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2021年7月20日(火)

主張

最低賃金目安答申

さらに大幅増と全国一律制へ

 厚生労働省の中央最低賃金審議会が2021年度の最低賃金について、全国すべての地域で時給を28円引き上げる目安を答申しました。「コロナ禍の中でこそ大幅引き上げを」と訴えてきた労働者の運動と国民世論の広がりを受けて現行制度下で最高の上げ幅となりました。しかし、目安通りの改定が実現しても全国平均は930円です。労働組合などが求めている「全国一律1500円」には程遠く、地域格差が放置されたままです。大幅増額と全国一律制を実現するため、さらに運動を強めることが大切です。

どこでも1500円を

 最賃の引き上げは労働者全体の賃金水準の底上げにつながり、コロナ禍で落ち込んだ経済の回復に大きく貢献します。欧米では「コロナ後」を見据えて最賃引き上げに動いています。

 しかし日本では20年度改定の際、当時の安倍晋三政権と財界がコロナ危機を口実に引き上げに反対し中央最賃審は目安を示しませんでした。21年度の改定でも財界が2年連続の据え置きに固執したため最賃審は異例の採決による決定となり賛成多数で増額を決めました。

 コロナ禍で改めて浮き彫りになったのは介護や福祉、小売業などで社会の生活基盤を支えている「エッセンシャルワーカー」の賃金の低さです。高齢者のケアや食料品・日用品の販売など日常の暮らしに欠かせない役割を果たしていますが、最賃ぎりぎりの非正規雇用労働者が多く、大きな問題になっています。

 21年度の28円増でも1000円を超えるのは20年度同様、東京と神奈川だけです。最高の東京(1041円)と、沖縄など最低の7県(820円)の間には221円も格差があります。

 21年度並みに3%増を続けたとしても最低額の7県が1000円を超すにはさらに7年かかります。菅義偉首相は「早期に1000円をめざす」としていますが、到底おぼつかない目標です。

 最低限の生活を営むために必要な生計費は、全労連の調査によれば全国どこでも1500円以上です。最賃に地域差をつけることに根拠はありません。5月には全国一律制を求める16万人の署名が国会に提出され、党派を超えて100人を超す議員が紹介議員となりました。

 世界でも全国一律制が当たり前となっています。

 今後、各都道府県の最低賃金審議会が目安を参考に具体的な水準を決めます。中央最賃審が目安を示さなかった20年度も41県が最賃を引き上げました。目安を上回る増額の実現はこれからのたたかいにかかっています。

中小企業支援と一体に

 何よりも政府が貧弱な中小企業支援策を改めることが重要です。政府予算の中で最賃引き上げのための唯一の中小企業支援策である業務改善助成金は20年度3次補正で14億円、21年度は11・9億円しかありません。しかも、生産性向上のための設備投資が要件とされるため、中小企業の多くが赤字経営で、新規投資が難しい現状では実効性の乏しい制度です。

 社会保険料の事業主負担を減免し、大企業による下請けいじめを取り締まるなど、抜本的な対策が必要です。菅政権は具体的な中小企業支援策を示すべきです。


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