しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年6月4日(月)

主張

自民・防衛大綱提言

常軌逸した大軍拡の時代錯誤

 自民党は、政府が年末に策定する新しい「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」への提言をまとめ、安倍晋三首相に申し入れました。日本の軍事費について、NATO(北大西洋条約機構)が対GDP(国内総生産)比2%の達成を目標にしていることを「参考」に一層の拡大を求めています。防衛省は日本共産党の穀田恵二議員に、2018年度のGDPで計算すれば2%は11兆2860億円になると答弁しました(5月30日、衆院外務委員会)。18年度の軍事費5兆1911億円(GDP比0・9%)の2倍超に当たる常軌を逸した大軍拡要求に他なりません。

軍事費をGDPの2%に

 「防衛計画の大綱」(大綱)は日本の軍事力の在り方や水準を定める指針であり、「中期防衛力整備計画」(中期防)は5カ年の軍拡計画です。安倍政権は現在、13年末に策定した現大綱と中期防の見直し作業を進めています。

 自民党の提言は、日本を取り巻く安全保障環境を「戦後最大の危機的情勢」と位置付け、「新大綱策定の基本方針」として、「対GDP比2%」を「参考」に「必要かつ十分な予算を確保する」ことをはじめ、▽陸・海・空に加えて宇宙・サイバーなどの領域も活用した「多次元横断(クロス・ドメイン)防衛構想」の実現▽「日米同盟全体の抑止力・対処力の一層の強化」を重視するよう求めています。

 もともと安倍政権の進める軍拡路線は突出してきました。首相が政権復帰後初めて編成した13年度予算から軍事費は6年連続増額されてきました。15年度に過去最高額を更新し、16年度には史上初めて5兆円を突破しました。深刻な財政難を口実に国民に必要な社会保障予算を容赦なく削減・圧縮してきたのに対し、軍事費の優遇ぶりはあまりにも異常です。

 日本の軍事費は、1976年の「GDP1%以内」の閣議決定(当時はGNP=国民総生産)が86年に撤廃された後もその枠を超えることはおおむねありませんでした。ところが、首相は「安倍政権においてはGDPの1%以内に防衛費を抑える考え方はない」と述べていました(17年3月2日、参院予算委員会)。さらに自民党議員からの「防衛費のGDP2%目標を掲げるべきとの提言」について「しっかりと受け止めたい」と答えています(18年1月31日、同前)。

 首相は4月の日米首脳会談で、今後も米国製の高性能な装備品の導入を約束しています。自民党の提言も「先進的な装備体系の導入」を求めており、首相の軍拡路線を後押し、加速させ、トランプ政権の要求に応えることに狙いがあるのは明らかです。

対話の流れに完全に逆行

 提言が、巡航ミサイルをはじめ「敵基地反撃能力」の保有検討の促進や、ヘリ搭載型護衛艦「いずも」の改修を念頭に置いた「多用途運用母艦」とその搭載機としてF35B戦闘機などの導入を求めていることも重大です。敵基地攻撃能力や攻撃型空母の保有は他国への侵攻を可能にするものであり、憲法に違反するのは明白です。

 北朝鮮問題をめぐり対話での問題解決という外交努力が続いている中、かつてない大軍拡を露骨に打ち出す自民党の提言は、軍事力の脅しで対抗し合う悪循環を新たに生み出そうとする時代錯誤の動きであり、到底認められません。


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