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2018年9月16日(日)

主張

教育への公的支出

抜本的な増額で現状の打開を

 経済協力開発機構(OECD)の加盟各国への調査で、学校など教育機関への国や自治体による公的支出の国内総生産(GDP)に占める割合(2015年)が、日本は比較できる34カ国中最も低く、14年に続き2年連続で最下位になりました。日本は最下位をまぬがれた13年も33カ国中32位、それ以前は6年連続で最下位でした。日本の教育機関への公的支出の少なさは異常で、重い私費負担と劣悪な教育・研究条件の根源になっています。教育予算を抑制してきた安倍晋三政権の責任は重大です。

高負担と劣悪な教育条件

 OECDが11日に発表した教育機関への公的支出のGDP比は、最も高いノルウェーが6・3%、次いでフィンランド5・6%、アイスランド5・5%などとなっており、OECD平均は4・2%でした。これに対し日本は前年より0・3ポイント少ない2・9%で極めて低水準です。

 公的支出が少ないため、日本の保護者や学生は多額の自己負担を強いられています。今回のOECDの調査でも、日本は大学などの高等教育と幼児教育で教育費の50%以上が私費負担になっています。国際的には考えられないほど重い負担です。

 大学の場合、OECD加盟国の半数では学費が無償で、有償の国でも低額です。日本では入学した年に払う入学金・授業料などが国立で約82万円、私立は平均で130万円以上になります。私立大学は学費値上げが相次ぎ、国立大学でも東京工業大学が文部科学省の定めた標準額を10万円近く上回る授業料値上げを発表しました。高学費のため大学進学をあきらめる人も多く、一部私学の定員割れの要因にもなっています。

 安倍政権は、幼児教育と高等教育の「無償化」を打ち出しました。無償化に動きだしたことは世論と運動を一定反映したものとして重要ですが、いま出されている「無償化」の内容は極めて不十分で、消費税増税を財源とするなど多くの問題を含んでいます。

 公的支出の少なさに伴うもう一つの問題は、日本は十分な経済力があるにもかかわらず、教育・研究条件が非常に貧弱で、その深刻さが増していることです。

 義務教育や高校などでは、教職員の数を抑制してきたことが過労死ラインを超える長時間過密労働を生み、「授業の準備ができない」「子どもと向き合う時間がない」など子どもの教育にかかわる大問題になっています。国会で学年ごとに順次実施することが決議されていた35人学級も、安倍政権がストップしてしまいました。

 大学では人件費や水光熱費などの基本的な予算が削減されたことによって、論文の量と質が低下するなど、日本の研究力の劣化が進行しています。

OECD平均の水準に

 教育機関への公的支出をOECD平均の水準まで段階的に引き上げることで、幼児教育から高等教育までの無償化の推進、教員定数の大幅増と少人数学級の実現、大学の教育・研究条件の抜本的改善などが可能になります。

 貧困と格差をいっそう広げる消費税増税でなく、大企業や富裕層に応分の負担を求める税制改革やムダな軍事費の削減などで、教育予算を計画的に増やすことが必要です。


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