しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

2018年5月30日(水)

きょうの潮流

 座敷牢(ろう)が今も―。精神障害者が長年家族から監禁させられていた事件が相次ぎ、衝撃が走りました。大阪府寝屋川市の30代女性が隔離された小部屋で監禁され衰弱死。兵庫県三田(さんだ)市では40代男性がプレハブ内の檻(おり)に閉じ込められていました▼「わが国十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の外に、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」。呉(くれ)秀三が百年前、全国の座敷牢など私宅監置の状況を『精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察』にまとめ、こう述べています▼裸で体をくの字に曲げて横たわる人。柵の間から顔を出す人。東京帝国大学医科大学精神科教授の呉は、治療を受けられないまま精神障害者が幽閉させられるだけの実態に心を痛めたのです▼病院が足りないうえ、監督官庁の指導で精神障害者を外に出せず、私宅監置をせざるを得ない家族にも目を配っていました。院長を務めた東京府巣鴨病院(現都立松沢病院)では、鎖などの拘束具を廃止し、作業療法を始めました▼1世紀たった今も家族による長期間の監禁があるのはなぜか。社会や情報から孤立し、精神障害のある本人と家族の望む支援を受けられず、家族の看護だけで暮らしているケースが少なくないからです▼呉の足跡をたどるドキュメンタリー映画「夜明け前」が来月都内で上映されます。「精神病者の救済・保護は実に人道問題にして、わが国目下の急務と言わざるべからず」。百年前のこの指摘は、今も重い課題として突き付けられています。


pageup