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2012年9月17日(月)

2012米大統領選

イスラム冒とく映画問題 「宗教上の寛容」模索さ中

米国社会に複雑な影

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 【ワシントン=小林俊哉】イスラム教の預言者ムハンマドを冒瀆(ぼうとく)したとされる映画を発端に抗議行動が広がっている問題は、2001年の同時多発テロ以後、ブッシュ前政権の「対テロ世界戦争」にほんろうされながらも、「宗教上の寛容」を目指して模索してきた米社会に複雑な影を落としています。

 リビア・ベンガジの米領事館で米外交官らが殺害された事件後、米国内でイスラム教を敵視する雰囲気がことさら強まるというような事態は起きていません。むしろ、大統領をはじめ米政府、さまざまな宗教団体が、同映画を非難しています。

 同時多発テロ事件以後、イスラム教をテロリズムと同一視する声が国内で高まったことは、米国の地域社会を引き裂き、イスラム教徒への差別やいやがらせが問題となってきました。

米国の重要な宗教

 一方で、その克服が市民レベルで目指されてきたことも、米社会の大事な側面です。同時テロ事件10年目を機に昨年、ブルッキングズ研究所などが行った世論調査では、半数を超える54%の市民が「イスラム教は米国の重要な宗教コミュニティーの一つ」と回答するに至っています。

 今回の映画は、エジプト系のキリスト教徒が作成したものとも報じられますが、真相は不明。出演した女優の一人は米NBCテレビのインタビューに答え、「申し訳ない」と謝罪し、全体の筋書きについては知らなかったとしました。

 ただ、10年にフロリダ州の牧師がイスラム教の聖典コーランを焼却すると宣言したことが問題となるなど、イスラム教を敵視する主張が、繰り返しあらわれるのも事実です。今年8月にウィスコンシン州のシーク教寺院で起きた6人死亡の銃乱射事件は、犯人の男がシーク教徒をイスラム教徒と勘違いしたものとも報じられ、同地域に怒りと悲しみを呼び起こしました。

 米社会の取り組みと並行して、米政治にとってもイスラム圏との関係改善は大きな課題です。反米感情を高めたイラク、アフガニスタンでの二つの戦争への反省が問われるさなか、今回の事態でオバマ政権がとっている措置は、米海兵隊チームをリビアやイエメンに派遣し、艦船をリビアに派遣するなどの軍事的なものです。リビアでは、同国政府の協力を得たとしつつも、米軍が無人機作戦を開始したとの報道も出ています。

大統領候補も発言

 大統領選にも、今回の問題が影を落としています。ただ、焦点は、イスラム諸国との関係改善には何が必要なのかとの問いではなく、“オバマ氏が弱腰かどうか”です。

 共和党の大統領候補ロムニー前マサチューセッツ州知事は、在カイロ米大使館が問題の映画を非難する声明を発表したことを取り上げ、「オバマ政権は暴徒に同情している」と非難。「(他国に)謝罪してまわるオバマ」対「謝らないロムニー」を演出しています。

 これには、「宗教上の寛容は、言論の自由と同様、米国の核心的価値だ」「ロムニー氏が、主要宗教の一つに対して向けられたこのような憎悪について、何も言わないことの方が際立っている」(ワシントン・ポスト紙社説)などの批判も相次いでいます。


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