2012年2月11日(土)
米 34年ぶり原発認可
スリーマイル後初 “福島の事故黙殺”
規制委 委員長が反対
【ワシントン=小林俊哉】米原子力規制委員会(NRC)は9日、南部ジョージア州での新規原発建設の計画を認可しました。原子炉建設の認可は1978年以来、34年ぶりです。ただ、5人の委員による採決では、ヤツコ委員長が反対するなど、福島第1原発事故を受け、安全性への懸念も出ています。
認可されたのは、米電力大手サザンによる同州ボーグルでの原子炉新設計画です。稼働中の原発に加え、東芝子会社の米ウェスチングハウス(WH)が開発した新型原子炉2基が、16年に稼働を予定しています。同原子炉の設計については、昨年12月にNRCがすでに認可していました。
米国では現在、104の原子炉が稼働していますが、79年のスリーマイル島原発事故以来、原発に対する国民の強い懸念を背景に、新規建設は凍結されていました。
エネルギーの石油依存を緩和すると主張するオバマ政権は、「クリーンエネルギー」の一部として原発を重視し、政権発足以来、新規建設に前向きな姿勢を示していました。ただ、昨年3月の福島での事故を受け、米市民の間には、原発の安全性を疑問視する声が根強くあります。
同日の公聴会では、4人の委員が賛成。反対したヤツコ委員長は声明で、福島での事故の「教訓」から、NRCとして安全性強化の新提言を行っている最中であり、「引き続き、残された課題も多い」と指摘。「あたかも福島の事故がなかったかのように、認可に賛同するようなことはできない」としました。
米メディアによると、オバマ政権は、ボーグル原発計画に83億ドル(6400億円)の政府ローンを提案しているといいます。
市民からも批判の声があがっています。環境市民団体「クリーンエネルギーのための南部連合」は、「NRCは福島の惨事の重要な教訓を学ばず、認可を与えている」と非難。連邦政府によるボーグル原発への資金貸し付けは違法などとして、差し止め訴訟を起こすと表明しています。