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2020年12月9日(水)

主張

75歳以上の医療費

道理なき2割負担は断念せよ

 75歳以上の医療費窓口払いで患者本人に2割負担を導入する方針をめぐり、菅義偉政権内の議論が続いています。現在75歳以上の本人負担は原則1割です。それを2022年度から一定年収以上を2割にする計画です。対象となる年収の範囲について政府、自民党、公明党の調整は難航していますが、2割負担導入では同じ立場です。収入も少なく病気になりがちな75歳以上に負担増を強いることは、経済的事情で必要な医療が受けられない事態を深刻化させます。負担増は許されません。

批判を恐れ合意は難航

 政府は、単身世帯で年収170万円以上を2割負担にする案を主張しています。約520万人が対象です。これは75歳以上(約1815万人)のうち、すでに3割負担の現役並み所得(約130万人)を除き31%にあたります。公明党は対象年収を上げることなどを提起しています。21年の総選挙、東京都議選、22年の参院選を前に、国民の批判を浴びることを避けたい思惑があるといわれています。

 合意が遅れていること自体、2割負担が高齢者に大打撃を与え、怒りをかう中身であることを示しています。選挙が近いからと、有権者に持ち出すことができない政策に道理はありません。導入そのものをきっぱり断念すべきです。

 2割負担導入は、従来の75歳以上の窓口負担の原則を大きく覆します。75歳以上の後期高齢者医療制度は08年4月の開始以来、原則1割負担が続けられてきました。政府自身も、それが「高齢者が心配なく医療を受けられる仕組み」と強調してきたはずでした。

 ところが、安倍晋三前政権はその姿勢を転換し、19年12月に全世代型社会保障検討会議の中間報告で、2割負担導入方針を示しました。引き継いだ菅政権は、結論を出すことを急いでいます。

 社会保障費削減のために、財務省や経団連などは原則2割負担にすることを要求し、「可能な限り広範囲」を負担増の対象にすることを提案しています。最初は対象になる年収範囲が限定されても、いったん1割負担原則が崩されれば、それを突破口に対象が広げられ、2割負担原則化につながる危険を浮き彫りにしています。

 75歳以上は病気やけがをすることが多く複数の医療機関にかかったり、治療が長期化したりするケースが多くあります。一方、収入は公的年金などに限られている上、年金額も抑制・目減りしています。75歳を過ぎても生活維持のため働かざるをえない人も少なくなく、家計を切り詰めて暮らしているのが、多くの人の厳しい現実です。新型コロナウイルスの感染拡大で高齢者の健康と生活への不安が高まっているときに、医療の負担増を持ち出す姿勢は重大です。

「公助」の責任を果たせ

 菅政権は今回の負担増は“現役世代の負担を減らす”ことを口実にします。しかし、かつて老人医療費で45%を占めていた国庫負担割合を35%に引き下げ、現役世代の保険料負担に肩代わりさせた制度改悪が問題の根本にあります。この仕組みを改め、国庫負担を引き上げることが必要です。

 「公助」=国の責任を果たさず、世代間で費用負担をめぐって対立させ、高齢者に「自助」の負担増を迫る―。菅政権の冷たい政治をこれ以上続けてはなりません。


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