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2012年1月26日(木)

米大統領一般教書演説

大企業の税金逃れ防止 中小企業への支援も

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 【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領は24日、上下両院合同会議で行った一般教書演説で、深刻な雇用・経済状況の打開に向け、製造業の支援と中高等教育の充実を目指す方針を表明しました。


失業者対策で職業訓練

 オバマ氏は、製造業の国内回帰を図るとして、海外に雇用を移転した企業への税控除の廃止、大企業の移転で打撃を受けた地域に進出する中小企業への支援策を表明。大企業の税金逃れを防止するため、多国籍企業に「一定の最低限の税」を課す方針も表明し、立法化を求めました。

 雇用対策としては教育分野を重視。失業者の職業訓練に向けて公立2年制大学と提携する政策を打ち出しました。また増大する高校中退者を減らすため、教育内容・施設の改善とともに、卒業するか18歳になるまで生徒を在学させるよう州政府に呼び掛けました。

 大学学費については、政府系ローンの税控除の延長策を議会に求める一方、州政府に対し、予算全体の中で教育予算の優先度を高めるよう要求。同時に、各大学に学費抑制策に取り組むよう求め、学費を高騰させる大学には公的援助を削減すると表明しました。

 金融危機の引き金になった住宅担保証券については、不正調査に向けた特別チームを立ち上げるとし、「庶民の預金で危ない賭け事をすることはもう許されない」と金融界に警告しました。


解説

米国の苦境 演説に反映

 オバマ米大統領の一般教書演説は、「公正さ」の復活を前面に出し、努力すればより豊かな生活が約束されるという米国の伝統的価値観を強く打ち出しました。しかし、あえてこの点を強調しなければならないこと自体、今の米国社会が一部の富裕層に富が偏在する格差社会になり、公正さが失われていることの表れです。

 米国では所得税の最高税率が、ブッシュ前政権による2度の富裕層減税で70%から35%まで引き下げられました。しかも、株式配当や譲渡益の税率は最高15%という低さです。

 著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が「(富裕層は)億万長者を優遇する議会に甘やかされてきた」として増税を主張しましたが、同氏の税率は17・4%です。

 オバマ大統領が、今回の演説で「大富豪の4分の1が中間層家庭よりも税率が低い」として、年収100万ドル以上の高額所得者に対する増税策を打ち出したのもこのためです。

 失業率が8%台に高止まりしているもと、雇用をどう確保するかは、米社会で解決が急がれる課題です。

 オバマ大統領は、この点で「すべての国民が等しい機会を持つ」ことの重要さを指摘。200万人の雇用に直接つながる技能習得計画や、エネルギー分野での雇用創出策を打ち出しました。

 昨年9月以来、「オキュパイ(占拠)」の名を冠して、格差是正を求める運動が全米でうねりとなって進んでいますが、「公正な社会」への復活や、雇用確保はこれらの運動の参加者から出ている強い要求です。

 こうした要求を実現していくうえで、議会での法案採択がかかせませんが、共和党が下院で多数を占めているもとで、法案の実現が阻まれているのも現実です。

 オバマ大統領が演説で、「法案が可決されたらただちに署名する」と何度も繰り返したのも、議会の現状へのいら立ちともいえます。 (西村央)


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