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2018年1月15日(月)

どんな支援が必要? 高校生の妊娠

文科省が教委に「配慮事例」 「勉強を続けたい」に応え

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 高校生の予期せぬ妊娠。授業での配慮がなかったり、転校や退学を一方的に迫られたり。学校の対応に苦しむ生徒たちがいます。いま、どんな支援が必要なのでしょうか?(堤由紀子)


 「妊娠した生徒に対する配慮事例」という文書があります。文部科学省が昨年3月、都道府県や政令市教育委員会などにあてて送ったものです。

 「妊娠したら退学させられた」という報道が一時期、話題になりました。「超党派の国会議員でつくる子どもの貧困対策推進議員連盟の申し入れで、『“妊娠退学”をゼロに』という項目があったことも受けての動き」と同省担当者。昨年1月、各地の教育委員会など関係者を集めた連絡会議の場で、対応の方向性を示してアンケートを呼びかけ、その中身を反映させてつくりました。(別項参照)

人権守られる性教育が大事

 学校現場ではいま、どんな対応がされているのでしょうか?

 「母体の安全を守り、健康を管理することに一番気を配りますね。そのための情報共有と同時に、プライバシー保護の責任もあり、気を使います」

 ある公立全日制高校の養護教諭はこう話します。学校現場では「妊娠は高校生としてあるべき姿ではない」という考えが圧倒的。「学校を続けたい」という生徒に対し、「子どもを育てながらの高校生活は無理」と校長が判断して退学となったケースもありました。在学中に出産となる場合でも、周囲の生徒への影響を考えて、出産で休んでいることを知っているのは基本的に教職員のみです。

 「高校生の性に関する人権は守られていません。妊娠すると圧倒的に女子の方が困難をかかえてしまう。幼児期から、それぞれの人権が守られるような性教育が行われることが大事だと思います」

相談体制作り復学も支えて

 「配慮事例にあるようなことはすでにやっています。決して、子どもを産むことを奨励しているわけではありません。でも、妊娠した子が周りから後ろ指をさされるようなことはないですね」

 公立定時制高校のベテラン教員はこう言います。

 最近、同じ学校内のカップルに子どもができました。スクールソーシャルワーカーも含め、生徒とその家庭全体を支える相談体制をつくりました。

 男子生徒は1学期いっぱいで学校を辞めました。「なぜ辞めるの?」と何度も話し合いましたが、「一生懸命働かなあかん」と彼。「わかった。通えるようになったら戻っておいで」と送り出しました。女子生徒は昨年9月から休学。今年の9月から復学できれば、と考えています。

 支援が難しいのは、相手が学外の場合。また、出産後に子どもを預ける場所がなかなか見つからないことです。生徒の親自身が困難をかかえており、生まれた子どもの面倒を見てもらえない場合も多い。「夜間の保育園は保育料が高い。せめて、学校に通っている間は保育料を安くしてくれるような制度があるとありがたいですね」

本人の意思を大事にしたい

 「まるで『面倒なものは排除してしまえ』などというように学校を辞めさせてしまったら、生活はカツカツになり、虐待が起こりやすくなります。妊娠したら退学させる先生に、ほかの生徒も頼ろうとは思わない。何かに配慮したようでいて、誰も守っていません」

 予期せぬ妊娠に関する支援団体のメンバーは、こう語ります。「一番大事なのは本人の意思。産みたいというのであれば、生きる支えとして勉強を続けられるよう支援すべきです」

 また、教員が親と一緒に一方的に中絶を迫ってしまうケースも多々あります。生徒は「自分はダメな人間だ」「周りに迷惑をかけてしまった」と自信を失い、周囲のおとなに不信を抱いてしまうといいます。「育てられない場合は、特別養子縁組もあります。生徒が相談にきたら、いろいろな情報を伝えられる学校になってほしいですね」

文科省の「妊娠した生徒に対する配慮事例」から

【授業について】

 ・つわりなど体調不良により欠席した場合は補習を実施

 ・体育以外の教科において、生徒本人の状況に応じ保健室で休むことを勧める等配慮

【学籍関係について】

 ・出産のため休学を許可

 ・出産後、育児の見通しが立ち、学業の両立が可能と判断し、復学・転籍、再入学を許可

【保護者との関係について】

 ・子育て支援に係る情報提供、保育施設の紹介など実施

【学校における支援体制について】

 ・養護教諭やスクールソーシャルワーカーが中心となって対応

 ・出産後休学した生徒について、休学中も生徒及び子どもの様子などを把握し、復学のタイミングを生徒等と共に検討


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