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2012年5月1日(火)

関越道バス事故

1人運転 利益優先

規制緩和→業者倍 過当競争→利益かつかつ

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 7人が死亡、39人が重軽傷を負うという重大事故となった群馬県藤岡市の関越道ツアーバス事故。運転手の居眠りが原因として浮上していますが、背景にはバス事業への参入・撤退の自由化を進めた規制緩和による過当競争があります。(遠藤寿人)


 千葉県でバス5台を運行するAさんは、事故原因について「運転手の1人体制につきる」と語気を強めます。Aさんは、今回の金沢―浦安間(545キロ、片道3500円)について、「ツードラ(ドライバー2人)じゃなかったら夜行は断る」ときっぱりいいます。

 国土交通省は「1日9時間勤務で670キロまで」と規定しています。Aさんは「規定のなかに収まるといっても昼夜の違いがある。視力の衰え、眠気、拘束時間が増え、疲れ方が違う。夜行なら500キロを超えたら要注意だ」と話します。

 2000年、自民、公明、保守政権と民主党の賛成により、道路運送法が改悪され、参入規制が免許制から許可制に緩和されました。同省によると、貸し切りバス事業者は、1999年度の2336社から2010年度の4492社へとほぼ倍増。過当競争で零細業者の経営基盤は劣悪です。10年度に稼働したバス1台当たりの営業収入は1日平均6万3435円と99年度の8割弱に減少しています。

 Aさんに大ざっぱに「東京―大阪」間、「ツードラ」で見積もってもらいました。(1)人件費3万×2人=6万円(2)燃料6万円(3)車庫、保険、修理、タイヤ費用4万円―。計16万円。Aさんは「18万円出してくれるなら仕事を請ける。ほとんどがかつかつで利益が出るかどうかだ…」といいます。

 今回の事故を起こしたバス会社「陸援隊」(千葉県印西市、針生裕美秀社長)について業界関係者は「針生さんは主に外国人のツアーを扱っていた。ゴールデンウイークでは日本人が動く時。無理して仕事を請けていたのではないか」と話します。

 今回の事故のように旅行会社企画の「旅行商品」と位置づけられるツアーバスは、貸し切りバス会社と契約を結ぶだけで(図)、道路運送法の適用を受けず、旅行会社は、運送事業者として安全確保の責任を負っていないという問題もあります。

 ツアーを募集した旅行会社「ハーヴェストホールディングス」(大阪府豊中市)は運行形態について「バス会社に任せている」「(ドライバー)1人、2人は指示していない」などと話します。

 利用者の安全をよそに、規制緩和による過当競争がもたらした起こるべくして起きた事故ではなかったのか―。

 「トラック業界も人ごとではない」と話す埼玉県でトラック会社を経営する赤城義隆さんは「この距離だとドライバーは2人必要です。繁忙期で余裕がないと運転手に過剰労働させることになる。食っていくためにやらざるを得ない。“安全はただでは買えない”このことを利用者も旅行会社も考えてほしい」と話します。

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