しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年9月25日(土)

主張

ダーバン宣言20年

植民地の過去正す流れさらに

 植民地支配と奴隷制度は過去にさかのぼって非難されなければならないとした「ダーバン宣言」が2001年9月に採択されて20年になります。22日に国連総会で記念のハイレベル会合が開かれ、国の責任で人種差別をなくさなければならないとした政治宣言を採択しました。

 この20年間、植民地支配を反省する動きは世界の流れとなっています。一方、人種差別や排外主義は依然として大きな問題です。すべての人が人権を保障される世界を築くため、ダーバン宣言を真剣に実行していくことが各国政府に迫られています。

市民の運動が国を動かす

 ダーバン宣言は南アフリカのダーバンで国連が開いた「人種主義、人種差別、排外主義および関連する不寛容に反対する世界会議」で採択されました。人種差別を「すべての人権の重大な侵害」とし、奴隷制を「人道に対する犯罪」と規定しました。植民地主義は「いつ、どこで起ころうとも非難され、再発は防止しなければならない」と明記しました。

 ハイレベル会合で国連のグテレス事務総長らは、今日の人種差別の根源に数世紀にわたる奴隷制度と植民地の搾取があることを指摘し、旧領有国に謝罪、賠償、教育による歴史の継承を求めました。奴隷制度と植民地支配によって発展してきた欧米諸国に対して旧植民地国への実効ある補償を要求する声も会合で上がりました。

 ダーバン会議は、白人政権によるアパルトヘイト(人種隔離)を打ち破った南アをはじめ、旧植民地諸国の要求で実現しました。アフリカ諸国が要求した奴隷貿易への謝罪と償いに抵抗した旧植民地領有国があり、相当な議論を重ねて宣言と行動計画が合意されました。今日、人種差別に反対する市民の運動は謝罪、賠償へと政府を動かしています。

 特に昨年、米国で起きた白人警察官による黒人暴行死事件を機に人種差別反対のたたかいが世界に広がり、各国政府に過去の奴隷制度と植民地支配への反省を迫る動きに発展したことは重要です。

 ドイツ政府は、20世紀初頭に植民地支配していたナミビアで行った「民族大量虐殺」を今年5月、公式に認めて謝罪し、賠償を表明しました。オランダ政府が設置した独立委員会は奴隷貿易を謝罪すべきだと7月に政府に勧告しました。

 コロナ禍は差別され困窮した人々に、より深刻な被害をもたらしています。

 難民、移民、少数民族に対する排除、抑圧が各地で横行し、排外主義の勢力が政権に就く国もあります。それだけにダーバン宣言の実践が急務です。

日本も真剣な反省を

 日本も台湾、朝鮮半島の植民地支配とアジア諸国に対する侵略戦争への厳しい反省を迫られています。侵略、植民地支配に無反省な姿勢が安倍晋三前政権のもとで一段と強まりました。菅義偉政権は、日本軍「慰安婦」の過ちを認めた1993年の政府公式見解を事実上、否定する見解を閣議決定しました。侵略戦争下で行った人権侵害に目をふさぐ許しがたい行為です。

 日本政府は世界の流れに真っ向からさからうことをやめ、自ら犯した不正義を真剣に反省しなければなりません。


pageup