2012年5月31日(木)
憲法生かす検討必要
参院憲法審査会 井上議員が強調
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参議院の憲法審査会は30日、東日本大震災と憲法をテーマにした3回の質疑を受けて意見交換を行いました。
日本共産党の井上哲士議員は「東日本大震災の復興、原発事故対策から見えてきたものは、憲法が現実に生かされてこなかったという問題だ」と強調しました。
井上氏は、「憲法13条の幸福追求権、25条の生存権を妨げられている。棄民にされた」と訴えた福島県双葉町の井戸川克隆町長の発言などを紹介し、「重大事故が起きれば憲法のらち外に置かれるような原発と共存できるかが問われている」と指摘。被災地の生活・生業(なりわい)を再建していく上で、「憲法を法律や制度にどう生かしていくか真剣な検討と実行が求められる」と述べました。
また、政府の震災対応が不十分であったのは憲法に緊急事態規定がなかったからではなく、「現行法や制度が適切に働かず、『権限』が有効・適切に行使されなかったからだ」と強調。戦前、議会閉会中の緊急勅令で治安維持法に死刑が加えられたことを示し、緊急事態宣言により、政府が暴走する危険があると述べました。
一方、自民党の磯崎陽輔議員は同党の改憲草案を「東日本大震災の反省を踏まえ政府が効率的に行動できるような体系」「緊急事態の宣言と効果を規定した」と紹介。他の自民党議員もがれき処理の遅れなどを理由に「国家緊急権」規定を求めました。
これに対し、井上氏は「一方的権限で国家ががれき処理を押し付ければ、いっそう住民との間で混乱が起こる。政府の説明の不十分さに問題があり、緊急権とは関係がない」と批判しました。他議員からも震災対応について「憲法に問題があり、改正の必要が浮き彫りになった事例はなかった」(民主党の江田五月議員)、「憲法改正しなければならないという議論ではない」(公明党の白浜一良議員)との意見が出されました。