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2012年3月17日(土)

主張

孤立死・孤独死

悲劇生む困窮の構造にメスを

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 北海道や埼玉、東京などで、近隣の人たちも気付かないうちに自宅で亡くなり長期間たって発見される、「孤立死」や「孤独死」が続発しています。加齢や病気など原因はさまざまですが、所持金が尽き、食事もとれず、衰弱死に追い込まれる悲劇も少なくありません。深刻なのは、高齢者世帯にとどまらず働く世代のいる世帯にまで孤立死・孤独死が拡大していることです。高齢化や病気で生活が困窮した人をささえる社会保障の仕組みが機能していないことが、事態の深刻化に拍車をかけています。

出されていた“SOS”

 高齢者単身世帯の急増と貧困の拡大によって、高齢者を中心にした孤立死・孤独死は1990年代後半から大きな社会問題になってきました。団地の1人暮らしの高齢者が死後何年もたって発見されるなど、深刻な事態も問題になりました。大手生命保険系列のニッセイ基礎研究所の推計では、死後4日以上経過して遺体が見つかった65歳以上の高齢者は年間1万5600人にものぼります。毎日約40人の高齢者が誰にみとられることもなく息を引き取る社会は、普通ではありません。

 高齢者の場合多いのは1人暮らしの孤立死・孤独死ですが、2人以上の世帯で生活を支えてきた働き手が亡くなり同居していた病気の家族などが周囲にも知られず死に追いやられるのも、最近相次いで問題になっています。

 札幌市で1月末に判明した40代姉妹の死は、行政の対応不備がもたらした悲劇でした。両親が死去し、知的障害のある妹を介護する姉は職を失い、市に生活保護を相談しましたが受給に至りませんでした。そんななか、滞納でガスや電気が止められ、暖房のないマンションで姉が病気で急死、障害のある妹は助けも呼べず食事もできず凍死したのです。

 2月下旬に東京都立川市で死後1〜2カ月で発見された4歳障害児と40代母の孤立死も“SOS”が発せられていました。母親は児童扶養手当を申請したり自分の病気を相談したり、市の複数窓口をたびたび訪ねていました。市は「情報共有ができていなかった」といいますが、検証が必要です。

 さいたま市で2月に見つかった60代夫婦と30代息子の3人の孤立死は、所持金は数円しかなく、餓死とみられるものでした。生活保護の申請はしていないとされますが、お金のことで困っていた様子があり、民生委員への相談を促した人もいたといいます。

 憲法25条は国民の生存権を保障し国に社会保障の充実を義務付けています。そのための制度が生活保護や高齢者や障害者の介護、児童扶養などの制度です。なぜ国や自治体は窮状に気付かず、支援の手を差し伸べなかったのか、悔やまれます。

人間らしく暮らせる社会

 孤立死・孤独死が増え続ける背景にあるのは、貧困問題の急速な進行です。雇用が不安定にされ、社会保障が切り下げられ、高齢者や病気を抱える人にとってますます暮らしにくくなっています。

 地域の人たちによる見守りやネットワーク、通報体制づくりは当然重要です。しかしそれだけでは限界があります。命が失われてからでは遅すぎます。社会保障制度がしっかり機能し、人間らしく暮らせる社会の実現が急務です。


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