2012年4月6日(金)
福島第1原発 汚染水また海へ流出か
高濃度ストロンチウム含有
東京電力は5日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)で高濃度の放射性ストロンチウムを含む水が漏れ、海へ流出した可能性があると発表しました。高濃度放射能汚染水の処理で発生した廃水をタンクに移送する配管が継ぎ手からはずれて漏れ、排水溝を通じて海へ流出したとみられています。3月26日にも同様の現象により、高濃度の放射性ストロンチウムを含む水が海へ流出する事故が起きたばかりでした。
東電によると、5日午前0時6〜13分に廃水を送るポンプの流量が毎時50立方メートルから同70立方メートルに急上昇し、ポンプが自動停止しました。その後、0時50〜1時10分にかけて3回ポンプを手動で起動しましたが、その都度1分ぐらいで自動停止しました。
1時50分ごろになって配管の継ぎ手の一つがはずれ、水が漏れているのがわかりました。漏れた水は排水溝に流れ込んでおり、流れ込んだ場所から海までの間で排水溝の水に含まれる放射性セシウムの濃度が通常より高い値だったことから、海へ流出した可能性があるとしています。
漏れた水の量は、ポンプが動いていた時間が合わせて10分とみられること、その間の流量が毎時70立方メートルだったことから、約12トンと推定されました。
漏れた水は、高濃度放射能汚染水から放射性セシウムなどの一部を除去した後、さらに塩分を除くための淡水化装置で出る廃水。ストロンチウム90などベータ線を放出する放射性物質を1立方センチ当たり数十万ベクレル含んでいます。
解説
何度も流出 危険な状況続く
福島第1原発から事故後高濃度の放射性物質で汚染された水が海へ流出したのは、意図的に放出したのを除いて、今回を含めればわかっているだけで5回目になります。今回の事故は、東電が過去の事故から何も学び取っていないことを示しています。
東電は、午前0時6分にポンプの流量が急上昇したことについて、配管が継ぎ手からはずれたことを示すものだったとしています。作業員はそれに気づかず、停止したポンプを何度も動かそうとして、その結果、漏れた水の量を増やしました。
今回と全く同様の事故が3月26日に起きており、このときの事故を真剣に受け止め検討していれば、このようなことにならなかったでしょう。東電の無責任ぶりを表しています。
国と東電は昨年末、福島第1原発事故の「収束」を宣言しました。しかし、今回の事故が示したように、原子炉建屋やタービン建屋の地下などにたまった大量の高濃度放射能汚染水によって海などが汚染される危険性は以前と全く変わっていません。
東電は高濃度放射能汚染水を処理したうえで1〜3号機の原子炉に注入する循環注水冷却を行っています。にもかかわらず、原子炉の圧力容器や格納容器が壊れているため、注水した水はほぼそのまま流れ出し、ふたたび原子炉建屋やタービン建屋の地下にたまり続けています。
処理した後の水や廃水にも高濃度の放射性物質が含まれているため、移送するときや貯蔵中に漏れて地下水や海を汚染することが懸念されています。
国は「収束」宣言によって福島第1原発事故を過去のものとし、関西電力大飯原発3、4号機をはじめ定期検査で停止した原発の再稼働を強行しようとしています。福島第1原発事故の深刻さを改めて示した今回の事故をみれば、新たな原発事故発生の危険性をもたらす再稼働などできないはずです。 (間宮利夫)