2019年12月6日(金)
介護保険「障害者65歳問題」
負担軽減の対象外に怒り
「要件」撤廃しかない
障害者が65歳になると、それまで使っていた障害福祉サービスから介護保険サービスに半ば強制的に移行させられ利用料負担が発生します。厚生労働省は昨年4月から、利用者負担軽減の仕組みをつくりましたが、対象外となった人から怒りの声が上がっています。(岩井亜紀)
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利用料が重く
「月6000円以上の利用料を負担しています。経済的にきつい」
東京都足立区の都営住宅で1人暮らしの阿部百合子さん(68)は、ため息をつきます。脳性まひで部屋の中も車いすで移動。ヘルパーを週2回利用し、掃除やシーツ交換などを手伝ってもらいます。週2回デイサービスに通いマッサージを受けたりもしています。
65歳になる前に要介護認定を受け、要支援2とされました。月15万円たらずの年金で暮らす阿部さん。それまで利用していた障害福祉サービスは無料でしたが、現在は利用料負担が重くのしかかります。
厚労省は昨年4月から、介護保険利用料の自己負担分を償還払いする仕組みをつくりました(新高額障害福祉サービス等給付費)。
ところが、要支援2の阿部さんが現在利用できるのは、介護保険サービスではなく、足立区の総合事業サービス。そのため阿部さんは対象外になってしまいました。「要介護認定を受けているのに、介護保険ではないからと自己負担分が戻ってこないのは納得がいかない」
「なぜ私が…」
給付費の対象要件(別項)から外れる人も―。
「なぜ私が対象外になるのか疑問です」。そう訴えるのは、広島市の森岡靖夫さん(80)。3歳の時の高熱の影響で全身性障害があります。介護保険サービスと障害福祉サービスを併用し、1人暮らしです。森岡さんが給付費の対象にならないのはなぜか。
厚労省は給付費を創設した理由について、「長きにわたって障害福祉サービスを無料で利用していた障害者が、65歳に達して介護保険に移行することでサービス利用料が発生し、急な負担の増加を問題としてとらえている」と説明します。
森岡さんはこの仕組みが始まった時点で、すでに長年、介護保険の利用料を支払ってきているので「急な負担の増加」という問題に直面していないというのです。
低所得世帯について障害福祉サービスが無料になったのは、2010年4月から。森岡さんも原告としてたたかった障害者自立支援法違憲訴訟の訴訟団と国が交わした基本合意に基づくものです。
「介護保険を使わないと障害福祉サービスは受けられないと役所の方から言われて15年以上しかたなく介護保険を利用してきたのに。怒り心頭です」と森岡さん。
日本障害者センターの山﨑光弘事務局次長は「要支援の人も障害福祉サービスから移行して利用料が発生しているなら、給付費の対象にすべきです。また、対象要件を設けるからそのはざまの人がうまれる。対象要件は撤廃すべきです」と強調します。
新高額障害福祉サービス等給付費の対象要件 障害支援区分2以上で、65歳になる前5年間にわたり、居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所のいずれかの障害福祉サービスを利用。65歳以降、それに対応する介護保険サービスを利用する低所得の人。