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2017年9月24日(日)

「Jアラート」なぜ12道県も

TV“占領”・休校 各地で困惑

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 北朝鮮による2度のミサイル発射を受けた全国瞬時警報システム(Jアラート)によって、学校が休校となるなど、国民生活に影響が出ています。各地で困惑と過剰反応による事態悪化を懸念する声があがっています。(矢野昌弘)


図:Jアラートの範囲パターン

 8月29日と9月15日のミサイル発射を受けて、Jアラートを知らせる黒と赤の画面が午前中のテレビを長時間、占領しました。

 「どぎつい色のテレビ画面とけたたましい警報に泣いて母親に抱きつく子どもがいたと聞きました」と話すのは、日本共産党の太田秀子札幌市議です。

 札幌市内の学校では、2度目の発射があった15日早朝、保護者にメールなどで「状況がはっきりするまで登校は控えてください」と連絡するなど学校現場は対応に追われました。

 太田市議は「市民から『鳴ったところで、どうすればいいか、わからない』という声が寄せられます。本当に危険が迫った時に備える意味で、今回のようなことが繰り返されてJアラートが『オオカミ少年』のようになってしまわないか心配」と指摘します。

 2度のミサイルはいずれも北海道の上空を通過しました。しかしJアラートが鳴ったのは北海道から長野県までの12道県という広範囲でした。

 内閣官房によると、Jアラートはミサイルの想定進路を9パターンに分類。「ミサイルの方向は発射初期の段階での予測」で、想定進路を選び、該当する地域にJアラートを送信します。

 8月と今月15日のJアラートでは「東北パターン」が選択されました。東北6県が「当該地域」となり、その周辺にある北海道、茨城、栃木、群馬、新潟、長野が「関連地域」となるパターンです。

 「北海道パターン」だった場合は、北海道と青森県にJアラートが鳴る仕組みでした。

 なぜ今回は「東北パターン」になったのか。内閣官房の担当者は「今回のように(パターン)境界付近を飛翔した場合は、最終的に内容が異なる場合がありうる」といいます。

あやふやなまま報道一色に

 8月のJアラートでは、ミサイル通過後に流れる通過情報は「先ほど、この地域の上空を通過した模様」となっていました。ところが「範囲が広すぎる」という意見があったといいます。9月15日の際は、「北海道地方から太平洋へ通過した模様」と地域を特定する内容に改めました。

 また、Jアラートは日本の上空であれば、高度に関係なく発するといいます。今回はどちらも北海道の上空約550キロと約800キロを通過しました。いずれも日本の領空外。地球の外の宇宙空間でした。

 8月の発射では、7道県で9校(幼稚園含む)が休校に。59校が時間短縮になりました。休校した学校は、北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、長野と広い範囲です。

 内閣府の担当者に、今回のJアラートではどのように対処すればよかったのか質問すると、「個別の事業者や所管する官庁に問い合わせていただきたい」といいます。

 当日のテレビは午前中のほとんどがミサイル関連報道で占められました。放送内容についてNHK広報部は「自主的な編成・編集判断に基づき放送しています」と説明します。

 NHKには視聴者から「特設ニュースのために休止となった連続テレビ小説『ひよっこ』の放送予定の問い合わせなどが寄せられました」といいます。

 元防衛相の石破茂・自民党元幹事長は15日付のブログで「北朝鮮がミサイルを発射した際の報道の混乱ぶりはよく理解が出来ません」と苦言を呈しています。

 石破氏は「『領域』とは領土・領海・領空の総称であるため、高度500キロ以下を飛翔したのかと思っていたら、その後の発表ではこれをはるかに上回る高度であったようで、我が国の国家主権の及ぶ「領域」も「領空」も侵犯はされていないはずです。(中略)どうしてこのように基本的なことがあやふやのまま発表がなされたのでしょうか」と指摘しています。

 防衛相経験者からも苦言が呈される今回のJアラート。冷静な検証が求められます。


過剰反応は事態悪化招く

写真

(写真)田中隆弁護士

 国民保護法制に詳しい田中隆弁護士の話 韓国社会などが比較的冷静な対応をする中、日本が極端な反応をしたことを懸念せざるをえません。

 国民保護法制を立法過程から見てきた私にいわせると、Jアラートは、災害対策では重要な意味があります。地震や津波などの危険があったら、多少は過剰であってもただちに警戒を呼びかけるのは正しい。やり過ぎでも、結果として安全につながれば、行政の責任になりません。

 しかし、そのことと外交・軍事を混同するのはとんでもありません。人命を救うために、自然に対して最大限警戒し、備えても、災害が大きくなることはありません。

 ところが軍事では、過剰に反応すれば過剰対処を生み、かえって緊張を高めることになります。人々の憤怒をあおることは事態を悪化させかねません。

 さらに強調したいのは、政治的意図が見え隠れすることです。必要以上に北朝鮮の脅威をあおることで、憲法9条改悪の方向に誘導する意図がなかったかと疑わざるをえません。


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