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2014年8月3日(日)

事件リポート 佐世保高1同級生殺害

加害少女 深い闇

予兆 何度も

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 長崎県佐世保市で起きた高1同級生殺害事件から2日で1週間。加害女子生徒(16)は、事件の予兆ともいえるいくつかのシグナルを発信していました。なぜ見過ごされたのか。佐世保市で取材しました。

 (菅野尚夫)


写真

(写真)事件について話し合う新婦人佐世保支部の役員=7月31日

 「たくさんの夢を断たれた被害女子生徒。加害女子生徒の孤独の深さを思い知ると悲しすぎる」と話すのは、新日本婦人の会長崎県本部の会長を務める佐世保市生まれの眞如詠子(しんにょ・えいこ)さんです。

子ども主体でない

 加害女子生徒は、県内有数の進学校に入学したものの、学校に行けたのは3日だけでした。母親を昨年10月にがんで亡くしました。その後、同市内のワンルームマンションで1人暮らしを始めました。間もなく今年5月には父親が再婚しました。

 前出の眞如さんは「子どもの心に寄り添った手当てがされていたならばこれほどの事件にはならなかったと思います」と悔しがります。

 加害女子生徒は2010年12月、小学生のとき、給食に異物を混入させる問題行動を起こしています。父親に金属バットで殴りかかったこともあったと報道されています。

 子どもからのSOSではなかったのか。さらに、事件前の今年6月、長崎県の佐世保児童相談所に電話で、加害女子生徒を診察した医師から相談がありました。「このままでは人を殺しかねない」という内容だったにもかかわらず、一般的な対応しかできなかったといいます。

 2003年に長崎市で中学1年の男子生徒が幼児を殺害する事件が起き、翌年6月には、佐世保市の市立小学校で同級生による児童殺傷事件が起きました。

 日本共産党の堀江ひとみ県議は「この間、すべての学年で少人数学級実現とならなかったけれども、スクールカウンセラーなどが増えました。地域や学校で子どもの抱えている息苦しさに目を向ける努力は進みました。一方、県のすすめる心の教育の中身については、今後議論し検証される必要があります」と指摘します。

 眞如さんも「子どもが主体となっていない」と、県の命の大切さを伝える教育の改善点を指摘します。「個人任せでなく、抜本的な対策がとられていただろうか? 長崎には心豊かに育つ自然環境があります。自分を見つめたり、周りを観察したりする実体験を培うことは可能でした」と悔やみます。

第三者入れ検証を

 佐世保市内で「フリースペースふきのとう」の理事長を務める山北眞由美さん(70)は10年前に、佐世保市の市立小学校で児童殺傷事件が起きたことを契機にして、緊急集会を開きました。また毎年、「子どもサミット」を開くなどしてきました。

 今回の問題については、「内々で幕を引くのではなく、第三者に入ってもらって、なぜまた悲しい事件が起きたのか検証し、ちゃんとしたものにする必要があります」といいます。

 「加害女子生徒は一番寄り添ってくれた母親が亡くなって無常観に打ちのめされていたと思います」という山北さん。「不登校や暴力行為には子どもの本当の願いが秘められています。それに気付かなかった。『悩むことは大事なことなのよ』と一生懸命話す。おとなが子どもの心に向き合って条件を付けずに愛してやってほしい」

「優しかった級友をなぜ…」

中高生に聞く

 長崎県佐世保市の県立高校1年生の女子生徒(15)が同級生の女子生徒(16)に殺害された事件について、「させぼ四ケ日町商店街」アーケードで中学・高校生に意見をききました。

 事件の起きた高校とは別の高校に通う高1女子生徒は「被害者も加害者もかわいそうです」と顔をくもらせます。「被害者は生き返れないし、加害者の子も家庭の事情でさびしかったと思います」と、同世代の悩みに共感を覚えていました。

 「自分のことを話せなかったと思う。不安でいっぱいだったろうなあと思います。コミュニケーションがとれていなかったように感じます」と、残念がっていました。

 高3男子生徒は「ネットでは佐世保の高校生全体が悪いように言われているがそんなことはないです」といいます。「僕らは10年前に起きた(小6女児殺害)事件のことを覚えています。その後に『いのちの教育』が始まったけれども、どんな授業だったのかあまり印象に残っていません」

 中3女子生徒は「殺した生徒に優しくされていたのになぜ殺したのか不思議です。理解できません。もうちょっとおとなが対応していたならば防げた」といいます。


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