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2017年6月20日(火)

加計疑惑 “国民に実情知らせるべきだ”

前川前次官が書面で本紙に回答

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 安倍晋三首相の友人が理事長の学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐり、文部科学省は「総理のご意向」などと記した内部文書を同省が作成したことを認めました。「怪文書」と存在を否定してきた安倍政権は釈明におわれています。内部文書を「本物だ」と証言してきた文科省の前川喜平前事務次官が19日までに、本紙の取材に弁護士を通じて書面で回答しました。この問題の経緯を検証しながら、回答(太字部分)を紹介します。(三浦誠)


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(写真)記者会見する前川喜平前文科事務次官=5月25日、東京都千代田区

 内部文書に記された「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」という文言を、文科省は「発言が実際にあったのだと思う」と認めました。前川氏の証言を、ほぼ追認したのです。

 「もともとあった文書が『あった』と確認されたのは当然のことですが、この間、文部科学省の中で多くの人が苦しい思いをしていることには、大変心を痛めています。松野博一文科大臣は苦しいお立場の中で、職員のことを思いつつ、精一杯の誠実な調査を実施されたと受け止めております」

 前川氏は記者会見(5月25日)で、安倍政権が「公平、公正であるべき行政をゆがめた」と批判。省庁の事務方トップを務めた元官僚としては、異例の告発でした。

 「文科省の後輩が、筋の通らない仕事をさせられ、あったことをなかったことにさせられているのを黙って見ていられなかったこと、そういう実情を国民が知るべきだと思ったことが動機です」

 文部科学省が告示で禁じていた獣医学部の新設を、安倍政権は昨年9月ごろから国家戦略特区による特例で一気に進めました。獣医学部新設を決めた国家戦略特区諮問会議は、安倍首相が議長です。

 当時、文科省は慎重な姿勢でした。獣医師行政を担当する農林水産省が、獣医師は足りているとする判断を変えなかったからです。

 そんな中、前川氏に官邸筋から「圧力」が次々とかかります。最初は加計学園の理事でもある木曽功内閣官房参与(当時)でした。

 「昨年8月下旬、木曽内閣官房参与が事務次官室に来られ、国家戦略特区での獣医学部設置について文部科学省の対応を早くしてほしい、文科省は国家戦略特区諮問会議の決定に従えば良い、という趣旨の話をされました。私は、これを加計学園理事としての要望だと思い、聞き置くにとどめました」

「すべて真実です」

証人喚問「お受けします」

 木曽功内閣官房参与(当時)からの「圧力」に続いて、和泉洋人首相補佐官が前川氏を官邸に呼びつけました。

 「昨年9月上旬、和泉首相補佐官に呼ばれ、国家戦略特区での獣医学部設置について、文部科学省の対応を早く進めるよう求められました。その際、『総理は自分の口からは言えないから、私が代わって言う』という趣旨の発言がありました。私は検討する旨答えるにとどめました」

 文科省の内部文書によると内閣府幹部は「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向」と、2018年4月開学ができるよう同省に迫っていました。官僚が勝手に「総理のご意向」を語ることができるのか―。

 「通常、国家公務員は、総理のご意向を理由に個別案件を動かそうとはしないと思います」

「マルセイ案件」

 木曽氏、和泉氏のような働きかけを、官僚たちは「○政(マルセイ)案件」と呼びます。通常は最優先で対応することが求められます。

 「マルセイとは『政治家がらみ』という意味ですが、内閣府であれ文科省であれ、マルセイ案件では、行政の正常なルールを曲げて、特定の主体を特別に優遇することが起こり得ると思います」

 実際に、加計問題では、「正常なルール」がゆがめられていきました。15年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」では、獣医学部を新設するために、次の4条件を設定しました。

 (1)既存の獣医師養成でない構想の具体化(2)ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野の具体的需要が明らかになる(3)既存の大学・学部で対応が困難な場合(4)近年の獣医師の需要動向を考慮しつつ、全国的見地から検討する。

 国会では加計学園の獣医学部がこの4条件に適合すると、どの官庁も判断していないことが問題になっています。

検証は行われず

 「加計学園の獣医学部が4条件を満たしているかどうか検証する責任は、特区制度の主務官庁である内閣府にあります。その検証には、農水省や厚労省の協力が必要だったはずです。しかし、この検証はほとんど行われませんでした」

 官邸、内閣府は獣医学部の18年4月開学を大前提に、文科省などの異論を押し切って進めてきました。この経過を安倍首相は「岩盤規制に穴をあけた」と正当化しています。

 「必要な検討・検証がほとんど行われないまま、平成30年(2018年)4月開学が大前提だというのは、かなり無茶な話だというのが、文科省側の一致した受け止め方でした」

 「必要な検討・検証をほとんど行わないまま、特例措置を決めたことが問題です。検討・検証をきちんと行った上での規制緩和なら積極的に進めるべきです」

 安倍政権は「無茶な話」を押し通し、公正公平であるべき行政をゆがめています。官邸の無理な指示に対して、官僚はどんな態度でのぞむことが求められているのか―。

 「近年、官邸サイドから、個別案件での具体的な要求が増えてきたように思います。各省の側は、余計な忖度(そんたく)をせず、通常のルールに従って対応するしかないと思います」

 5月25日の記者会見で前川氏は、国会の証人喚問に応じる用意があると述べました。

 「私が、本件について、お話ししたこと、書面で発表したことは、すべて真実です。国会からの証人喚問があれば、お受けします」

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(写真)「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」と記した文部科学省の内部文書


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