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2018年12月3日(月)

外国人労働者問題から野党共闘まで

BS朝日「激論!クロスファイア」 志位委員長と田原氏が対談

 日本共産党の志位和夫委員長は2日放送のBS朝日番組「激論!クロスファイア」に出演し、司会を務めるジャーナリストの田原総一朗氏と対談。外国人労働者受け入れ拡大の出入国管理法改定案の問題点や消費税10%増税、沖縄・米軍新基地、そして来年の参院選に向けた野党共闘などがテーマにのぼりました。コメンテーターは、「朝日」前政治部デスクの林尚行氏。


入管法案の強行採決―「議論するほど問題が出る」からと

 「えっ、15時間!」―政府・与党が11月27日に衆院で強行採決・通過させた入管法改定案の衆院での実質審議時間を志位氏から聞いて驚いた田原氏は「(政府・与党は)なんでこんなに焦るのか」とズバリ質問。志位氏は、自民党・平沢勝栄衆院議員(法務委員会自民筆頭理事)の「この問題は議論したらきりがない。いくらでも問題が出てくる」との発言にふれ、「だから強行(採決を)やった。これまでの自民党だったら『議論が出尽くしたから採決させてください』というのはよくあった。だけど、『議論すればするほど問題点が出てくるからやっちまえ』というのは、本当に国会をばかにした話です」と批判しました。

 27日に衆院通過させたのは、29日からの安倍晋三首相の外遊日程に合わせ参院本会議で審議入りさせるためだったと指摘すると、田原氏も「むちゃくちゃ」と憤慨。志位氏は「総理大臣の外交日程に合わせ、自分たちが“最重要法案”と言ったものを強行するなんてことは、戦後ないですよ。ですから、これは本当にやり方がでたらめです」と怒りを込め、法案の問題点でやりとりになりました。

無法状態なまま“雇用の調整弁”として技能実習生を使い続ける

 田原 外国人労働者でいま一番問題になっているのが技能実習生。実は低賃金、長時間労働だと。

 志位 時給300円とか200円とか最低賃金以下で働かされている。奴隷的労働です。パワハラ、セクハラ、暴力。いろんな問題があって無法状態なわけです。

 なぜ今度、入管法(改定)の問題を急いでいるか。技能実習生を使い続けるためです。「特定技能1号」という、より短期でいつでも使い捨てのできる“雇用の調整弁”として技能実習生を使い続けようとするために急いでいるわけですね。

 田原 (法案で新設される)「特定技能1号」「特定技能2号」は、日本人並みの給料を払うとされている。技能実習生は、「特定技能1号」に入る? 入らない?

 志位 政府は、「特定技能1号」には14業種あり、受け入れ見込み人数のうち6割が技能実習生、100%が技能実習生というのも5分野あると(説明しています)。技能実習生は「特定技能1号」に移行するということなんです。その場合、「特定技能1号」にいったら労働条件がよくなるのかが問題なわけだけど、法案にはその保障は何にもない。

 「日本人並みの対応をするという予定じゃないの」とさらに驚く田原氏。志位氏は、具体的な内容は、法案成立後すべて省令で決めると説明した法務省作成の法案要綱の資料を示し、「はっきりしているのは、『特定技能1号』は在留資格を1年ごとに更新、5年で終わりだと(いうことです)。雇用契約は、1年以下の短期、3カ月の短期(契約)でもいいし、派遣労働でもいい。使い捨ての労働でもいいですよというものなんです」と、問題点を浮き彫りにしました。

 劣悪な労働条件で技能実習生を働かせているもとで、昨年失踪した技能実習生は7089人。政府は、失踪した技能実習生2870人から失踪動機などを聞き取った聴取票を作成しています。「ところが(政府は)これを出せといっても出さない。これを白日のもとに出して、メディアのみなさんも分析すれば、どんなに技能実習生がひどいめにあっているかというのがわかるはず」と志位氏。「野党は(聴取票を)見られるようになっているんでしょ」と尋ねた田原氏に対して、志位氏は、議員が聴取票を閲覧できてもコピーが許されていないなかで、野党議員が手分けてして2870人分の聴取票を書き写しているとのべ、(884人分の聴取票では)86%が最低賃金割れだったと指摘。「こういうデータをきちんと出して、技能実習生の実態はどうなっているのか、どうすればこれが解決できるのか、という対策をやることが最優先でしょう。それをやらないでおいて、新しい『特定技能1号』に横流しして使い続け、首切りが自由にやれるようになんて、こんなでたらめはない」と批判しました。

不安定な雇用契約のまま国家的な規模で使い捨てることになる

 田原氏が「安倍さんは、『今度の法改正は移民政策ではない』と言っている。移民だとどうして具合悪いの」と問いかけ、法案と移民問題との関係が議論になりました。志位氏は、家族の帯同を認めるとされる「特定技能2号」について「(政府は)『2号』の方はやる気はないんです。受け入れ業種も、建設と船舶の2業種だけ。この二つの業界は受け入れないといっています」と述べ、やりとりに。

 田原 「1号」のほうは奥さんをよべないんだよ。

 志位 よべない。それはあまりにひどいじゃないかとなり、「2号」にも行けますよと一応体裁ではつくっているけど、実はハードルが高くて「2号」にはほとんどいけないし、やるつもりもない。

 田原 「1号」の人がどうなると「2号」になるのかも、何にもないのね。

 志位 何もないです。例えば「2号」は(法案には)「技術水準」は「熟練した技能」と書いてある。「熟練した技能」とは何かというと、何もわからない。それは全部後で政府が決めると。

 田原 やっぱり日本会議をはじめ、安倍さんの応援団がみんな移民が入るのに反対しているんだよね。

 志位 移民の問題について一般的に言うと、移動の自由、居住の自由は国際ルールとして認められるべきだと思います。

 ただ、いま問題になっているのは移民かどうかとかそういう次元でなく、「特定技能1号」という使い捨て自由の形で、技能実習生をもっとひどい形で使い続ける。そういうことを許していいのかという問題です。

 今ニュースになっていますけれども、三重県のシャープ亀山(工場)は、3000人近い外国人(労働者)を雇い止めにした。3次下請けで働いていた外国人を、全部雇い止めにする乱暴なことをしているんです。

 田原 雇い止めされた外国人労働者どうなるんだろう。

 志位 いろいろだと思いますが、たいへんに深刻です。日本の状況はよくわからないだろうということで、ひどいことが行われている。3次下請けの会社に責任を押しつける形で雇い止めにするということが起こっている。

 「特定技能1号」というのは、ものすごく不安定な雇用契約でもいいわけです。国家的な規模で使い捨て、雇い止めをやることになる。「人手不足」のときだけ受け入れるから、人手が充足したらもう帰ってくれということになります。

憲法解釈の乱暴な改ざんが「政治モラル」を破壊、立憲主義の回復こそ

 秘密保護法、安保法制(戦争法)、共謀罪など、安倍政権になって強行採決が繰り返されていることがテーマになりました。「強行採決というのは、野党と満足に審議するのがいやなんでしょ。野党をばかにしているのか。なんですか」と田原氏。

 志位氏は、安倍政権が安保法制=戦争法の強行を通じて、「憲法9条のもとでは集団的自衛権の行使はできない」という70年余にわたる歴代政権の憲法解釈の乱暴な改ざんを強行したことが「政治モラルのハザード(喪失)」を生み、森友文書の公文書改ざん、裁量労働制のデータ改ざん、今度の入管法問題での失踪実習生のデータ改ざんなどが平気で行われるようになったと指摘。

 志位氏は「そこまでモラルが壊れたわけですから、安保法制は廃止し、集団的自衛権行使容認の『閣議決定』は撤廃する。立憲主義、民主主義をきちんと回復する。日本の政治をもとのところから立て直す必要があると思います」と強調しました。

安倍首相が権力を維持してきた「三つの手口」―忘れず、諦めず、共闘の力で

 「それにしては内閣支持率が高い。なんでだと思う」という田原氏に志位氏は次のように答え、やりとりになりました。

 志位 安倍さんが権力を維持してきた「三つの手口」があると思います。

 一つは、目先をくるくる変えて自分がやった悪事を忘れさせる。二つめは、強権を振るってどれだけ国民が反対してもだめだと諦めさせる。三つめは、国民の中に分断を持ち込む。(昨年7月の)都議選最後の日に、(安倍首相の街頭演説に)反対の人が来たら、「こんな人たちに負けるわけにいかないんです」といった。自分に反対するものはみんな敵だといって分断を持ち込むやり方です。

 田原 そんな分断を持ち込んだら支持率は下がるのに、なぜ下がらない?

  どう見ても安倍さん自身の推進力じゃなくて、安倍さんに代わる期待の集合体がない。

 田原 野党が弱すぎるんだよ。

 志位 「三つの手口」といいましたが、相手が「忘れさせよう」というなら「覚えておいて(選挙で)審判を下そう」と。「諦めさせよう」というなら、沖縄のみなさんがやったように「最後まで諦めないでたたかおう」と。そして向こうが「分断を持ち込もう」というなら、「共闘」です。市民と野党の共闘と私たちは言っていますけども、連帯し、安倍政権を倒す。

 いろいろな(内閣支持率の)数字がでていますけど、安倍さんの政策を支持しているわけではない。ましてや、人柄を信頼しているわけでもない。結局、安倍さんに代わる強力な選択肢がまだ見えてこないんです。

 田原 なんで見えないんだろう。

 志位 まだ野党が結束する力が示されていない。

消費税10%増税は失敗した道の繰り返し 富裕層と大企業の優遇税制をやめよ

 安倍政権がたくらむ来年10月からの消費税10%増税について田原氏は「2%上げるといいながら、『ポイント還元』とか『軽減税率』とか訳がわからない」と疑問を投げかけました。

 「10%に上げようということは、失敗した道の繰り返しです」。こう指摘した志位氏は、2014年の8%増税を前にした安倍首相との国会論戦で、増税すれば消費不況となると中止を求めたことに対し、安倍首相は「増税の影響は一時的」「経済対策をやるから大丈夫」といったが、8%増税以降の4年間で2人以上世帯の家計消費は年25万円も減り、「まさに消費不況になった」と告発。「2%増税ということになったら日本経済は本当に壊れます」と警鐘を鳴らしました。

 「日本はいまや借金が1100兆円。先進国で一番財政悪い。これどうします」と問いかけた田原氏。消費税に頼らない財源をめぐって対談になりました。

 志位 当然取るべきところから税金を取る必要があります。私たちがまず主張しているのは、富裕層と大企業に対する優遇税制をやめるべきだと。たとえば、法人税の実質負担率。中小企業が18%、大企業のほうは10%。大企業の方が低いんです。

 田原 えっ! そう?

 志位 研究開発減税など大企業しか使えない優遇税制があって、そのために実質負担が低いんです。

 田原 へっー! 知ってた? そんなこと。ここにいるだれも知らないよ。

 志位 それを中小企業並みに払ってもらう。そうするとだいたい4兆円(が出てくる)。もう一つの問題は、所得税の負担率です。所得1億円がピークになっていて、それ以上のお金持ちになると、どんどん下がるんです。なぜかというと株取引にかかる税金が軽い。どんなに株でもうけても20%。たいへん軽い。だから大金持ちになるほど(所得税の)負担率は軽くなる。こうした富裕層への優遇税制を是正すると1兆円あまり出てきます。あわせて5兆円。これで(消費税)2%分のお金が出てくるんです。

歳出・歳入の改革と内需主導による経済成長による税収増で

  とはいえ、借金は膨大なもの。それを持続可能性のあるような国家として運営していくためにはそれだけでは足りないのでは。

 志位 今お話ししたのは、まずそれをやれば(消費税)2%分は出てくるということです。さらに、この間下げすぎた法人税を元に戻す。それから、下げすぎた所得税・住民税の最高税率を元に戻す。さらに、軍事費、原発推進予算、大型公共事業の無駄遣いをなくすという改革をやっていく。歳入・歳出の改革でだいたい当面で17兆円ぐらいの財源がつくれるということを提案しています。

 それともう一つお金があるのは、大企業の内部留保400兆円です。内部留保に課税をするのは無理だけど、最低賃金を引き上げる、労働時間の短縮をやる、非正規の方を正社員にする。こうした政策によって賃金を全体として引き上げることができます。政治がやるべきことをやれば、労働者のところに内部留保が還元されてまわってくる。中小企業との関係でも、下請け2法を厳格に適用し、中小企業いじめをやめさせる。そうすると中小企業にもまわってくる。そういうことによって400兆円のお金がまわるようにすれば、まともな内需主導の経済成長ができるようになります。そうすればこちらの方からも税収増が生まれてきます。

 田原 なんでこんなに内部留保が多いんだろう。

  それはまさに志位さんおっしゃるように、『資本論』じゃないですけど、労働者に還元されるインセンティブや仕組みが整っていない。

 志位氏は、歳入・歳出の改革と内需主導の経済成長による税収増によって、合わせて40兆円ほどの財源をつくり、社会保障や暮らしをよくしながら国の莫大(ばくだい)な借金をかえしていく道を開いていく日本共産党の提案を説明しました。

 「何で野党はそれをいわないのか」と田原氏。志位氏は「大いに言っていきたい」と応じました。

国際法違反でつくられた普天間基地は無条件で撤去を

 続いて田原氏が質問したのは、先の沖縄県知事選での玉城デニー氏圧勝の要因でした。「大勝の要因は何ですか」と尋ねた田原氏に対して、志位氏は、「辺野古新基地反対」という明確な対決軸を提示したこと、「オール沖縄」という保守・革新の枠を超えた信頼関係で結ばれた「本気の共闘」がつくれたこと、という二つをあげました。一方で、安倍政権が官邸主導で権力を総動員し、公明党・創価学会を大動員し、空前の企業・団体の締め付けを行い、県民に襲いかかって民意を押しつぶそうとした選挙戦を振り返っていいました。

 志位 強権を振るえば振るうほど県民の怒りが広がった。流れが大きく変わったと思ったのは、(9月22日の)「うまんちゅ大集会」で翁長(雄志前知事)さんの樹子夫人が出席されて、“自分は今度の選挙は静かに見守っていこうと思っていたけれども、こんな強圧的にやってくるんだったら黙ってられない”と訴えたんですよ。県民の怒りに火が付いたという感じがしましたね。

 何度もうなずきながら、「沖縄は面積でいえば日本のわずか0・6%。そこに米軍基地の何十%がある。沖縄県民にしてみれば絶対納得できない」と田原氏。志位氏は「こんな場所は世界に沖縄しかない。こんな異常を見過ごすわけにはいかない。これは日本の民主主義が問われる問題です。ぜひ連帯してたたかいをやっていきたい」と表明しました。

 「でも世界一危険な普天間(基地)はどうするんですか」。田原氏の質問に、志位氏は次のように答えました。

 志位 条件なしで撤去を求める。無条件撤去です。もともと普天間基地がある場所は、人が住んでいた。民家もあった。役場もあった。学校もあった。にぎわっていたんです。そこを全部つぶして、米軍が接収して勝手につくったんです。占領直後のことです。どろぼうが「盗んだもの返すから、別のものを寄こせ」。こんな話はない。まさに国際法違反でつくった基地が普天間基地なんですよ。だからこれは条件なしで返してもらうということで頑張ることが大事だと思います。

野党の共通政策―「太いところで旗を立てる相談をしていきたい」

 田原氏は「来年の参院選挙ではどうしても野党に勝ってほしい。野党が勝つためには、国民がこれだと思えるようなテーマがつくれるかどうか」と、野党の共通政策を尋ねました。

 志位 もともと野党共闘というのは、安保法制とのたたかいのなかでつくられてきたものなんですね。(テーマの)「一丁目一番」として私たちが重視しているのは、安保法制を廃止して立憲主義を回復することです。

 同時に憲法の問題は、野党それぞれの立場がありますけれども、安倍政権のもとでの9条改憲は反対と(いうことで一致しています)。原発問題では野党4党が共同で「原発ゼロ基本法案」を国会に提出した。それから消費税(という税制)に対しては野党で立場がそれぞれなんだけれども、来年10月からの10%(増税)はいまの経済情勢を考えたらだめだと、いまの「ポイント還元」だ、「プレミアム商品券」だの訳のわかんないことをやっているのはだめだという点では一致すると思う。こういう太いところで、まず旗が立たないかという相談をしていきたいと思うんですね。

 さらに、「貧困・格差を是正し、希望の持てるような暮らしの問題でのワンパッケージの共通政策をつくりたい。これは野党として共同提案の形で議員立法を提案していますから、その内容を積み重ねますと、かなり暮らしの問題での政策がつくれると思います」と語りました。

 また参院選選挙区をめぐっては次のようなやりとりに。

 田原 参議院で勝つためには1人区はだいたいまとまる。2人区はいかがですか。

 志位 1人区の一本化はしっかりやる。1人区を「本気の共闘」にする。そのことが本格的にできたら情勢が一変すると(思います)。

 田原 1人区を一本化したら勝てる?

 志位 一本化しただけじゃだめですよ。一本化したうえで、共通政策をちゃんとつくる。それから相互に譲るところは譲って、相互に支援も推薦もする。そういう「本気の共闘」が必要です。

 2人区以上の複数区と比例区は、(野党が)それぞれ競い合って、自公を落としていく。98年の参院選挙では共産党が躍進して民主党も躍進した。このときは、私たちがとった選挙区は七つ――2人区、3人区、4人区でしたが、(それらの選挙区では)自民はゼロになったんです。そういうたたかいをやればいい。

 「志位さんと枝野さんが手を組めるかがポイントだ。組めますか」と田原氏。志位氏は「それは組まなきゃだめです。協力してやっていきたい」。アナウンサーの本間智恵さんは「この先が楽しみですね」と語りました。


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