をしてもしても、基本懇答申にバリケードされ、苦しんできた」と告白。高裁判決を「広島の司法の英知の結晶だ」とたたえ、原告団、弁護団、支援する会が三者一体となってたたかってきたとし「オール広島が国を説得させた。せめぎ合いに勝った」と喜び、今後も判決通りに実施させるため頑張ると決意を述べました。

不屈さの勝利 心から敬意

大平よしのぶ前衆院議員・衆院中国ブロック比例予定候補コメント

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 「『黒い雨』訴訟、首相が上告断念」―被爆者の願い、命がけの訴えがとうとう政府を動かしました。

 今度の二審判決は、「実際の黒い雨降雨域は、宇田雨域よりも広範であったと推認され」、「黒い雨に直接打たれたものは無論のこと、たとえ黒い雨に打たれていなくても、…内部被ばくによる健康被害を受ける可能性があ」り、「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができないもの」は全て被爆者と認めるとしたもの。

 つまり、この判決は、私が初質問(2015年3月5日)で黒い雨問題を取り上げた際の塩崎厚労大臣の答弁、「(宇田雨域以外は)放射線被曝(ひばく)があったとは考えられない」をことごとく覆す内容であり、それを今回政府は認めざるを得なくなったわけですから、本当に画期的です。

 科学と世論の力、そして被爆者が人間としての尊厳と希望を取り戻すたたかいをあきらめるわけにはいかないという原告・弁護団の不屈さの勝利です。

 心から敬意。

 ただちに全ての被爆者の救済を求めます。


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