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2014年8月28日(木)

きょうの潮流

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 NHKの連続テレビ小説「花子とアン」で、村岡花子が最初に出版した翻訳本として『王子(プリンス)と乞食(ポーパー)』が登場しました。『トム・ソーヤーの冒険』などで知られるマーク・トウェインの作品です▼顔かたちも、生まれた日もそっくり同じの王子と乞食の2人が、ひょんなことから服を交換して入れ替わるおなじみの物語ですが、完訳で読んだ人は少ないようです▼王子が「浮浪者」として経験する苦難の生活の数かずは、風刺が利き、話題も豊富です。16世紀半ばの英国で、羊を飼うため地主に追われた農民が乞食となり、「真っ赤に焼けた鉄で顔へ焼印をおされたうえに奴隷に売られた」というむごい話が出てきます▼よく似た話が、『資本論』の中にもあります。英国の「被収奪者にたいする流血の立法」の節(せつ)で、労働を拒んだ者が奴隷にされ、額か頬(ほお)にS字の烙印(らくいん)を押される、と書かれています。ただ、「仁政(じんせい)が行われた」という小説とは違い、エドワード6世治下の法律として紹介されています▼『資本論』には、村岡さんが「乞食」と訳した「ポーパー」が、「受救貧民」として何度も出てきます。「自分の生存条件を失って、公の救済によって糊口(ここう)をしのいでいる」貧困者のことです▼村岡さんは戦後、「福祉国家とはそれぞれの人が、心の幸福をつかみながら、最低の文化生活を『物』の面でも営める国」と書いています。“最上の努力”をこめて訳したという『王子と乞食』は、「心」と「物」についての、おとな向けの上質の物語でもあります。


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