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2021年2月18日(木)

きょうの潮流

 手塚治虫の曽祖父にあたる手塚良仙は、幕末から明治の初めを生きた蘭方医でした。緒方洪庵の適塾で学び、仲間とともに江戸・お玉が池に種痘所を設立。のちの東大医学部の前身です▼良仙の時代、オランダから伝わった医学は迫害や偏見にさらされました。幕閣に食い込んだ漢方医の奥医師らが抑圧。天然痘のワクチン、種痘にも人びとは「牛になる」と反発しました。その苦闘ぶりは治虫の漫画『陽(ひ)だまりの樹』に詳しい▼時をこえ、新型コロナウイルスのワクチン接種が日本でも始まりました。先行は医療従事者。最初に受けた東京医療センターの院長は「多少なりとも安心感が得られる」。自分たちが副反応の調査対象となることに、国民に安心して受けてもらえるよう有効に活用してほしいと話しました▼接種の普及で世界に先駆けるイスラエルからは、発症を9割以上減らす効果があるとの研究結果が示されました。重症化も同程度の減少がみられたと。一方で変異株の影響で感染は拡大、早期収束への期待は低くなっているとも伝えられます▼感染抑制の切り札とされるワクチン。国内では65歳以上の高齢者が4月から、あとの接種は未定です。収束に向けた一歩とはいえ、まだ先は見通せません▼良仙が苦心した頃に比べ、いまや医学も病気にたいする意識も大きく変わりました。しかし未知のワクチンを懸念する声が多いのも事実です。入り交じる期待と不安。そんなときこそ、正確で迅速な情報の提供に政府は徹するべきです。


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