2013年1月21日(月)
仏のマリ軍事介入
周辺国 テロ拡散懸念
アルジェリアで発生した、日本人を含む多数が拘束された人質事件の背景となっているとされるのが、フランス軍によるマリへの直接介入です。西アフリカ諸国では、この介入がイスラム武装勢力の拡散につながりかねないとの懸念が広がっています。
(島崎桂、松本眞志)
根本解決ならず
広大なサハラ砂漠に位置する西アフリカ諸国間の越境は容易であり、人質事件の犯行グループにも多くの近隣諸国出身者が加わっていました。
ロイター通信によると、セネガルのサル大統領は先週、国民に対して、国外から来るイスラム教徒の不審な動向について通報を求め、「(イスラム過激派の)浸透に対する町や村での警戒を怠ってはならない」と警告しました。
ガーナのコフィ・アナン国際平和維持訓練センターのクウェジ・アニング氏は、仏軍介入に伴って過激派がマリから周辺国へ拡散することを危惧。「フランスは(マリから)過激派を追い出したいという。しかし、どこに追い出すのか。モーリタニアとニジェールが苦難に陥るかもしれない。ブルキナファソは脅威にさらされる」と述べました。
今回のアルジェリアの人質事件でも犯行グループは仏軍のマリからの撤退を要求しており、仏軍の対応とこれに協力したアルジェリア政府への報復を「口実」にしています。
仏軍のマリへの直接介入で、マリ政府軍が劣勢を挽回したとき、オランド仏大統領は「全世界や全アフリカから歓迎された」と自賛しました。
しかし、仏軍の空爆や戦闘から逃れようと多くの避難民が生まれ、その数は今後70万人にのぼると見込まれています。一時的な軍事的勝利が問題の根本解決にならないことは過去の例をみても明らかです。
米国は、2001年の9・11同時多発テロの報復として、同年アフガニスタンに侵攻し、当時のタリバン政権を崩壊させました。ところが、タリバンは現在、勢いを復活し、カルザイ政権の基盤を揺るがす情勢です。
カタールのハマド首相兼外相は15日、仏軍の介入について「力で問題は解決しない」と発言しました。アフガンの教訓は生かされず、2011年、米英仏はリビアに軍事介入して旧カダフィ政権を打倒。一方で、同政権が所有した武器は周辺国に流出し、マリを含む西アフリカ諸国の武装組織を活発化させたとの報道もあります。
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