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2021年5月13日(木)

きょうの潮流

 息子が死なないようにするにはどうしたらいいか。その場その場、一日一日を何とかつないだ8年でした▼中学校入学当初からの激しい暴力と恐喝行為。佐賀県鳥栖市の佐藤和威(かずい)さんは、21歳の今も重度のPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながら、裁判をたたかいます。学校でも暴力を振るわれていたのに、一審は学校や市を免罪する不当判決でした▼「『あいつら許せない』とガンガン物にあたってくれたりしたら、どんなに楽だったか。でも全部、和威自身に向けられるんです」。こう話す母親の真由美さんの平均睡眠時間はわずか3時間。いつ自殺企図に見舞われるかわからない息子を、必死で止めてきました▼「でも、学校が許せないというのとはちょっと違う」と真由美さんは言います。教師にも限界はある。だから、対応できないと思ったら別の機関を入れればいいと。学校に求めるささやかな願い、それさえまっすぐに受け止めることができないのか▼地裁判決後の会見で和威さんは顔も名前も明らかにし、「高裁でたたかう」と決意しました。当時の自分を助けてあげたい。そして、今いじめで苦しむ子どもたちのためにも、負けるわけにはいかない。そんな思いで再び裁判に臨む言葉の重みを、真由美さんはかみしめています▼公の機関さえ被害者を誹謗(ひぼう)中傷する理不尽さ。同じようにわが子の尊厳を奪われた家族や遺族らが、過酷なたたかいを支えます。だから本当のことを言い続けて良かったと思えるその日まで、顔を上げて。


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