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2015年2月19日(木)

山下書記局長の代表質問

参院本会議

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 日本共産党の山下芳生書記局長が18日の参院本会議で行った代表質問は次の通りです。


 私は日本共産党を代表して総理に質問します。

 ことしの1月17日は、6434人が犠牲となった阪神・淡路大震災から20年目の日でした。当時、住宅を失った被災者が、復興への道を歩み始めるうえで最大の障害となったのが、「私有財産制の国では個人の財産は自己責任が原則」という立場をかたくなに取りつづけ、住宅再建のためには一円も出さないとした政府の姿勢でした。しかし、被災者が中心となった粘り強い共同とたたかいが取り組まれ、一歩一歩それが政治を動かし、被災者生活再建支援法を実現させ、ついに国の制度として、全壊世帯に300万円を支給するところまで前進しました。この制度は、運動の発端となった阪神・淡路の被災者には適用されませんでしたが、のちに発生した東日本大震災の被災者の大きな支えとして働いています。人々の切実な願いにこたえ、絶望を希望に変え、よりよい社会へと進歩させていく――私は、ここにこそ政治の役割があると思います。

 こうした視点にたって、安倍政権の基本姿勢と政策をみるとき、そこにどんな希望を見いだすことができるでしょうか。

東日本大震災と福島原発事故――被災者支援強化と賠償・除染に責任を

写真

(写真)代表質問する山下芳生書記局長=18日、参院本会議

 まず、東日本大震災と福島原発事故の被災者に対する対応です。

 東日本大震災の被災地では、4度目のきびしい冬のさなか、いまだ23万人にも及ぶ人々が避難生活を強いられています。長期化する仮設住宅のくらしで、心身ともに疲弊の限界に達しています。住宅の再建・確保はもはや一刻の猶予もできません。災害公営住宅の建設を急ぐとともに、被災者生活再建支援金を少なくとも500万円に引き上げ、被災者の住宅再建に対する支援を強化すべきです。あわせて、仮設住宅の生活環境を抜本的に改善すること、極度に疲弊した被災者の医療費の窓口負担をなくすことを求めます。

 総理は「福島の復興なくして日本の再生なし」といいます。しかし、政府が福島でやっていることはなにか。福島第1原発事故による営業にかかわる損害賠償について、事故から5年となる来年2月で打ち切ろうとしています。県商工会連合会会長は、「到底納得できる内容ではない。怒りを覚える」と述べています。

 さらに政府は、南相馬市における「特定避難勧奨地点」を解除しました。「街には戻れないのに、慰謝料だけが打ち切られる」と住民は途方に暮れています。総理、これがあなたのいう「福島の復興」なのですか。

 現地の新聞、福島民報(12月29日付)は、「『福島の復興なくして日本の再生なし』とする安倍晋三首相は、賠償の無期限延長を指示すべきだ」と主張しています。当然です。総理、加害者である国と東電が、賠償と除染の責任を果たしきることは、「福島の復興」への大前提ではありませんか。

 政府は、鹿児島県川内原発、福井県高浜原発を皮切りに、全国の原発を再稼働させようとしています。しかし、福島第1原発の事故はいまだ収束しておらず、事故原因も明らかになっていません。県民の多くは故郷に帰れず、苦しみ続けています。くわえて、再稼働の前提となる「新規制基準」には、過酷事故に対する住民の安全確保も、複数の原発が同時に事故を起こした場合の対策も考慮されていません。これで原発を再稼働するなど絶対に許されません。総理の見解を求めます。

 国民の多数は再稼働に強く反対しています。この声に真摯(しんし)に耳を傾け、「原発ゼロ」の政治決断をおこない、再生可能エネルギーへの抜本的転換をはかる――これこそ3・11を経験した日本が進むべき道ではありませんか。

国民のくらし破壊するメニューでなく「希望ある道」への転換こそ

 国民のくらしはどうでしょうか。

 総理はこの間、「アベノミクス、この道しかない」と繰り返しています。しかし厚生労働省の調査でも、働く人の実質賃金は18カ月連続で減りつづけています。「アベノミクス」のもとで実質賃金は減り続けた、これがまぎれもない現実です。総理はこの現実を率直に認めるべきではありませんか。

 こうした状況のもとで、安倍内閣が国民に示したメニューはいったいなにか。

働き方のルールの改悪――「残業代ゼロ」・派遣法改悪の断念を

 第一は、働き方のルールの改悪です。

 政府は、どんなに長時間働いても残業代を払わないですませる「残業代ゼロ」法案とともに、労働者派遣法改悪法案を提出しようとしています。総理は、「派遣先企業への直接雇用の依頼など正社員化への取り組みを派遣元に義務付けます」と述べました。

 しかし、「正社員化への取り組み」を「義務付け」るべきは、派遣元ではなくて、実際に派遣労働者が働いている派遣先大企業ではありませんか。現行法には、派遣先企業に対し、同じ仕事での派遣受け入れは「原則1年・最大3年」という期間制限を課し、期間を超える場合には、直接雇用を義務付けるとの規定があるのです。それでも大企業はその義務を果たさず、派遣労働者を直接雇用することを拒否したり、直接雇用しても短期間で雇い止めしたりしてきました。こうした実態を踏まえるなら、派遣先大企業の雇用責任を明確にすることこそ必要ではありませんか。

 ところが、今回の労働者派遣法改悪法案は、この期間制限を撤廃し、3年ごとに派遣労働者を入れ替えさえすれば、同じ仕事で無制限に派遣労働者を使い続けることができるようにしています。総理、これでは、正社員から派遣への大量の置き換えが起こるのではありませんか。「正社員化」どころか、「正社員ゼロ」社会になるのではありませんか。

 正社員として働くことを希望しながら、ずっと派遣の働き方を強いられているある派遣労働者は、この法案を「絶望国家法案」と呼びました。総理はこの声にどうこたえますか。これらの法案の提出は、断念すべきではありませんか。

社会保障の大改悪――介護現場の実態わかっているのか

 第二は、社会保障の大改悪です。

 来年度予算案で政府は、社会保障費の「自然増」を抑制するとしています。とくに重大なのは、介護報酬の2・27%引き下げという過去最大規模の削減です。いま介護の現場は、深刻な人手不足にあえぎ、それが「介護難民」増大の一因ともなっています。

 先日、北海道で、「すまん、母さん」と書き置きして、認知症の妻を夫が殺害するという事件が起こりました。警察庁によれば、過去5年間で、介護・看病疲れによる「殺人」「自殺」は1741件、年平均348件にのぼります。毎日のように、こうした痛ましい事件が日本のどこかでおきているのです。総理、異常だと思いませんか。介護報酬の引き下げは、この事態にいっそう拍車をかけるのではありませんか。

 いま政府がやるべきは、介護を必要とするすべての人が安心して介護を受け入れられるよう体制を整備することです。そのカギとなる介護職員の待遇を改善することです。政府は、介護職員に対して、処遇改善加算をするといいますが、事業者への報酬全体を大幅に引き下げて、どうして職員の処遇が改善できるのですか。

 一方で、総理は、法人実効税率を2・5%引き下げるといいました。深刻な介護現場に対する報酬を減らし、大もうけしている大企業に大減税する――政治の根本がゆがんでいるのではありませんか。

消費税の10%への引き上げ――消費税増税に頼らぬ二つの改革を

 そして第三に、消費税の10%への引き上げです。

 16日に発表されたGDP(国内総生産)速報によれば、昨年1年間の家計消費はマイナス1・3%、この20年で最大の落ち込みとなりました。一番の原因は、4月に消費税を8%に増税したことにあります。

 日本共産党は、消費税増税ではなく、(1)富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革(2)大企業の内部留保を活用して、国民の所得を増やす経済改革――この二つの改革で、財源をつくり、税収を増やすことを提案しています。国民のふところを直撃し、くらしと経済をいっそう行き詰まらせる、消費税10%への増税はきっぱり中止すべきです。

 以上のように、総理が「この道しかない」と言い続けている「この道」とは、結局、雇用ルールの破壊、社会保障の切り捨てであり、消費税の再増税にほかなりません。「この道」のどこに希望があるのでしょうか。1月8日に発表された日銀の「生活意識に関するアンケート調査」の結果をみると、「1年後、景気は悪くなる」と悲観する人が調査のたびに増え、いまでは37・8%にもなりました。逆に、「良くなる」と答えた人は減り続け、1年前の半分以下、わずか7・3%にすぎません。国民の多くは、総理の「この道」に希望を見いだすことができないのです。総理、この結果をどう受け止めますか。

 いま求められているのは、「この道」の方向を転換することです。大企業応援から、国民のくらし第一に切り替えて、(1)人間らしく働ける雇用のルールをつくること(2)社会保障を切り捨てから充実へと転換すること(3)富裕層と大企業に応分の負担を求める税制に改革すること――ここにこそ政治の役割があり、そうしてこそ「希望ある道」がみえてくるのです。総理の見解を求めます。

政府の農協「改革」はTPP反対の農協つぶしが狙い

 農業問題について質問します。

 総理は、農協「改革」を、「戦後以来の大改革」の冒頭にあげました。しかし、この「改革」は、現場の声や必要性から出発したものではありません。TPP(環太平洋連携協定)反対の中心となってきたJA全中、農協をつぶそうと考えたのではありませんか。農協の改革は協同組合にふさわしく自主的に行うべきです。

 安倍政権のもとで、農村は空前の米価暴落に襲われ、円安による生産費の高騰も加わって、未曽有の危機に直面しています。政府が力を入れる大規模経営の農家からも「所得倍増どころか赤字倍増だ」と悲鳴が上がっています。米価暴落への緊急対策こそ実施すべきではありませんか。

 TPP交渉が重要な局面を迎えています。全国の農家は、交渉内容を何も知らされず、不安を募らせています。日米合意に向け、日本側はコメなど重要5項目について譲歩案を検討していると報道されていますが、これは事実ですか。アメリカ型の市場原理主義を「国際ルール」として押し付け、農業や食品安全、医療など広範な分野で日本の経済主権を脅かすTPP交渉からただちに撤退することを強く求めます。

沖縄県民の「意思」踏みにじる新基地建設強行は許されない

 総理は、「総選挙で示された国民の意思」に「全身全霊を傾けその負託にこたえていく」と述べました。ならば伺います。沖縄県民の「意思」にはどうこたえるのですか。昨年1年間に、沖縄県民は、名護市長選、沖縄県知事選、総選挙と、民主主義のもっとも基本的で大切な手続きを通して、辺野古への新基地建設NO! 基地のない平和な沖縄を! という意思を疑いようもなく明白に示しました。

 ところが政府は、新基地建設のための予算を、昨年度と比べて80倍に増やし、建設を強行しています。すでに辺野古の海は、投げ込まれた巨大なコンクリートブロックによって貴重なサンゴ礁が破壊され始めています。

 つくられようとしている新基地は、滑走路を2本持ち、強襲揚陸艦も接岸できる巨大な軍港、広大な弾薬搭載エリアなどを備えた最新鋭の巨大基地であり、その耐用年数は200年とされています。こんなものがつくられるなら、沖縄は、半永久的に基地の島でありつづけなければなりません。これほど県民の「意思」を踏みにじる暴挙があるでしょうか。

 総理に求められているのは、普天間基地の無条件撤去、辺野古への新基地建設中止を決断し、それこそ「全身全霊を傾け」アメリカと交渉することではありませんか。

第2次世界大戦終結70年――「和解と友好」への新たな一歩に

 ことしは、第2次世界大戦が終結して70年の歴史的節目の年です。この年が、日本とアジア諸国との「和解と友好」に向かう新たな一歩となることを、アジアをはじめ世界の多くの人々と大多数の日本国民が願っています。

「村山談話」の核心的内容の堅持を 戦後の歩み否定する法整備やめよ

 そのためには何が必要か。

 私は、政府が「村山談話」の核心的内容である「植民地支配と侵略」への「痛切な反省」との態度を堅持すること、日本軍「慰安婦」問題について、被害者への謝罪と賠償など、人間としての尊厳が回復される解決に踏み出すことが大切だと考えますがいかがですか。

 戦後70年間、日本が、戦争によって1人の外国人も殺さず、1人の戦死者も出さなかったのは、日本国憲法、とくに戦争を放棄した第9条があったからだと思います。

 ところが総理は、この“世界の宝”ともいうべき憲法9条の解釈を勝手に変更し、集団的自衛権行使容認を柱とした法案の準備に入っています。それは、この間の国会論戦で明らかになったように、アフガン戦争、イラク戦争のような戦争をアメリカがひき起こしたさいに、自衛隊が「戦闘地域」まで行って軍事支援する――すなわち「海外で戦争する国」づくりにほかなりません。戦後の日本の歩みを否定する安保法制の整備は絶対にやめるべきです。

広島・長崎被爆70年――核兵器禁止条約の交渉開始訴えよ

 ことしはまた、広島・長崎の被爆70年の年であり、5年ぶりに核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催される年でもあります。「核兵器のない世界」の実現は国民的悲願であり、人類生存の緊急課題です。筆舌に尽くしがたい核兵器の惨禍を体験した国として、日本は核兵器廃絶をめざす世界の先頭にたたなければなりません。

 核兵器を全面的に禁止し廃絶する条約の、交渉開始を求める国は、国連加盟国の3分の2をこえました。核兵器の非人道性を告発し、その廃絶を訴える共同声明には155カ国が賛同しました。ところが、日本政府はかたくなに、核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連総会決議に「棄権」の態度を取りつづけています。総理、被爆国として、あまりにもはずかしい態度ではないでしょうか。この条約の交渉開始を強く訴えることこそ、被爆国としての国際的な責務ではありませんか。

 私は冒頭、政治の役割は、国民に希望を示し、よりよい社会へと進歩させることだと述べました。しかし安倍政権からは、国民への希望あるメッセージは伝わってきません。日本共産党は、国民多数の願いと逆行する安倍政権の暴走と正面から対決し、抜本的な対案、希望ある道を示し、国民とともに、新しい政治を起こすために全力で奮闘することをのべて、質問を終わります。


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