2014年11月8日(土)
リビア暫定議会 無効と判断
最高裁 混乱深刻化は必至
【カイロ=小泉大介】リビア最高裁は6日、今年6月の議会選挙の実施過程に違法性があったとして、同選挙を経て発足した暫定議会を無効とする判断を出しました。これに対して暫定議会は同日、最高裁の判断はイスラム系勢力の「武力による脅しによるもの」として受け入れを拒否する声明を発表しました。
北大西洋条約機構(NATO)軍の介入によるカダフィ独裁体制崩壊から3年が経過した同国は「内戦」状態に陥っていますが、最高裁と暫定議会の対立がさらなる混乱の深まりをもたらすのは必至の状況です。
リビアでは6月の選挙を受け世俗・リベラル派が中心の暫定議会が発足しましたが、これに旧制憲議会で多数派だったイスラム系勢力が激しく反発。治安上の理由からエジプト国境に近いトブルクに拠点を置く暫定議会・政府に対し、イスラム系勢力は8月に首都トリポリで、解散したはずの制憲議会の「復活」と独自政府の樹立を宣言しました。
この結果、リビアには現在、“二つの議会と二つの政府”が「存在」し、東部と西部をそれぞれが「統治」するという異常事態となっています。
現地からの報道によると、今回の最高裁判断について、イスラム系勢力から「国家にとっての勝利」との声があがる一方、暫定議会の政治家らは、首都を「支配」するイスラム系武装勢力の圧力のもとで出されたものであり、「政治的動機に基づくもの」と批判しています。
リビアの政治的分裂は、世俗派系とイスラム系をそれぞれ軸とした武装勢力間の戦闘の激化と一体となって深まってきました。戦闘は現在もトリポリ周辺や第2の都市ベンガジなどを中心に続いており、過去3週間だけで少なくとも400人が死亡、数千人が負傷しています。
4日から5日にかけては、国内最大の石油生産施設が武装勢力に襲撃され操業停止に追い込まれるなど、経済的な影響も深刻となっています。
国連リビア支援団(UNSMIL)のベルナルディノ・レオン団長は、激化の一途をたどる戦闘は「全く受け入れ難いものだ」として、政治対話による解決と対話への支援をリビアの各勢力と国際社会に呼び掛けていますが、実現のめどは立っていません。