2012年1月19日(木)
きょうの潮流
眼帯姿が痛々しい。野田首相です。夜中にかかってきた急な電話を、寝起きで急いでとりに行こうとして、ぶつかったそうです▼事情は分かります。似たような体験をもつ人は、少なくないでしょう。闇の中で柱や家具に突然ぶつかったときの、予期しない痛みの激しさといったら。読者のみなさんも、くれぐれもご用心を▼ただし野田首相の場合、日ごろの行いも闇雲に急いでいるように見受けられます。社会保障のための増税とみせかければ、消費税の増税に人々の理解が得られるだろう。そうふんでいたのにあてがはずれ、消費税増税に反対する人はふえるばかり。しかし、「ぶれる道は絶対にとらない」と宣言する首相です▼とはいえ、勇ましい言葉だけではことが進みません。そこで、増税に反対する理由に税金の無駄づかいが多いところに目をつけました。国会議員を減らす。衆院は比例の定数を80削る。「社会保障と税の一体改革」に議員減らしの「政治改革」を加え、まるで「三位一体改革」のようです▼新聞やテレビも、議員減らしを、税金の無駄を省いて消費税の増税に道筋をつける「前提」とあおります。たしかに、増税勢力には「前提」かもしれません。増税に反対する人々の意思をくんではたらく少数政党を、国会から締め出すしくみを手に入れるのですから▼無駄を省くどころか、異論を殺す「政治テロ」です。政権のなりふりかまわぬ暴走を許すなら、日本の民主主義の名がすたれます。日本の民主主義の名折れです。