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2014年6月14日(土)

安倍内閣の野望「残業代ゼロ」 (2)

健康守る歯止めなくす

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 政府、財界がめざす「新しい労働時間制度」は、労働基準法が定める8時間労働などの時間規制にしばられずに労働者を働かせる仕組みをつくるものです。「残業代ゼロ」「過労死促進」「成果で賃下げ」という三重苦の被害を労働者に与えるものにほかなりません。

弁護するが

写真

(写真)夜10時すぎ、家路を急ぐ労働者=東京都新宿区

 政府、財界は、第1次安倍政権が世論の批判をあびて導入に失敗した二の舞いになりはしないかという不安から、あれこれと弁護論をとなえています。制度の提案者である長谷川閑史氏(武田薬品社長)は、5月28日の産業競争力会議で「『残業代ゼロ』懸念を払拭(ふっしょく)」することを制度を考えるポイントにあげました。「職務・成果に応じた適正な報酬確保、効率的に短時間で働いて報酬確保」になる仕組みだというのです。「長時間・過重労働の防止」も強調しています。

 良いことずくめですが、この主張はまったくでたらめです。どんなに言い訳しようと、「新しい労働時間制度」をつくって現行の労働時間規制の適用を外すということは、「8時間を超えて働いたら残業代が出る」という考え方がなくなるということです。「残業代ゼロ」の懸念は払拭どころか的中です。

 しかし労働時間規制の適用除外は、残業代が出ないだけでなく、むしろそれ以上に重要な問題があります。もともと労働基準法で労働時間を規制しているのは、報酬(賃金)の確保と関係ありません。一番の目的は、労働者の働き過ぎをくい止め、健康で人間らしく働き、生活できるようにすることです。さらに一人ひとりの働く時間を制限して雇用をつくり出すという意味もあります。これは労働法の初歩の常識です。

 1919年のILO(国際労働機関)第1回総会で採択した第1号条約が8時間労働制だったことは広く知られています。1日12時間を超えるような非人間的な長時間労働から労働者を解放し、家族とともに自由で健康に過ごせる状態をつくることが最大の目的でした。8時間を超えて働かせる場合、ペナルティー(罰金)として2割5分以上の割増賃金を支払うこともうちだしました。

 日本の労働基準法は、「1日8時間」「週40時間」を超えて働かせてはならないとし、残業させたら2割5分以上の割増賃金を支払うと定めています(大企業の場合は残業が月60時間を超えたら5割増)。また午後10時以降は深夜割り増しでさらに2割5分を加算します。休日出勤は3割5分の割り増しです。

規制強化を

 割増賃金規定は、長時間労働を抑えて健康を守ることを目的にした、企業に対する罰金規定なのです。この点がきわめて重要です。長時間労働や過重労働を防止するといいながら、労働時間規制を外すというのはとんでもない逆行で、規制を強化することこそ重要です。

 財界は、労働者の健康など考えることなく、労働基準法36条による労使協定(「サブロク協定」)を利用して無制限の時間外労働をおしつけ、世界でも異常な長時間労働の国にしています。割増賃金を払わずに長時間働かせる「サービス残業」が横行し、いまだに根絶されていません。長時間労働によるメンタル疾患、過労死が増えています。

 労働者を労働時間規制の対象から外すことは、健康を守る歯止めを外すことです。長時間の不払い労働を合法化し、労働者を「仕事が終わらない」労働に追いやることにほかなりません。

 (つづく)


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