しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年2月7日(水)

主張

生活保護・緊急提案

貧困への認識改め責任果たせ

 貧困の広がりは日本が直面する大問題です。ところが安倍晋三政権は、貧困は悪化していないと繰り返し、憲法25条に明記された生存権を保障する生活保護の生活扶助費削減を強行しようとしています。国民の深刻な実態が全く見えていない―。衆院予算委員会の基本的質疑で日本共産党の志位和夫委員長は、首相の認識を追及するとともに、使いやすい制度にするために生活保護法を「生活保障法」にするなどの法改正を緊急提案しました。貧困打開に向けた切実で道理ある提起です。安倍政権は真剣に受け止め、検討すべきです。

事実を認めない安倍首相

 志位氏がまずただしたのは、日本の貧困の現状に対する首相の基本認識です。首相は相対的貧困率が下がったとし「(貧困悪化という)指摘は当たらない」と主張します。しかし相対的貧困率の低下は、貧困の改善を意味しません。

 相対的貧困率は「貧困ライン」(等価可処分所得の順に国民を並べたとき中央にくる人の額の2分の1)に満たない所得の人の割合で、一般国民の所得が下がると「貧困ライン」も下がります。そうなると、これまで「貧困ライン」以下とされた人が収入などが同じでも「貧困ライン」の上にきてしまい貧困でないと数えられる―それが相対的貧困率低下の内実です。

 実際、日本の「貧困ライン」は1999年の157万円から2014年の133万円へと下がり続けています。経済協力開発機構(OECD)データでみるとアメリカ、イギリスなど6カ国の「貧困ライン」は大幅に上がっているのに、低下しているのは日本だけです。具体的事実を示し、世界でも異常な姿だという自覚はあるか、と志位氏が迫っても首相は認めません。

 深刻な実態を見ようとしない姿勢からまともな政策が出るはずがありません。その典型が生活保護で食費や光熱費にあたる生活扶助費を10月から最大5%引き下げるという方針です。利用世帯の67%が減額され、被害は甚大です。

 首相は、全体を引き下げるものではないとか、所得の少ない「一般低所得世帯」との均衡のためなどと削減を正当化しようとしますが、厚労省の数字からみても、とても通用しません。志位氏が、生活保護を現在利用している母子世帯の実情を、当事者の言葉でリアルに紹介しながら、一般低所得世帯との比較で生活扶助費をカットすることが、困窮世帯をどれほど過酷な生活に追い込むことになるかを告発すると首相は反論できません。

 生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人の割合(捕捉率)が2割程度と国際的に極めて低い水準にあることが大きな問題になっているのに、安倍政権は国民に約束した捕捉率の調査すらしていませんでした。生活扶助費削減の不当性はいよいよ浮き彫りになるばかりです。削減方針の撤回・中止こそ必要です。

「生活保障法」へ改定を

 “生活保護利用は恥”との意識をなくすためにも、その利用は憲法25条に基づく正当な権利と表明すべきだとの志位氏の提起に、首相は「偏見をなくす」と述べたものの権利とは明言しませんでした。

 全ての国民に生存権が保障され、使いやすい生活保護にするため「生活保障法」への名称変更、国民への周知義務づけなど緊急の法改正の実現が重要です。


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