しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年3月24日(土)

きょうの潮流

 桜の季節が巡ってきました。月の光に浮かび上がる花の妖艶さを、歌人・与謝野晶子はこう詠みました。〈清水(きよみず)へ祇園(ぎおん)をよぎる桜月夜こよひ逢(あ)ふ人みなうつくしき〉▼今年は晶子生誕140年にあたります。師・与謝野鉄幹へのほとばしる恋の熱情を高らかに歌い上げた第一歌集『みだれ髪』は1901年、20世紀の幕開けに刊行され、文学の新時代を切り開きました。晶子22歳▼〈春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳(ち)を手にさぐらせぬ〉。移ろう世の中に、この力みなぎる乳房こそが確かなものだと歌う自己肯定は、個々の人間をかけがえのない存在として尊重する姿勢につながっています▼日露戦争に召集された弟に送った反戦詩「君死にたまふことなかれ」では、国家のために人を殺し殺されるために、親は手塩にかけて子を育てたわけではないと断じます。この詩への批判に対して、〈まことの心うたはぬ歌に、何のねうちか候(そうろう)べき〉と反論しました▼家計を支えながら、鉄幹との間に5男6女を産み育てた晶子は、完全な個人を目指し、女性の自立を訴えるとともに、家庭責任をないがしろにする男性を批判しました。『青鞜(せいとう)』創刊号に寄せた詩「そぞろごと」は、〈山の動く日来(きた)る〉で始まり、〈すべて眠りし女(おなご)今ぞ目覚めて動くなる〉〈われは女ぞ。一人称にてのみ物書かばや〉と宣言します▼〈歌はどうして作る。じっと観(み)、じっと愛し、じっと抱きしめて作る。何を。真実を〉―晶子の言葉は、今の社会を鋭く照らしています。


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