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2021年3月29日(月)

主張

安保法制施行5年

「戦争する国」の阻止が急務だ

 安倍晋三前政権が憲法の平和主義と立憲主義を破壊し強行した安保法制=戦争法が2016年3月29日に施行されてから5年がたちます。同法制が海外での米軍の戦争に自衛隊が参戦し武力行使できる道を開いた中で、日米両国の軍事一体化が急速に深まっています。安倍前政権を継承した菅義偉政権の下でも「戦争する国」づくりの重大な動きが進んでいます。

米軍の防護が最多に

 防衛省は2月、安保法制に基づき自衛隊が20年に実施した米軍防護が25回だったと発表しました。米軍防護は、米艦や米軍機などを自衛隊が警護するものです。警護の地理的範囲に限定はなく、米軍が攻撃を受ければ自衛隊が武器を使用して反撃できます。

 年ごとの米軍防護の回数は、初めて実施された17年が2回、18年が16回、19年が14回で、20年の25回は最多です。その内訳は、弾道ミサイルなどの情報収集・警戒監視活動を行っている米艦の警護が4回、日米共同訓練に参加している米軍機の警護が21回でした。

 米軍防護は、自衛隊を意図しない戦闘に巻き込む恐れがあります。例えば、南シナ海で自衛隊と共同訓練をしている米軍と中国軍との間で偶発的な衝突が起こった場合でも、米軍防護の任務に就いている自衛隊は武器を使用して米軍を守らなければなりません。

 今月16日の日米外交・軍事担当閣僚会合(2プラス2)の共同発表は、南シナ海での中国の不法な活動への反対をうたい、台湾海峡の平和と安定の重要性を指摘しました。その上で「同盟の運用の即応性及び抑止態勢を維持し、将来的な課題へ対処するための、実践的な二国間及び多国間の演習及び訓練が必要」と強調しました。「実践的」な演習・訓練は、不測の軍事衝突の危険を高めかねません。

 防衛庁(現防衛省)幹部を歴任し、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)を務めた柳沢協二氏は「日米共同で軍事的プレゼンスを高め、状況によっては米艦も防護するという姿勢は、アメリカの秩序・覇権に与(くみ)することを意味します」「南シナ海や台湾で米中が衝突し、本格的な戦争になれば、日本も無傷ではいられません」と警告しています(『抑止力神話の先へ―安全保障の大前提を疑う』)。

 安保法制は、南シナ海や台湾での有事を「わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態」(重要影響事態)と認定すれば、戦闘が予測される地域でも自衛隊が米軍に補給や輸送などの後方支援をすることを可能にします。米軍の後方支援部隊の警護もできます。そうなれば自衛隊が標的になるだけでなく、米軍基地が集中する日本、とりわけ沖縄が攻撃目標になるのは避けられません。

自衛隊が本格参戦も

 さらにそれを「わが国の存立が脅かされる明白な危険がある事態」(存立危機事態)とすれば、自衛隊は集団的自衛権を行使し本格的に参戦することになります。

 日本は2プラス2の共同発表で「日米同盟を更に強化するために能力を向上させる」と表明しました。菅政権は、他国を攻撃できる長距離巡航ミサイルなど「敵基地攻撃能力」の保有も企てています。安保法制の廃止と、同法制の根拠となっている集団的自衛権の行使などを認めた閣議決定の撤回はいよいよ急務になっています。


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